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響きすぎて留年してしまった。

S

見終わったよりか、終わってしまった。強烈な喪失感。俺たちは北宇治から卒業出来ていないのかもしれない。具体的には言えないが、今回で自分の中の何かを「更新」した感じ。とんでもない作品だった。

感想

春。“強豪”になった北宇治高校吹奏楽部に
たくさんの入部希望者がやってくる。
総勢100人近くになった吹奏楽部だが、
相変わらず低音パートは希望者が少ないようで新1年生は3人。
新たなスタートを切ることになった部長・久美子は、
個性豊かな部員たちをまとめて、悲願の目標「全国大会金賞」を目指す。
高校3年生――久美子、最後の1年が始まる!

TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』公式サイト より引用

黄前久美子が3年生。これだけでも感慨深い。部長に就任するがまだ自覚が足りない様子を声の上ずりで表現する黒沢ともよはまじで先生すぎる。この変な久美子の一方で麗奈との関係はひたすらにけしからん。まじで他を寄せ付けなさすぎる。あの高坂麗奈が久美子にだけ見せるあの乙女な表情とめんどくさい女ムーブは大まじめにずっと見とける。黄前久美子と高坂麗奈のラジオとかしてくれたらリスナー爆烈に増えそう。甘ったるいだけの関係で終わらないのはさすがに響けユーフォニアム。1期のあがたまつりを越えてきた。麗奈の家でのソリは言葉が見当たらない。ただ仲が良いのではなく音楽で強く繋がってるのが伝わってアツイ。セッション後に楽器を下げたときの摩擦音も拾われててさすがに笑った。細部には神がおるけどここまでやれとは言うてないって神が文句を言ったとか言ってないとか。

他のキャラの出じろも十分。個人的には加藤葉月と川島緑輝にフォーカスが当たったことがアツイ。未経験から入部してオーデで落ちていた葉月が3年で初めて選出。文章にするとありきたりのことであるがここに至る過程が丁寧に描かれているおかげでひたすらにうれしい。全国の演奏後に泣いているのはセコい。当たり前なことではあるが努力は救われると再認識、次に、川島緑輝。後輩の月永求との関係美しすぎる。外野から見るとただの恋愛が始まりそうなだけかもしれないが2人が紡いだ歴史は安直な言葉では表現できない。それを踏まえて、求と緑輝の特別を出しながらも関係性をファジーにしたのは名判断。言語で形容できない関係性はいくらあっても良い。

新たな転入生の黒江真由も忘れられない。とんでもない黒船であった。登場初期からソックスの色と丈の長さからわかる久美子との対比をなす存在であった。明確な敵になるのかと想像していたがまさかの過去の自分だったのはびっくら仰天。

ここからは自分の意見だが、黒江真由は自分に不器用で事象の認知が下手くそなのではないかと思う。オーデに対してひたすらに懐疑的な発言を続ける一方で、演奏には絶対に手を抜けない。自分の中での落としどころを見つける作業をできないしやらない不器用さはある意味であは久石奏に批判されても仕方がない。自分がソリ吹くよりも久美子の方が丸く収まる発言も部の雰囲気と目線が分かっていれば少なくとも久美子に直接言わない。前学校の吹奏楽部で退部に追いやった出来事も自分に矢印を向けすぎ。自分の観測内で起きた事象を全て自分のせいにするのは傲慢極まりない。黒江真由は良心をガソリンとして、自分の中にある圧倒的な「正しい」を振りかざし続けた。久美子との対話が不足していたのはそういうところから起因している印象である。前学校の軋轢はオーディションにしたのがだめなのではなく、自分が正しいと傲慢に信じ続ける謙虚さとかけ離れた黒江自身のふるまいに問題があったのではなかろうか。ここまでミソケソにけなしたが結局は音楽を通じて救われたのは良いたたみ方であった。黒江真由の存在を通じて、自分が正しいと過信しないことと過剰に矢印を向けないことを心に刻みたい。ここまで黒江真由を親の仇のごとくボロカスにこきおろしてしまったがある意味では被害者で久美子との関わりで救われた1人なのかもしれない。

このアニメを語るにもって12話を外せない。久々にSNSが荒れた感覚。原作を大幅な改変とそれがどえらい結末で皆がお気持ち表明の香ばしい事態が勃発。たかがアニメでここまで皆で荒れるのはとても良いことであると感じる。自分は原作の大幅な改変、どえらい結末の2点を述べていきたい。

まずは原作の大幅な改変。自分の意見としてはアリなのではないのだろうか。SNSを渉猟した限りこの改変に批判的なコメントがいくつか見られた。確かにこの主張はわからんでもない。最近では「セクシー田中さん」の原作者がメディアミックスの脚本でトラブルの末に自殺するというショッキングな出来事が起きたこともあり、棘のある言い方になってしまったが他人のふんどしで相撲を取る輩に関しての目が厳しくなっている。もちろん、原作者の気持ちを蔑ろにした脚本は淘汰されるべきではあるしこの世にはいらないと自分も強く思う。しかし、一方でその機運が高くなりすぎてクリエイターの化学反応に蓋がされるのはもったいないと感じる自分もいる。今回は脚本家、原作者のXの投稿を見る限りは互いにリスペクトを持った改変であり後者なのではないのだろうか。

脚本家の花田十輝先生の"X”の投稿
原作者の武田綾乃先生の”X”の投稿

次はどえらい改変である。確かにえぐい。1番が選ばれた瞬間に「えっ」と声にならない声を出したのは言うまでもない。何を食べたらこの結末を思いつくのか。まだ思い出すだけで鳥肌が立つ。えぐさの正体はぽっと出の黒江がソリに選ばれた事。ここにフォーカスが当たっているがこの後の久美子と麗奈の成長が感動させられる。実際のセリフを引用しながら語らいたい。オーデで黒江が選ばれた直後の久美子は

これが! 今の北宇治のベストメンバーです」
ここにいる全員で決めた、言い逃れの出来ない最強メンバーです!
これで全国へ行きましょう」
そして、一致団結して! 必ず、金を…全国大会金賞を取りましょう!
/黄前久美子

響け!ユーフォニアム3 第12話「最後のソリスト」

かっこよすぎる。選ばれなかった事実を悲しむより先じて北宇治の金賞のための発言をしてる久美子に指揮台の前で上ずって話す姿はなかった。この時点で成長である。この時点でかなりくらったがその後の大吉山でそれ以上が来るとは予想していなかった。

違う…違うの!
私分かってたの…分かっていたの…分からないわけないでしょ?
久美子の…音を
/高坂麗奈

響け!ユーフォニアム3 第12話「最後のソリスト」

泣ける。自分が裏切る形となって大吉山で泣きじゃくっている高坂麗奈と考えた自分の底の浅さが思い知った。1期の久美子のモノローグの「強くあろうとすること、特別であろうとすることが、どれだけ大変かということを」を思い出してゾクッとしたのは言うまでもない。あの涙はそれを初めて実感したからなのであるとただただ感情が揺れる。そして、ただひたすらに高坂麗奈に憧れる。自らの良い音を選ぶという信念と久美子とソリを吹く希望を天秤にかけたときに信念を貫いたのは強い人がすぎる。1年生の特別になりたいという言葉を完全にここで回収していた。それと同時に中世古先輩とのオーデは特別になるためにねじ伏せると言い切る尖り散らかしていたのに対して久美子の時は号泣している点で麗奈の久美子への存在の大きさが感じれて美しい。

だって、麗奈は…特別だから
きっと曲げない…麗奈は最後まで貫いたんだよ

私はそれが何より嬉しい
それを誇らしいって思う自分に胸を張りたい

でも、そんな麗奈だから
実力で勝ちたかった…それで、最後は麗奈と吹きたかった

私…私…こんなにも…死ぬほど悔しいーーっ!
/黄前久美子

響け!ユーフォニアム3 第12話「最後のソリスト」

その後の久美子のセリフは陳腐な感想だが泣ける。自分は音楽に踏ん切りをつけた一方で特別になるために音楽を続ける麗奈が友情より信念を優先したことに対して最大限の応援のように感じる。ある意味では黒江にはいなかった理解者が麗奈には存在していたのだ。それは久美子であり久美子が麗奈を特別であり続けたのかもしれない。そして、そんな麗奈に認められなかった事実はあきらめるには十分な理由であり、もうなんか書いてる自分の感情はぐちゃぐちゃである。

ここまではセリフを引用しただけであるが本題であるエグイ改変に対しては滝先生の責任放棄である主張が散見された。確かに一理ある。オーディションで進めて最後は甲乙つけがたいから投票にするのは確かに職務放棄感は否めない。しかし、自分としては久美子に試練を与えたかったのではと考える。さすがの滝先生でも黒江と久美子の人気調査だけだと久美子が優勢であるのはわかっていたはず。しかし、同じ質で人気で久美子を選ぶのは自然な流れであるが上手い人が吹くを至上命題としている北宇治としては正しくない。皆に平等な正しい人になりたい久美子がこの事実にどう向き合うか。滝先生は音楽を越えた人としての成長を期待したのかもしれない。それ故に、音だけで判断してほしいと直訴した久美子に驚きにも似た感動した態度を見せたのかもしれない。久美子は滝先生が想像していた以上に正しいを追求していたのかもしれない。職務放棄というよりかは音楽を越えた成長を促したかったのではなかろうか。

そして、結果は

響け!ユーフォニアム3 第13話「つながるメロディ」

ただただひたすらにおめでとう。最後のセリフを麗奈の嬉しくて死にそうってしたのは憎すぎる演出。全国の演奏シーンは久美子の3年を回想させる激エモ演出していたが、結果にドキドキしすぎて全く感動できなかったのが惜しいし悔しい。ありきたりではあるが、過程が結果を救うし、その逆も然りで結果が過程を救うのである。

まじで卒業してしまった響け!シリーズ。全てがキレイに完結した。
残ったのは俺たちだけ北宇治から卒業出来ていない現実だけ。。。。

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