角野 渉

一級建築士・博士(建築学) 一級建築士事務所 kadono design NODE 代…

角野 渉

一級建築士・博士(建築学) 一級建築士事務所 kadono design NODE 代表/ 東京都立大学 客員研究員/ 共著「建築転生 -世界のコンバージョン建築II-」(鹿島出版会, 2013)

最近の記事

【受継ぎの家】 工事日記 -11

自邸建設もいよいよ上部構造の工事入ります。 この日は木材搬入日。 保険の関係で、基礎の完成から1ヶ月ほど空いてしまいました。 ここから本格的に木工事の開始です。 増築部分や新しい壁を構成する部分は、プレカット(工場で予め長さや接合部等の加工がされている)された構造材を使用します。 建物の周りには使用する部材が次々と置かれる。 その側で、基礎屋さんは芯出しをしています。 基礎の上に建物全体の基準となる線を書き込んで、全体の精確な位置出しをするためです。精確なほど、既存建

    • 【受継ぎの家】 工事日記 -10

      基礎コンクリートの立ち上がりです。 実はここで、既存構造と関係して重要なポイントがあります。それは"柱を垂直にすること"。今回の構法は、既存の柱を飲み込む形で施工するため、立ち上がりのコンクリートが固まってしまうと、柱の傾きも固定されてしまいます。なので後から修正することができません。 しかし、既存の骨組みは全体的に色んな方向へ少しずつ歪んでいます。そのため精確に水平・垂直になってはくれません。元々プレカット工場で切り出された精密な材でもなく、また経年の変化もあるため、水平・

      • 【受継ぎの家】 工事日記 -9

        基礎のコンクリート打ち、1日目。 全体の耐圧盤までを敷設します。今回はベタ基礎の構造形式を採用しているので、この耐圧盤が建物全体の荷重を直下の地面に等しく伝える役割を担います。 重たいコンクリートですが、ポンプ車を使って圧送。この金属管の中をコンクリートが通ってきます。一番遠いところで、ポンプ車から40mくらいの長さ、高低差で6mほどの距離を打っていきました。 コンクリートを送った先では、何人もの職人で平らに均していきます。 こうして耐圧盤までが出来上がりました。 雨が

        • 【受継ぎの家】 工事日記 -8

          忙殺されて更新が止まってしまいました。 まだ工事は終わってなくて、もうすぐボード貼りが始まるというくらいです。前回の投稿から半年も経っているんですね。かなり長い工事になっています。 写真をみて振り返りながら、工事日記を更新していきます。 ある程度ユニットを組んで作られた配筋を、まずは既存基礎に被さるように設置していきます。 ユニット配筋も一部切り取ってから配筋し直さないと入らないような場所もあるので、割と手間がかかります。 増築部は新しい配筋を組んで、全体の基礎天端が揃う

        【受継ぎの家】 工事日記 -11

          【受継ぎの家】 工事日記 -7

          工事は最初の山場、基礎配筋に入りました。 なぜ山場かというと、今まで誰もやったことのないような基礎を作るからで、当然、職人さんも初めての暗中模索の中進めることになります。しっかりした基礎を作れるかは、この配筋によって大きく左右されるので、職人さんと意思疎通を密にしなければなりません。 現場に鉄筋が運び込まれました! ある程度はこのように工場であらかじめ組んだものを搬入し、現場での手数を減らして効率化しています。 そして重機の登場! 鉄筋を一つずつ現場に吊り上げて搬入しま

          【受継ぎの家】 工事日記 -7

          【受継ぎの家】 工事日記 -6

          いよいよ基礎の外枠を設置です。 リノベーションでは、更地から始める新築と違って、既存建築を基準に寸法を押さえていきます。その際、既存建築の施工精度が悪い場合も多いため、どのように抽象的な図面との整合をとるかが重要になります。 今回のケースでは、違法増築された部分の精度が最大で20mmほどズレており、これを補正するように基礎の位置を設定しました。 既存の土台を飲み込むように設置した型枠。空中で形が変化するだけでなく、既存基礎の外側に雨垂れが流れるように微調整を依頼するなど、か

          【受継ぎの家】 工事日記 -6

          【受継ぎの家】 工事日記 -5

          捨てコンを打設! これで増築を含んだ新しい建物の形が一気にイメージしやすくなりました。 既存の床下は土でした。捨てコンを打つ前に、防湿シートを被せることで湿気の立ちのぼりを抑えました。 これから基礎型枠を設置、そして基礎配筋へと進みます。

          【受継ぎの家】 工事日記 -5

          【受継ぎの家】 工事日記 -4

          一部、屋根を低く抑える部分に既存の骨組みが残っていたので、既存暖炉周りの施工性などを考えて、この部分は土台ごと骨組みを撤去しました。暖炉の上に架かる梁を見るとわかるのですが、かなり腐食してダメになっている箇所も散見される部分でした。 この部分は既存建築の違法増築部。オリジナルの部分に比べると造りが甘いためか、購入時にはヒドい雨漏りもしていて、腐食も多く見られました。 砕石敷きを終えたら、次は捨てコン打ちです。

          【受継ぎの家】 工事日記 -4

          【受継ぎの家】 工事日記 -3

          忙しさのあまり更新が早速滞りました。根切りが終わり、砕石敷きが進みます。既存建物がある部分は、床下の土の部分を転圧したのちに砕石を敷き、再び転圧。今回は良好な地盤だったということも、こうした工法を採用できた背景となっています。 下写真の右に写る基礎の向こう側は既存部分、手前側は増築部分なので、耐圧盤(ベタ基礎の面の部分)の高さが変わります。こうして基礎コンクリートを作るための事前準備をしました。

          【受継ぎの家】 工事日記 -3

          【受継ぎの家】 工事日記-2

          工事は、まず建物の全体形の墨出しから。この木柵は、そのための糸を張るためのもので、よく見るとうっすらと黄色い糸が走っているのが見えます。これが基礎の外形線になります。(ちなみに上の写真で手前に土が見えているのは、解体時に降ろした瓦を置いていたところで、工事の邪魔になるので隅っこに週末一人で移動させたのですが、全部運びきるのに3日もかかりました↓笑) この建物の設計で一番苦労したのが「基礎」と言っても過言ではありません。なぜなら今回の増改築では、全体が「新耐震基準」を満た

          【受継ぎの家】 工事日記-2

          【受継ぎの家】 工事日記 -1

          昨年から横浜に自邸を設計していたのですが、先週、ようやく基礎工事が着工(施工:志馬建設株式会社)したので、進捗などをここで発信していこうと思います。 タイトルにした「受継ぎ」というのが今回のテーマ。とは言っても、このお家は親や親族から譲り受けたものではありません。たまたま見つけた土地に夫婦で一目惚れして、購入したその土地に残されていた古家(築50年)でした。これを完全には壊さずに、以前の持ち主から受け継ぐ形でこのお家を更新できないかと考えたのが「受継ぎの家」です。つまり

          【受継ぎの家】 工事日記 -1