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序章 鮮血の天使 その日を、少年は海の上で迎えた。 「ねぇ、気付いてた? 今日はあなた…
不意に光が床に移動したのは、男が天井の金具に懐中電灯を吊るしたからだ。 同時に長身の…
ドイツ国防軍第二七七歩兵部隊 一九四〇年十月二十九日。 現在、戦線はアフリカ大陸西…
爆走するジープの座席がガタガタ震える。 常人であれば耐え難い振動だろうが、それは船の…
鼻歌を歌いながら車に乗り込み、その場を後にしたいところだった。 だが、そうはいかない…
あなたの為に生きて、死ぬ これは慣れた音だった。 絶え間なく響く銃声。乾いた連続音は…
「大丈夫か?」 左手と足だけでするすると器用に崖を登りながら、アミがこちらを見下ろす。 「両手があれば、キミを抱えて登ってあげられるのにな」 何となくすまなさそうな調子に、ラドムは複雑な表情でうなずきを返した。 ──いつもの彼女だ。 少々間が抜けているものの、穏やかで思いやりの深い、いつものアミ──いや、昨日初めて言葉を交わしたラドムにとっては自分が知っている彼女、というだけにすぎないのか。 だからこそ、ひどく戸惑う。 今のアミは、ロムと対
──とは言ったものの、だ。 ほどなくして、ラドムは自分の意固地さを後悔することとな…
モン・サン=ミシェルへ 目の前に横たわったそれを見下ろして、女は直感した。 ──ヤ…