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選ぶことの尊さよ。

この前、漆(うるし)フェアにいったとき、「在庫、たくさんありますから。選べますよ」と店員さんが声をかけてくれた。

わたしが手にとったのは、漆のお箸。
今まで買ったものの中で一番高価なお箸だった。買うことを決めたら店員さんが20本くらい出してくれて、超真剣に迷った。
漆のかかり具合や木目の出方が1本1本違っていて、消去法でどんどん絞っていく。

最後は2択になって、迷いに迷ってにらめっこ。

決めた。

わたしの心を動かしたポイントは「かたち」と「色」だった。

こうして選んだお箸には、愛着がわく。あれだけいる中で勝ち残ったのだから、すぐにボキッと折るわけにいかない。丁寧に扱おうという気持ちが自然と出てくる。

『選べますよ』と声をかけてくれた店員さんはとてもうれしそうだった。
そう言われるとわたしもなんだかうれしくて、選ぶことに気合いが入った。腕まくりまでしちゃったもんね。

***

選ぶことって特別感が増すな…と思う。
「なんでもいい」と思ってしまえば、選ばないですぐに帰れる。
でも、大切にしたいものってきっとそうじゃない。
選ぶということは、今からお家に迎え入れる「ひと」と「もの」の間の小さな儀式のようなものだと思う。

わたしもうつわを販売しているときは、この「選ぶ儀式」に度々立ち会う。
長い人は、30分〜1時間くらい悩む。わたしはバックヤードから両手にうつわをたくさん抱えて、売り場のスペースを拡げて何枚も並べる。色んな角度、光に照らしながらお客さんと一緒にうんうん唸って、迷って、絞っていく。
毎回、この時間は尊いなぁと思う。愛着ポイントは人それぞれにあって、正直なにが基準となっているのか、わたしにはわからないけど、そうやって選ばれて連れて帰られるうつわは幸せものだと思う。

帰ってうつわを使うとき、「この点の模様が気に入ったんだよな」、とか「高台のここの部分がたまらないんだよな」、とか。そうやって想いながら暮らす生活って、豊かだなぁと思う。

選ぶこと、選ばれることを通じて、「ひと」と「もの」の間にいい関係が生まれている。出会いってひとだけじゃないんだね。
これを書いていてなんだか、ほくほくした気分になりました。

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