畑中篤さんの個展、無事に終わりました。ありがとうございました。また会いましょう。
今週でオンラインショップも含めて畑中篤さんの個展が無事に終わりました。みなさんほんとうに、ほんとうに、どうもありがとうございました。
ちょうど昨日畑中さんがお店に来てくれて、色々振り返りながら話をしました。あの人が来てくれてこんなことがあったね、あんな話をしたね、こんな感想が届いたよなどなど、お互いそんな話ばかりが溢れてきて、あぁよかったなと心からホッとしました。
草々としては2回目の個展。
毎回そうなのですが、はじまる前までは人が来てくれるかドッキドキでした。畑中さんがすてきな作品をめちゃくちゃがんばってつくってくれて、ただただそれを一人でも多くの人に見てほしい。畑中さんに会うたびにその気持ちが高まって、気づけば夢中で走りきった3週間でした。
結果ね、すんばらしい個展になりました。
お店をあけていた9日間、ほぼ途絶えることなくずっと色んな人が来てくれました。草々によく来てくれる方、畑中さんの友人やファンの方、はじめましての方、県外からも!こんなに毎日「ありがとうございます」といえるなんてありがたい気持ちでいっぱいでした。
初日から畑中さんもよくお店に来てくれて、色んなお客さんと喉カラッカラになるまで喋っていました。みんな目をキラキラさせながら畑中さんの作品を見たり質問をしたりしていて、心からうれしいなぁと思う光景にたくさん立ち合わせてもらいました。まるでアイドルの握手会のように畑中さんと話したくて待っている人もちらほらいました。やっぱりご本人に会えるって貴重な機会なんだなぁ…と。
ちょっと色んなことがありすぎた9日間でしたので、目次をつけて振り返りをしたいなと思います。
拍手に包まれたトークイベント
2日目の朝に開催したトークイベント。
前半は、畑中さんが今回の個展への想いや、なぜ陶芸をはじめたのかなど幅広くお話してくれたのですが、とくに印象に残っているのは後半の参加者が畑中さんに質問したシーン。
これに対して畑中さんは、「あります。展示会を繰り返すたびに思っています」と話していました。そのあとで、「でも、自分があまり好きじゃないなと思う作品でも、逆に気に入って持ち帰りたいと思ってくれる人がいることがわかって。だからもう、自分のフィルターにかけて判断しすぎることはやめたんです」と話してくれました。
続いて、こんな質問もありました。
畑中さんはうーんとしばらく考えて、やっぱり急須かなぁといいながら具体的に「これ」という話はしていなかったのですが、「まるみが心地いい」という話をしてくれました。完璧なまるではなくて、すこし石がゴツゴツしたり自立するために形状を工夫しながらも、柔らかな曲線を描いて立っている。
だんだんと、歪みを受け入れられるようになってきたという話から広がって、「他の人がつくった作品をいいなと思えるなってきた」というお話も。
さらに、お客さんから質問ではなくこんな要望も出てきました。
!!
このお客さんは、畑中さんの作品を見ていくつかの作品のなかから「小さな叫び」を見つけたらしい。畑中さんはそれに対して、「ほんとうはもっと叫びたいんですよ」とスイッチが押されたように答えていました。畑中さんはほんとうはオブジェなど造形に軸があるものも力を入れてつくっていきたい。しかし、芸術と生活の間でどう折り合いをつけるかに長年悩んできたなかで、「叫ぶもの」「使いやすいもの」を切り分けてものづくりをするようになった。でも、これからは「時々叫んでいきたい」という話をしてくれて、自然と拍手がわきおこって畑中さんを応援するあたたかい空気のなか、トークイベントは幕を閉じました。
さらに、個人的に畑中さんが話していたなかで印象に残っているのがこのお話でした。
「30代までは、陶芸をやめようと思うことは何度もありました。こだわりが捨てきれない自分が面倒で、いい作家を見てはないものねだりばかりしてきた。自分には陶芸は向いていない、明日やめようやめようと思うなかで、良いテストピースが焼き上がるたびにもう少し続けてみようかなと思ってきた。その繰り返しでつなぎとめられてきて、40代になってから ”いまの自分はこうなんだ" と思えるようになったんです」。
瞬間、私は目をまんまるくして畑中さんを見つめていたと思います。
こんな話、インタビューではしていなかった。40代になって割り切れてきた話は畑中さんの口から聞いたことがなかった。この半年でもしかしたら、畑中さんのなかで小さな変化が起こったのかもしれない。
そう思って、心でうるうるしながら私はしばらくトークイベントの余韻に浸っていました。
初夏の茶会
そしてそして、個展期間中には草々として初めてお茶会も開催しました。
佐賀県から来てくれたhitofuki の森繁さん。茶人として全国でお茶を淹れている方で今回奈良には初めて来てくれました。
このお茶会がもうね、すんばらしかったのです。
実は本番がはじまる前に「プレお茶会」として関係者だけで軽めに開催しました。大家さん、お茶農家さん、畑中さん、お菓子作家さんなどを交えてやったのですが、お茶を飲みながら自然とお互いの仕事への想いを語り合う場になり…。なんともいえない、幸せに満たされた時間を過ごしました。
hitofukiさんの淹れてくださるお茶は、あたたかくてやさしくて、ずっとまどろみのなかにいるような体験でした。
彼女は、「お水と葉っぱを合わせているだけ」といいますが、そのシンプルな行為に込められたものが、こんなにも心の深部にまで届くものかと…。
ほんとうに贅沢な時間でした。
シンとした静寂な空気、お茶を淹れる音や外から聴こえてくる自然の音、
口に含んだときの広がり、ぽつりぽつりと交わされるお話。
どれも尊く感じて、ちょっと大げさな表現になってしまいますが、こんなにも「生きていてよかった」と思える日が来るなんてと、これを書きながらいまも余韻が続いています。
お茶会直後の参加してくださったみなさんのおだやかな表情も忘れられません。驚いたのは、誰一人、終わってスーッと帰った人がいなかったことです。みんな余韻をたのしむように、お店で畑中さんの急須や湯呑みを手に取ったり、感想をいい合ったりとうれしそうにしていた光景が見られました。
参加してくださったある方がSNSに、
と書いてくださっていたのにはとても感動しました。
また、こんなうれしいお話をnoteに書いてくださった方もいました。イラストがね、すてきなんです。わざわざ東京から、ほんとうにありがとうございました。
これもまた、うれしい感想…。ありがとうございます。
さらに、最後のお客さんが帰り際にhitofukiさんに「また会える気がする」といっていたことばも忘れられません。
自然と出てきたことばなのだそうですが、その様子を側で見ながらウルウルしてしまいました。
山の麓菓子店さんのお菓子もすばらしかったです。
口に含むと、見た目の「すてき」を良い意味で大きく裏切るような味わいが広がって。
これはもう、食べた人にしかわからないことですが、彼女にしかできないことだとあらためて、感動しながらゆっくりと味わいました。
いつもいつも、真っ直ぐに向き合う姿勢には学ばせてもらうことばかりですし、そういう意味では、畑中さん、hitofukiさん、山の麓菓子店さんには根っこの部分で大事にしていることが似ているなぁと思って、それにもまた湧き上がってくるものがありました。
「自分のためにお茶を淹れようと思いました」
今回、このことばを参加者やお客さんからたくさん聞きましたし、私もあらためてその気持ちが強くなるようなお茶会でした。
※ちなみに今回のお茶会でつかった古民家は現在空き家になっていて募集中です。よかったらぜひ問い合わせてみてくださいね。
個展を支えてくれた仲間たち
最初の3日間も盛り上がりました。
初日は、60珈琲さんによるサイフォン珈琲、とことこさんによる手作りドーナッツの組み合わせで個展がはじまりました。
60珈琲さん、畑中さんのうつわでコーヒーを淹れてくれたのですが….
ガーン!写真が一枚もありません。
息をする間もないくらいのドタバタで、すっかりうっかり。
ほんとうにすみません…。安定のお二人は相変わらずいい時間を届けてくれて、私も終わったあとに味わったのですが最高な時間でございました、ハイ。
2日目、3日目はYAHMANCOFFEEさんと京終やまぼうしさんが来てくれました。
YAHMANさんがコーヒーを淹れはじめるとその場の空気が離島にきたようなおだやかさに包まれる。やっぱりすごい人だなぁ…と、抜群においしいコーヒーを飲みながら思いました。
京終やまぼうしさんも気合い入っていました。なんと、畑中さんのうつわでシュークリームを出してくれて。これがもう…(絶句)
焼き菓子も安定のおいしさで、そもそもYAHMANさんもやまぼうしさんも畑中さんと親交があるので、終始アットホームな空気に包まれていました。
お客さんも熱心にコーヒーとお菓子を味わっていて、食レポ並みの感想をいう人もいて。側で聞きながら私もうれしくなりました。
そうそう、京終やまぼうしさんの看板は畑中さんがつくったものなんですよ。これもすてきでした。
3日間通してあらためて思ったのですが、こんなに安心できる仲間はいないよなぁ…と。みんなそれぞれに、熱意とこだわりと真摯な姿勢でおいしいものを届けてくれる。来てくれる人もその気持ちを受け取って、ことばや態度や表情で伝えてくれる。結果、おいしさ以上の心地よさが満ちてくる。
みんなにとって幸せな時間でした。
60珈琲さん、とことこさん、YAHMANCOFFEEさん、京終やまぼうしさん、
お忙しい中ほんとうにどうもありがとうございました。
初めてうつわを選ぶ人、急須の魅力を知る人
さらに印象に残ったシーンがあります。今回の個展で、
「初めてうつわを選ぶのですが、手伝ってもらえませんか?」
と声をかけてくれた女性もいました。
きっと話しかけるのもドキドキしただろうと思います。色々お話していると、最初は「どうやって使うのか」ということばかりを気にしていましたが、私や畑中さんと話していたら「自分の心が動くものを好きに選んでいいんだ」ということが分かって、パァァァッと背景にお花が咲いたように明るくなっていたのがとても印象に残っています。そんな大事な瞬間に立ち会えたことが私もすごくうれしかったですし、数年前はじめてうつわに出会ったときの自分を見ているようでした。
また、畑中さんの急須についてもあたらしい気づきがたくさんありました。
一番印象に残っているのは、常滑急須専門店の方がきて畑中さんの急須を絶賛していたことです。
その方は、畑中さんの急須を見ながら「職人ができないことをしている」と話していました。一つひとつ、土によって形状を変えている。蓋も気持ちいいくらいにピタッと閉まる。湯呑みも急須もつくっている。
常滑の作家の間でも評判らしく、その話を聞いてあらためてすごい!と唸りました。
今回、水切れのチェックをお店でできるようにしていたのですが、みなさん水の流れる音や感触にも感動していました。きれいにアーチを描きながら流れる水は、そのまま絵になるような光景でした。
急須って奥が深いんだ、と私もますます興味が湧いて、急須を使うことがさらにたのしくなりました。
個展をやりながら、さらに陶芸家さんやうつわの魅力を知ることができる。やっぱりいい時間だよなぁとあらためて思ったのでした。
***
(ハァハァ)
ここまで書いてきて、ほんとうはまだまだ紹介したいエピソードがたくさんあるのですが、そろそろ終わりにしようと思います。
さいごに。
今回私がお店に立っていて一番うれしかったのは、畑中さんも出店者さんもお客さんもみんなそれぞれに、個展で過ごす時間を味わっていたことでした。目的の作品を買ってすぐ帰るのではなく、何往復もして眺めたり、おしゃべりしたり、食べたり飲んだり。それぞれに物質的なものだけではなく、ホクホクするなにかを持ち帰ったのかな、ということが帰るときの表情からありありと伝わってきました。さらに、「個展またやってください」と私や畑中さんにリクエストしてくれる方も多くて、それはもうめちゃくちゃうれしかったですし、すごいことだと思いました。
終わったあと、畑中さんに「またやってもらえますか?」とおそるおそる聞いたら、少し笑って頷いてくれました。視力もまぁまぁいい方なので、きっと見間違いじゃないと思います。きっと…やってくれると思いますよ。やったー!
ということで、2024年の個展もお付き合いくださりほんとうにありがとうございました。
7月からの草々もメインテーブルイベントで色々企画していこうと思いますのでぜひたのしみにしていてくださいね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
***
うつわと暮らしのお店「草々」
住所:〒630-0101 奈良県生駒市高山町7782-3
営業日:木・金・土 11:00-16:00
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