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うつわから伝わる気持ち。いにま陶房インタビューを終えて

奈良新聞で「いにま陶房」のインタビュー記事がアップされた。

いにま陶房は、奈良県の吉野郡、川上村で作陶する陶芸家、鈴木雄一郎(ゆういちろう)さんと鈴木智子(ともこ)さん夫婦のこと。
今回2人にお会いして色々話を聞いて、改めてうつわって人柄をうつしだすなぁと思った。

私が惚れて買ったものは雄一郎さんがつくったやさしいうつわのスープマグと、智子さんがつくった平皿。

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私はこのうつわを使うたびに「やさしさ」を感じる。
口あたり、手触り…色々あるんだけれど、やっぱり会って話を聞いたことが一番大きい。使うたびに2人の顔が思い浮かぶ。あの工房でうつわをつくる姿が思い浮かぶ。

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ろくろを回しながら、2人がふと見上げる景色。

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毎日少しづつ違う風景を見ながら、うつわに向き合い続ける日々。
この写真を撮りながら、私の心は小さく揺さぶられた。川上村へ向かうときに車窓から見た風景、工房の窓から見た景色。家にかえってからも、時々思い出す。


車でしかいけないようなところに川上村はあって、その集落でものづくりをしている人たちがいる。日々の生活と向き合いながら、人に伝えたい思いをうつわに投影している人たちがいる。
エピソードの一つひとつが繊細で奥深く、私とは別の世界で2人は生きてきたのだろうという羨ましさすら感じた。

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ところでこの取材の後半、実はおいしいものトークで私たちは大盛り上がり。

奈良でおいしい和菓子屋さん、お蕎麦屋さん、パンにコーヒーに豆腐に…
お互い話が止まらなくて、それを口にしたときの幸福感を伝えあった。私の取材ノートを見返すとたくさんのおいしいお店情報で埋まっていた。うつわづくりする人はみんな共通しておいしいもの好きだということも分ってなんだかほくほくとうれしい気持ちに。2人は最後まで話に付き合ってくれたし、最後までやさしかった。

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「もうすぐ展示会があるんです。よかったら行ってみてね」
そう言われて、数日後、奈良市内のギャラリーでやっているいにま陶房の展示会へ行った。手帳に書いてずっと楽しみにしていた。

展示会は「空蜜(そらみつ)」というところでやっていて、奈良駅から少し山の方へいった高畑というエリアにある古民家を改装したギャラリーだ。

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ガラガラっと入り口の引き戸をあけると、あの川上村で過ごした時間が蘇ってくることに。

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中でも一番感動したのが、私がひとめ惚れで買った智子さんの作品だ。


工房でこのうつわを見せてもらったとき、智子さんはこう話してくれた。

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「このうつわね、実は1枚の絵になっているの。空蜜さんの展示のときに1枚の絵にして展示してみるからよかったら見てね」


へぇ、このうつわ。つながっているんだ。どんな感じなのだろう、楽しみだなと思いながらある部屋に入るとこんな光景が広がっていた。

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私はこの展示の前で座り込んでしまった。

智子さんの言うとおり、私が持っているあの平皿は1枚の絵になっていた。

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中央のモニターには川上村で2人がうつわづくりをする映像が流れている。私が川上村で感じたおだやかな空気が、この展示から、この映像から、生き生きと蘇ってきた。と同時に、ギャラリー店主のいにま陶房への思いの強さが重なって、私はこの展示の前でマジで感動してボロボロと泣いてしまった。

うつわって、単体でも素晴らしいけれどこうやって展示されるということはそのうつわに新しく命を宿すことでもあるんだなぁ…と。

智子さんのうつわは、今私の自宅で絵画のように飾っている。

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「うつわって、飾るものいいんですよ」

帰りがけに2人が教えてくれたこと。このうつわに描かれているのは智子さんが散歩中に見つけた、いつかの木漏れ日の風景。
ものが思いを伝えてくれる。そんな大切なことを私は2人から教えてもらったようだ。



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