変化成長し続けるチームだからこそ、「変化したい」企業のパートナーになれる
KDDIアジャイル開発センター株式会社(以下、KAG)は、「アジャイル開発」という言葉がDXの流れで国内に浸透する以前の2013年から、KDDIの社内組織としてアジャイル開発に取り組んできた。さらに2022年からは蓄積してきたその経験を「実践知」として、社外の企業にも提供している。ノウハウや知見を伝えるだけにとどまらず、パートナー企業と協働して新たな価値を創造するKAGのプロフェッショナルたち。今回はVPoE 兼 開発戦略本部 本部長を務める岡澤克暢に、アジャイル開発がもたらす組織文化について、話を聞いた。
組織として個人として、変化し続けるために
KAGのマネージャーとして、組織マネジメントにおける私のモットーは「一人ひとりが違っていい。多様なメンバーが集まることで、最高のチームが生まれる」です。メンバーがプロフェッショナルとして相互に謙虚かつ尊敬し合い、共通のゴールに向かう環境を大切にしています。そのうえで、個々の個性を尊重し、それぞれが最大限の力を発揮できるようにし、誰もがチャレンジしながらワクワクして成長できる組織作りに注力しています。
確かに、同質性の高いメンバーが集まれば居心地は良いかもしれません。しかし、それでは新しいアイデアが生まれず、刺激も少なく、成長が鈍化するでしょう。過去の成功事例が通用しにくい現在だからこそ、異なる考え方を持ち寄り、変化を恐れず、ひとつの目標に向かって進む姿勢とチームの力こそが、独自の新しいものを生み出す原動力になると考えています。
この10年間、アジャイル開発に関わってきて、ひとつ、わかったことがあります。それは、「変化したくない企業はない」ということ。
どの企業も、怒涛のスピードで変わりつづける世の中にしっかりと対応できる、タフな組織へ変わりたいと願っています。ただ、きっかけがなかったり、何から手をつけていいのかわからなかったり、人財不足を嘆いていたりするだけなのではないでしょうか。
しかし、人財不足には2つの種類があるかと思います。1つは単純な人財不足、もう1つは人財を育成できる人財がいない。DX推進において、企業のビジネスを変革するとともに組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、マインドチェンジすることが重要です。
そこでKAGの出番です。これまでの豊富な実践知を持っている我々がパートナーとなり、アジャイル開発、サービスデザインを通して人財育成を加速させるお手伝いができると考えています。そうして自走できるようになったら、我々は離れる。人財が育って勢いのついた組織は、変化の激しいこの世の中をタフに渡っていけるようになるでしょう。
誰にでもある悩みですが、運動しようと思ってジムに通っても、なかなか続かない。だからこそ、継続するためのパーソナルコーチという存在は大きい。新しいことにチャレンジするとき、伴走者がいることによってゴールまで走り切れる可能性は大きく増すと思うのです。
ある企業とプロジェクトを協働でスタートする際、先方の社長がこんな話をされました。
「我々は変わっていかねばならない。いままでのやり方を捨てるのではなく、企業のDNAは残したまま、新しいところを目指していこう」。
まさにその通りであり、大切なことが詰まったメッセージだと感じました。「変わる」というと、「過去を否定して新しい未来に向かう」といったイメージをしがちですが、すべてを変える必要はありません。必要なのは「変わろうとチャレンジすること」なのです。
世界で戦うために必要だと確信した「アジャイル開発」
私自身がアジャイル開発に初めて触れたのは、2011〜2012年ごろです。
もともと私は官公庁向けの通信SlerでWeb開発からインフラ領域まで広く携わっていたのですが、「これからはモバイルファースト/クラウドの時代が来る」と直感し、モバイルとクラウドの両方を自社提供しようとしていたKDDI に2009年に転職しました。
それから間もなく、Googleからスピンアウトした海外のベンチャー企業と協働し、モバイルサービス開発を模索することになりました。その開発スタイルが、まさにアジャイルだったのです。
当時の自分はウォーターフォール開発(プロジェクトの立ち上げからソフトウェアの開発までを複数の工程に区分し、上流から下流まで順に進める開発の仕方)をメインで実施していたので、正直、戸惑いました。日本とはカルチャーそのものが違っていて、開発中のサービスをベータ版で出すのも当たり前。とにかくスピードが速かった。
また、そのベンチャー企業はエンジニアをとても尊重していました。CEOが「その機能については、エンジニア含めてユーザーに利用されるものか意見を聞いた上で回答する」と言うのです。当時の日本企業はエンジニアの仕事をアウトソースするのが普通だったので、本当に衝撃でしたし、エンジニアに対する絶大な信頼があるからこその発言だと感じました。ちなみにこの時に一緒に働いたベンチャーのエンジニアたちは、多くの人が知っているグローバルサービスを立ち上げて現在も多岐に活躍しています。
世界で戦うためにはアジャイルが基本であり、その開発スピードについていくためには優秀なエンジニアが社内で活躍する環境を整える必要がある。
私はそのように確信しました。
KAGの約10年の実践知が、いま役立つ
KDDI社内でアジャイル開発に取り組み始めたのは2013年7月。いまから約10年前のことです。Google出身の藤井彰人(現KDDI Digital Divergence Holdings株式会社 代表取締役社長)が旗振り役となり、KDDIの小さな会議室を“城”に、やる気に満ちた6、7人が結集して、一気に走り出しました。
当時の私はプロダクトオーナーとふたりで事業を考え、誰にどのような価値を届けるべきか、リーンスタートアップ、サービスデザインを必死に実践してました。もちろんビジネスなので事業目標も明確にして進めていきました。未知のことも多く、スタートアップ企業の経営陣にビジネスモデルを見てもらったり、サンフランシスコ周辺を何度も訪問し、本当のアジャイルの進め方、サービスデザイン、UXを学びにいったりと、思いつくことは何でもやりましたし、時折、藤井の差し入れてくれたピザやドーナツを急ぎつまんではエンジニアと共に共通の目標に向かって走り続けるという日々だった。KDDIという日本でも有数の大企業にいながら、まるでスタートアップで働いているようなワクワクする毎日でした。
当時のKDDIもそうでしたが、一般的なSI企業はエンジニアが複数の案件をもって開発します。しかし、エンジニアが案件ごとに頭を切り替えるのは非常に大変です。コンテキストスイッチコストが掛かったりする。そこで、兼任をなくし、シングルタスクで走って開発速度を上げようと考えました。当時の私は複数のプロジェクトのリーダーでしたので、専任が決まるまでは自分が担当を引き受けエンジニアがとにかく集中でき成長できる状況にするなどして、この時期をさまざまなメンバーの協力をいただきながら乗り切りました。
こうして従来型の組織編成をアジャイルに適したものへと変えていき、数々のサービス開発に携わってきた結果、2022年5月に「アジャイル開発センター」は法人化されました。
よく十年一昔といいますが、この短い期間で数多くのサービスが生まれています。例えば『auでんき』。電力小売業がオープンになった段階で参入し、アプリを開発しました。電気使用料の推移や使用状況の分析が見られるなど、自分がユーザーであれば嬉しいサービスになっていると思います。初期アプリは3カ月でリリースという速さでした。
ホームIoTサービス、MaaSサービス、教育サービス、xRサービス、法人向けのSaaSサービス、販売店向けのDXサービスなど、その他多くのサービスを多くの利用者に届けてきたことはKAGの誇りです。直近では、生成AI関連のサービスを早期に立ち上げ、マルチLLMで提供できているのはプロフェッションなエンジニアが多く育つ、そういった企業文化が定着していると感じています。
素晴らしいサービスが数多く生まれるには、理由がある。サービスを提供するチームの1人として、お客様の立場で物事を見ているエンジニアメンバーがたくさん揃っているからです。
特にKAGには「フルスタックエンジニア」という、企業のビジネス開発に必要な幅広い技術スキルをもつITエンジニアが多数います。インフラ構築やコンテンツ開発など1カ所の開発のみならず、フロントエンド(WebサイトやWebアプリケーションで直接ユーザーの目に触れる部分)からバックエンド(サーバーサイドやデータベースのシステムなどユーザーの目に見えない部分)、ネイティブアプリまですべてをつくれるチームが、しかも何チームも揃っています。
彼らは「このサービスは出す必要ありますか」「いま、これをやるべきではないと思います」など、一見お客様と対立するような意見を伝えることも厭いません。お客様のサービスではあるけれど、我々はパートナーとして、自分のサービスとして、開発に取り組み、サービスを利用してくださるであろうユーザーのことを一番に考えます。だから、お客様の考えをエンパワーメントしたサービスを創造できるのです。一方で単にコメントするだけの第三者的な振る舞いでは全く我々の価値を提供できないので、しっかりと個々が責任を持って最後までお客様と一緒にビジネスを創り上げるところまで伴走いたします。
また、KAGではお客様に対して、教科書的でない実践的なリードを行えることも、大きな強みと自覚しています。もちろん、教科書的なベースはしっかりと理解しています。
なぜ可能かといえば、どういうポイントで失敗するか、失敗すると何が起きるか、組織のどこを変える必要があるのか、組織をどう拡大するのか、どのタイミングで何を社内にネゴシエーションしておくべきかなど、私たちが10年間のアジャイル開発を通して実践し、蓄積した知識があるからです。
あるお客様は「無理かもしれないけれど、5年ぐらいで、いまのアジャイル開発センターに追いつきたい」と謙遜気味にお話しされました。私の感覚では、5年あれば十分です。なぜなら我々が10年の経験者であり、伴走させていただければ、5年で間違いなく到達できる。いや、もっと早く、もっと先まで辿り着けるかもしれません。
10年に及ぶ実践知と、確かなスキルをもつKAGのメンバー。そのふたつは、これからDXを推進したいという企業にとって、とても良いパートナーとなれるはずだと自負しています。
パートナーとして、お客様とともに未来を描く
もちろん、我々も常に学び続けています。フィードバックひとつをとっても、ポジティブなものだけでなく、ネガティブなフィードバックを受けることによって、そこが足りていないと理解し、あらためて学ぶ。その姿勢は、KAGのメンバー全員が共通しています。
これはマネジメントを行う私からKAGのメンバーに対しても同じです。私からのフィードバックとなると指示・命令になりかねないので、フィードバックの意味を定義し、あくまで参考として提供し、採用する・しないの判断はメンバーが持っている。イメージとしては、メンバーの見える場所にフィードバックを落とし、自ら拾ってもらう方法を意識しています。その私もまた、メンバーの声を自分へのフィードバックとして拾います。個人の良さを伸ばすポジティブなフィードバックだけではなく、耳の痛いフィードバックの中から自己の成長するポイントをお互いに見つけたいです。
最近スタートしたプロジェクトでは、お客様の中に「このプロジェクトに関わるために部署を異動しました。入社してから初めての大きなチャレンジです!」という方がおられ、その言葉を聞いた経営陣も「私たちもそれぐらいの意気込みで行こう!」と反応してくださいました。実に嬉しかった。お客様の描く未来は「遠い夢物語」などではなく、驚くべきスピードで具体化していくことを、パートナーとして一緒に体感したいと思います。
一人の変化は、そばにいる他人の変化を引き起こす。その変化が、チームをつくり、組織をつくり、企業をつくり、社会をつくる──。
変化する企業が増える先には、日本発の世界中で使われるサービスが生まれる未来があるはずです。「国内の企業で働くことが次の世界をつくる」とデザイナー/エンジニアが信じられるように、変化を恐れぬ企業がこれからたくさん生まれてほしい。そのためにも、私たち自身が学び続け、これからも変化し続けていく組織でありたいと思います。
※ 本インタビューは2023年3月に実施されたものを記事化いたしました。
その後、ご支援させていただいたシチズン様の事例になります。DXを推進にご興味ありましたらご確認ください。
今後も様々なKAGメンバーのインタビューなどを掲載予定です。ご興味を持っていただけた方はぜひフォローをお願いいたします。
また、具体的なご相談などがございましたらコーポレートサイトのお問い合わせページからご連絡ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?