濃くて切ない。感情を揺さぶられたゴッホ美術館@アムステルダム
「本日のチケットは完売しました!」
入館予約の11:00am頃に行くと、もうすでに完売御礼の札が立っていた。すごい人気である。
今回の感想を一言で言うなら
濃くて切ない。
常設展では「黄色い部屋」や「寝室」「ひまわり」など、希望にあふれていた明るいゴッホを堪能できた。やはりゴッホの黄色はとてもきれいな色だ。
芸術家を集めて共同体を作り、影響し合いながら製作する。そのアイデアと準備にどんなにワクワクしていただろう。夢破れる結果を知っているので、余計に痛々しい。
また、日本の浮世絵に対する熱意も大きく、分析したり練習したり、その技術を習得しようとするゴッホの一生懸命さがよく伝わってきた。
いわゆるゴッホのあのスタイルになるまでの変遷もとても興味深かった。
特別展のほうです。
IN AUVERS /his final monthsというタイトルでゴッホの最期の地であるAUVERSでの作品とその背景がテーマだった。
ゴッホの生涯はあまりにも有名なので言わずもがなだけど、彼が孤独と悲しみにどれほどさいなまれていたか、絵を通して感情移入してしまい、美術館を出てからもしばらくはなんとも言えない気分だった。
ひどい悲しみと極度の孤独の中、ゴッホは最期は銃で自ら命をたってしまう。
心の隅に同じような孤独や悲しみを持っている人は、引っ張られるんじゃないかと思う。
そのためか、自殺防止のホットラインや支援の連絡先が作品の展示と共に大きくディスプレイしてあった。
唯一の救いは一番の理解者でもあった弟のテオ。彼がいなければゴッホはもっとはやくこの世を去っていかもしれない。
ゴッホのとある作品に強い思い出がある。
次女がまだ年少さんだった頃、美術教室に通っていた。彼女は絵を描くのがとても好きだった。
その美術教室は、子供から大人まで、自閉症の方や障害のある方も通われていて、絵を描くだけにとどまらず、どんな表現方法も面白がってくださる先生で、大好きな美術教室である。
その日の教室のテーマは、名画をみんなで模写してみようというものだった。
その名画とはゴッホの「カラスのいる麦畑」。
今回の特別展のポスターになっている絵です。
教室が終わるころ迎えに行くと、次女一人だけがこの絵ではなくて違う絵を模写していた。
先生曰く、「どうしてもこの絵を描くのは嫌だと言うので、次女ちゃんだけ違う絵をかいてもらいました」と。
なぜこの絵を描くのを嫌がったのか、その時に次女に聞いたのだけど、そこはまだ言葉もうまくでてこない年少さん。
一生懸命説明してくれるのを聞くと、「この絵は嫌だ」「この絵は怖い」「見たくない」そんな言葉の羅列だった。
「まあ、確かにな。空の色とかも暗いし、なんかザワッとするような感じがあるな。」と、なんの知識もない私はそんな風に思ったことを覚えている。
今回、実物を前にしてみると写真でみるよりはるかに心がざわざわし、伝わってくる何かがあった。
一緒にいた次女も絵の前から動かない。思うところがあるのかもしれない。
この絵が描かれた背景やゴッホの精神状態を知り、どんな絶望の中で筆をとっていたのか、感情移入してしまい、しばらくこの絵の前から動けなくなった。
絵具をのせるひとつひとつの筆の跡に彼の悲痛さがこめられているような気がした。何も知らない小さな子でさえも絵から感じる何か。先入観からかもしれないけど。
ひどい悲しみと極度の孤独。それだけで人は生きる希望も失ってしまうのだと。
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常設展と特別展の陽と陰。強烈な余韻が残ったのは間違いない。
11時に入館し、結局午後の4時まで居ました。1日中でも居れたかもしれません。
日本語の音声ガイドもあるので、行かれる方は是非借りることをおすすめします。
人気のミュージアムなので事前予約は必須です。
ゴッホミュージアムの向かい側にあるcafe BLUSHING でアップルケーキと紅茶をいただきながら、ゴッホの余韻を消化する午後だった。
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