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「うめ婆行状記」宇江佐真理:読書感想/嫁業、母業、妻業を卒業予定の人、没入できるよ!

時代小説が大好きだ。

宇江佐真理さんは特に好きな作家である。

日々の生活に疲れてくると、なぜか時代小説に没入して江戸の町にワープしたくなる。

私自身は、嫁業、母親業、妻業、いまだにどれも進行中であり、すべてから解放されて自分のためだけに生きるとはどんな感じなのだろうと、日々思っているのでこの物語への没入感はすごかった。

時代小説の人情ものを読むと癒されるのは、今の自分の生活に足りていないものがそこにあるからだ。

現実の生活はというと、

となりに住んでいる癖のある老人家族の非常識に悩まされ、

町内の長老の旧態依然とした非効率なやり方を押し付けられ無駄な時間を溶かし、

家族のことよりもお金が大事な義父にふりまわされ、

とにかく相続は端数まで平等に!とオウムのように繰り返す義弟に愛想をつかし、

実の弟はというと自分の母親は放置プレーなのに、奥さんの母親のご機嫌うかがいには週一で顔をだし、

実家のめんどくさいことは私に丸投げ、

実の母親は私の助言に聞く耳をもたず弟のいうことしか聞かない長男大好き人間、

2,3人しかいない私の友達のほとんどはやむなく遠くへ引っ越し、

私と次女がコロナにかかっても知らん顔の夫と長女(洗濯は自分のものだけコインランドリーで済ませ、寝込んでる私たちの分はほったらかし、もちろん食事も用意してくれず。)などなど。

はー。

愚痴をテーマにラップさせたら、エミネムにまけへんのちゃうかな、私。
韻踏んでないけどな。

人間関係めんどくさい。

江戸の市井の人々なんて人間関係はもっと密だったはずなのにとても幸せそうなのはなぜなのか。

たしかハリスの滞在日記にも、江戸の民衆はみな幸せそうに暮らしているというようなことが書かれていたような記憶がある。

この「うめ婆行状記」は宇江佐真理さんの遺作であり、未完です。もし宇江佐さんがお元気で完成させていたなら、どんな結末になったのかなとあれこれ考えをめぐらせる。

全てから解放されたくて一人暮らしを実行したうめ婆。まわりの人とのかかわりを経て、親子の絆、夫婦の愛情、親戚との付き合い、友人知人との縁、生きることや幸せとは何かを悟っていく主人公に自分を重ねる。

嫁業、母親業、妻業を卒業予定の人はぜひ読んでみてほしい。

読み終わる頃には、穏やかなやさしい気持ちになっているとおもう。

今晩も、時代小説を読み落語を聞いて寝るとしよう。

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