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一匙のフルーチェにかける思い

初めましてこんにちは。きたかぜコンロと申します。
今回、素敵な企画があったので参加してみよう……!と思い至り、執筆させていただきました。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


晴れて今年の2月に入籍した、旦那とふたり暮らしの新婚夫婦です。
入籍するまでの日数としては、付き合って半年、同棲して1年半になります。
付き合ってる期間より、一緒に住んでる期間のほうが長かった私たち。

一緒に住み始めて1年半の間、特にトラブルもなく、穏やかな性格の彼。まさにザ・平和!を具現化したような生活を送っていたので、そのままトントン拍子で結婚しました。

滅多に喧嘩しないので、周りの人たちに「どんなことで喧嘩する?」、「旦那の嫌なところないの?」と執拗に聞かれることもありました。
仲の良い知人には「特にない」で終了させるのですが、空気を馴染ませないといけない状況だと「そうですね〜めちゃくちゃゲームするとか?」と旦那が構ってくれないアピールをします。
こういうとき、たいてい何かしらの"回答"を求められているので、何かを返さないと相手が納得しないのもわかります。私もそうなので。

周りからしたら面白みがないかもしれません。
私からしたら、人の愚痴を自分たちのエキスにするな!という感じなのですが。
そんな自他ともに認める仲良し夫婦の私たち。
しかし、いくら仲が良いとはいえ、数年前までは赤の他人。一緒に暮らしていて不満が溜まらないわけがありません。
今回は、その同棲期間中に起こった事件を、キナリ杯にて投稿させていただきます。


事件が起こったのは昨年の秋頃。
当時は広告代理店の営業として働いていました。
今は寿退社して専業主婦をしていますが、私はあまり家事が得意ではなく、一人暮らし歴が長い旦那にアレコレ指導してもらいながら、頑張って家事を覚えていました。

共働きだったので家事は分担、帰宅が早いほうがご飯を作るというルールにしていました。
何がメリットかというと、帰宅が遅ければ遅いほど人の作ったご飯が食べられる!という何とも画期的な我が家ルール。そこは履き違えても、遅くまで仕事をしていた人への労いのルール……と言い換えたほうが間違いなく聞こえはいいです。

その日は私の帰りが遅かったので、旦那がご飯を作ってくれていました。
食べ終わったあと、デザートはフルーチェを食べようかと提案してくれたので、お願いすることにしました。

数年ぶりのフルーチェに、私はワクワクがとまりませんでした。実家にいたときは、母親がよく作ってくれたな〜、と子供の頃の記憶をたぐりよせ、初めて食べたときの味、食感などの懐かしさを噛みしめるように"あのとき食べたフルーチェ"で脳内が埋め尽くされていました。

そんなフルーチェへの思いが最高潮だった次の瞬間、テーブルに置かれたフルーチェを見て、私はあまりの衝撃に声が出ませんでした。

「ト、トロトロしてる……。」

だってフルーチェだもの。なんて天の声が聞こえてきます。ここまで読んでくださってる方も「当たり前では?」とエンドレス疑問符がついて回ることでしょう。
私自身も、まさか作って出しされるとは思ってもみなかったので、同じ気持ちだと思います。(偉そうですみません)

何故そんな状況になったかというと、我が家でのフルーチェの食べ方と、旦那の実家で食べていたフルーチェの食べ方に相違があったからです。
下記、食べ方の違い。

◾私の実家
30分冷やして食べる派→食感:プルプル
◾旦那の実家
冷たい牛乳でかき混ぜてすぐに食べる派→食感:トロトロ


書き出したらあまりにもくだらなさすぎて笑えてきましたが、当時の私は突然の出来事に脳みそが感情についていけず、冷静な判断ができませんでした。

主張が激しい私は、旦那に「何で?ねえ、何で?」と問い詰めます。旦那はうろたえながら、逆に「何で?」と問います。そりゃそうじゃ。
たしかに説明書には冷やして食べろなんて1ミリも書かれておらず、旦那が私の主張に納得しないのも当然です。

私氏、ここで反論。表面のパッケージには30分冷やすとおいしいと記載されており(あくまでもおすすめの食べ方)、おいしく食べられるのなら当然こっちの食べ方でしょ?という、あくまでも"私の意見"を旦那に押しつけました。
私は数十年間、「30分冷やすとおいしい」という情報をだけを信じ、その通りにフルーチェを作って食べて生きてきたので、作って出しする旦那の思考がほんとうに理解できず、感情が赴くままに「説明書読んだ?!」とキレ散らかしてしまいました。この時点で、フルーチェの説明書ってなんなんだろう、と思いました。

怒り狂った私を見かねて、ついに旦那が反抗。威嚇ポーズをとっている私を素通りし、颯爽とゴミ箱の方へと向かっていきました。これから起こるであろう出来事に、私は身の震えがとまりませんでした。

私の予想は的中し、旦那はフルーチェの箱をゴミ箱から取り出し、作り方が記載されている裏面のパッケージを目の前に差し出しました。
もう、すぐそういうことをする!

案の定、旦那は「冷やすとか書いてないよ」と正論を突きつけ、私にドヤ顔を見せつけました。
彼は頭が良いので、きちんとエビデンスを取ってくるタイプの男性です。
普段は頼りになる能力ですが、いま、負けたくない相手にそんな能力を発揮されても困ります。
なぜなら私は、この戦争に勝って、いちばんおいしいフルーチェの作り方を証明しなければならないのだから。

しかし、旦那の提示してくる内容は至極真っ当で、ぐうの音も出ません。
好きなもので負けたくない私。私の食べ方があるのは事実。否が応でも納得できない。
血迷った私は、皿洗いもせず、しばらく競りマグロのように体を直立不動させ、小一時間その体制をキープし、拗ねました。
まさに宣戦布告、なんという暴君。いちばん面倒くさい女の拗ね方。その時の旦那のまなざしが、今でも忘れられません。

結局、旦那が「フルーチェごときで喧嘩したくないよ〜」と笑い飛ばしてくれたおかげで、私の機嫌もだんだんよくなり、時間が経つにつれ「フルーチェごときでなにをマジになっていたんだろう……」と冷静さを取り戻しました。


自分の趣味嗜好を相手に押しつけない、と普段から気をつけてはいたのですが、こと食に関することだけはまったくもって譲れず、今回の事件が勃発しました。
私には8歳離れた弟がいます。一人っ子期間が長すぎたせいか、とても甘やかされて育ちました。
俺のものは俺のもの、お前のものもお前のもの。というコンロ二ズムが芽生えてしまっていて、大人になるにつれ、「このままじゃいけない」と、いろんなことを我慢するように心がけました。
きっと、大切なものに触れたとき、取り返しがつかないことになりそうだと思ったからです。

我慢することで、ある程度の欲求はセーブできていました。祖母と母親がものすごく世間体を気にするタイプだったので、外ではいい子にしてようという思いが自然と現れていたのかもしれません。
外では比較的おとなしく生きていましたが、大人になるにつれ、特に人間関係で悩むことが増え、とても窮屈に感じるようになりました。

今の旦那と出会って、過去のほの暗い部分や、小さなワガママを甘受してくれる人には、昔の暴君ぶりが戻りはじめていました。まるで幼児退行のようです。
それだけ心を許しているという証明にはなりますが、ぶつけられた相手は「知ったこっちゃない」の一択です。
優しい人ほど、ダメージを受けます。
相手あっての、ありのままの自分。ということを、どうか忘れないでください。

結婚というのは、相手の好き嫌いも、自分の中の"常識"もシェアしながら生きていくものだと私は思います。
意見がぶつかって喧嘩したり、食べるときの一口が大きくてイラッとしたり、おしゃれに興味がなかったり、我が強かったり、顔もタイプじゃない。お世辞にも"理想の人"とは違います。

それでも一緒にいたいのは、
私は彼のことが大好きだからです。

これからも、ずっと一緒にいてください。

その為に、努力はします。
自分がこうだからこう!と決めつけて正当化するのは、夫婦の亀裂にも繋がりますし、ほんとうによくないことだな……と改めて気づけたのは巨万の富です。これは是が非でも、お墓に入るまで幸せになってやりましょう。

ちなみに、喧嘩の火種になったフルーチェは、キレ散らかしてる最中にふたりで全部おいしくいただきました。

いや、食べてるやん。



▼ハウス食品様のオフィシャルサイト
争いが生まれないハッピーな作り方が記載されています。
公式は絶対。もう誰も悲しませない。
(冷やしてもおいしいです、天才!)

わふーちぇのモンブランがとても美味しかったので、
そちらもぜひ。秋が待ち遠しいですね。


読んでいただき、いつもありがとうございます。とても嬉しいです!