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続・コンサルタントの芸風 ~ジョハリの窓編~

自分自身のコンサルタントの芸風に影響を与えている本があります。エドガー・シャイン先生の本です。

「問いかける技術」や「謙虚なコンサルティング」という本もありますね。きっかけは思い出せないのですが、アマゾンの購入履歴を見ると2009年に買っていました。たぶん、4回くらい買っています。同僚や後輩に良い本だからと貸したあとすっかり忘れて、時々思い出しては、誰に貸したか思い出せず、買ってしまうというパターンです。結局、最近、Kindleで買いました。

コンサルタントの3つのモード

この本の中に、監訳者の金井先生の解説がありますが、それが英知出版さんのnoteにあったのでリンクを貼ります。

芸風に近い話として、支援実践者の3つのモードを金井先生が解説しています。

①クライアントが必要としている具体的な知識や具体的なサービスという形で支援を与える専門家
②クライアントの状態を診断し、処方箋や専門的なサービスを与える医師
③実際に必要なものを判断するため、共同で調べることによってクライアントを参加させ、情報をすべて打ち明けてもらえるほどの信頼関係を築くプロセス・コンサルタント

この本に出会うちょっと前に一緒に仕事をしていたのが、プロジェクトをファシリテーションするコンサルタントたちでした。その様子について、同僚が「あれは、プロセスコンサルだな」と言ったのを覚えています。当時、コーチングも日本のビジネスの中で認識されはじめたころで、「クライアントの中に答えがある」といった考えも注目され始めていました。

わたしは、大学院で共同作業やそこから生まれる創発を研究していたので、この本を読んだ時に、クライアントと共同関係を築き、互いに答えを見出していくことを目指すプロセスコンサルのあり方に感銘を受けたのです。

クライアントが受け入れられなければ、どんなコンサルタントにも価値はない

ただ、この芸風は未熟だとこんな指摘を受けます。

・ワークショップやって解決した気になっている
・どうしていいか分からないから、頼ってるんだろうに
・モヤモヤしただけで時間の無駄だ

はい、これは、まったくその通りです。少なくともクライアントがこう感じるんだから、芸が未熟なんです。本当に目指したいのは、クライアントが自律的に、クライアントの問題を、クライアント自身が理解して、クライアントの力で解決することなのです。でも、最初からそうできるわけではない。だから、専門家としての知識や知見を与えられることが必要ですし、クライアントが自分の問題をどれだけ理解しているかを診断する必要があります。そして、もっと踏み込むとその問題から逃げていないか、また、向き合う力があるかどうかを見ることも求められます。ただ、踏み込むには、関係性がイーブンでなくてはならない。「あんただから話すんだけどさ」と問われ「その悩みはあなたらしいですね」と言える関係になっていることをわたしは大切にしたいのです。

ジョハリの窓とプロセスコンサルテーション

と、そんなことを考えながら、ホワイトボードに落書きをしてみました。クライアントがどれだけコンサルタントに心を開いているか、あるいは、両者がイーブンな関係なのかということを考えると「ジョハリの窓」があてはまると思います。

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クライアントが、自分自身の問題を知っているのなら、専門家を探します。雇う必要は必ずしもありません。解決策は、ググれば出てきます。

コンサルタントがその価値を発揮するのは、その領域について専門知識があるからです。そして、相手がその問題を知らないときに「放っておくと大変なことになりますよ」と提案します。ただ、これは、受け入れていただけないこともあります。互いに「分かってないなあ」と思っている状況になります。これは、結構あると思います。時々コンサルタントアレルギーのお客様がいるのですが、痛くもない腹を探り、痛い気にさせて治した方が良いと主張してくることがあるからです。いや、もしかしたら痛いのかも知れないけど、見当違いのことを痛いでしょ? と言ったり、それを実行できる状況にないのに無理強いしてくることが嫌なのです。こんなのヤブ医者です。
繰り返しますが、クライアントが受け入れられないのであれば、それは、コンサルが未熟なんです。

コンサルタントは、専門知識を知っています。様々な知見も持っています。ただ、やっぱりクライアントのことは分からないんです。本当のところは、クライアントにだって分からないこともあるのです。コンサルだろうが、クライアントだろうが、分かっているなら悩まないんです。でも、建設的に悩む対話を重ねるから、互いに前に進んでいけるんです。

ここまで書いてきて、きっと、視座をもっと高いところに置いて、コンサルタントの存在意義を捉えないといけないのだと思いました。お客様とともに経営課題に向き合うことを通じて、社会を発展させる知恵を紡ぎだす、そのための芸を磨いていきたいと思います。

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