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評価とは、「共通の目的」に向かう「協働の意欲」を高めるための「コミュニケーション」である

先日、戦略人事マネジメントの講義をしたところ、こんな質問がありました。

当社では「女性の活躍の場を作る」と経営層から話が出たが、女性社員の多くは引き気味。「あの男性営業マンより私の方が、がんばって日常の受発注業務をしているのに評価されない。その上、女性の活躍の場を作ると言っても割が合わない」という声がある。どうしたものか

という内容です。詳しく聞いてみると、そもそも人事評価制度が不透明で、何をどうしたら評価されるのか定まっていないというお話でした。

感謝のない評価からは信頼関係は生まれない

中小企業だと、その時々の経営者や評価者の裁量で評価が行われているケースは結構あります。社員数が数十名程度だとそれでも何とかなるのです。目が行き届き、働きぶりに対するフィードバックがあるので、評価に対する納得感が生まれやすいからです。ただし、目が行き届くだけでは不十分です。ちゃんと見て、働きぶりに対する感謝が伝えられていることが大切です。一方的にレッテルを貼られるのは誰だって嫌です。見もしないで決めつけるなら、言われたことだけやろう、損しないようにそこそこで済まそうとなっていきます。ここには信頼関係はありませんね。

3つの制度からなる人事評価制度

そうならないためにも、一人ひとりが仕事に意義を見出せるようにしていくことが大切です。自分の仕事は、会社の中でどのような位置づけなのか、お客様へのどのような価値につながるのか、共に働く仲間に対してどのような貢献となるのかを定める必要があります。これをレベル分けして定義したものが「等級制度」です。ここでいうレベルとは、新人、一人前、中堅、リーダーといった階層です。

また、その定義を意識して行動し、できているかどうかをフィードバックしあうことで信頼関係が生まれていきます。このできているかどうかをフィードバックしあう仕組みが「評価制度」です。

そして、それをお金で還元するルールとして「報酬制度」があります。人事評価制度は、一般的にこの「等級制度」「評価制度」「報酬制度」から成り立っています。

事業のありたい姿と組織・人のありたい姿を結ぶ等級制度

特に等級制度は、事業のありたい姿とリンクする重要な仕組みです。こういう事業をやりたいから、こういう組織体制やこういう個人が必要だよね、ということが等級として定められるわけです。

したがって、事業として何をするかビジョンを定めていくことがそもそも必要です。事業のビジョンとは、5年後、10年後の長期構想です。

例えば、わたし達は5年後、10年後に
・どのような理念のもとに
・どのようなお客様に
・何を提供しているか

を明確に具体的な言葉にしていくような取組みが必要です。

そして、その時の組織図はどうなっているべきかを描きます。つまり、どういう部署やポジションが想定されるかを考えるのです。そうすると階層のイメージができてきます。

さらに、お客様に商品・サービスを届けるフローはどうなっているべきなのかを検討します。たとえば製造業なら、市場調査→研究開発→製品化→営業・販売→納品→アフターフォローのようなバリューチェーンがあると思います。これをもう少し細かく分解していき、一人ひとりがどの部分について責任を持って貢献するかを定義することで、自分の仕事の価値や意味合いが定まってきます。

そして、ここが一番大切なのですが、こうした仕事の意味づけを社員とともに考える場をつくることが大切です。それがないまま「女性活躍」と言うから「わたし達の仕事ぶりも理解しないで、(十分やっているのに)もっと活躍しろってこと?」となるわけです。

組織を存立させるための評価とは

戦略人事マネジメントの講義ではチェスター・バーナードの言葉を引用しました。バーナードは、組織の存立条件として「共通の目的」「協働の意欲」「コミュニケーション」をあげています。それを踏まえると、評価とは、一方的に査定をされることではなく、「共通の目的」に向かう「協働の意欲」を高めるための「コミュニケーション」の仕組みです。

定期的に評価をすることで、互いに貢献すべきことを確認しあい、感謝を伝え合うことが評価のあるべき姿です。こうした哲学が根底にない限り、どんなに精緻に評価基準を作ってもそれが機能することはありえません。


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