ホラクラシーを2年半実践して、良いところ・悪いところ・これからをHRの視点で考える
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ホラクラシーを2年半実践して、良いところ・悪いところ・これからをHRの視点で考える

Kazuhiro Chida

このnoteは、夏休みに自由研究をしようという「LAPRAS夏の自由研究リレー」で書きました。

先日、代表の島田が「ホラクラシーの功罪、そして理想の組織とは」という記事を公開していました。この記事は代表としての視点で書かれていたので、触発されてHRとしての視点で記事を書こうと思っています。

この2年半、実践する中でホラクラシーの良い点と欠けている点が見えてきました。今回はその振り返りと次のステップに進めるための組織開発者としての考えをまとめていきたいと思います。


ホラクラシーの良いところ

1. 発生した問題は必ず処理される
2. 会議の生産性が滅茶苦茶高い
3. すべてが明瞭であり、全員の当事者意識(自律性)が高い

1. 発生した問題は必ず処理される

「これって誰が決めるの?」「こんなトラブルがあった」といった問題が発生したとき、ひずみ(テンション)として定められたプロセスで必ず処理される。担当するロールが作られ、アサインされ、トラブルに対するプロジェクトが立つ。よって、同じ問題は繰り返し発生しない。余計なストレスが無い。これは素晴らしい。

2. 会議の生産性が滅茶苦茶高い

ホラクラシーの会議は進行ルールが厳密に守られる。ファシリテータに強い権限があり、許可なく発言することは許されない。30分のMTGで10個程度のアジェンダが次々処理され、ネクストアクションまで決定する。何も決まらない会議、コンセンサスによる決定、2人の議論に付き合う残り大勢といった構図が発生しないのはこれも最高だ。

3. すべてが明瞭であり、全員の当事者意識(自律性)が高い

ホラクラシーでは自分がどのロールにアサインされていて、どんな権限と責務を持っているか明瞭に表記されている。表記されていない責務のリクエストには、罪悪感を持たずに拒否できる。逆に言えば、自分がアサインされているロールのPurpose達成や責務は他の人に期待してはいけないので、担当する領域における社長の様にリードせざるを得ない。自律性が求められ、そしてそれがまったく邪魔されない環境はとても良い。


ホラクラシーの悪いところ

1. 個人の能力差が考慮されておらず、創発が起こしづらい
2. リソース管理が考慮されていない
3. アラインしづらい

1. 個人の能力差が考慮されておらず、創発が起こしづらい

ホラクラシーは「生命体」のメタファーで語られる。組織を1つの生命体として捉え、個体が繁栄するための機能(臓器や四肢が担う役割)をロールと定義し、ロールを主役に人をアサインする。いわば、人は血液や栄養のような存在として扱われている。(人類補完計画的な)

ホラクラシーではすべてのロールにPurposeが設定され、Purposeのためであれば(他の権限やポリシーを侵さぬ限り)なんでもやって良い。この仕組みによって内発的動機付けを引きだし、創発を起こすことを狙っている。

だが問題は、人は「血液や栄養のように同質な存在ではない」ことが考慮されていないことにある。当然だが、人によって「知識」や「スキル」は異なる。それなのに創発を起こすために「知識」や「スキル」が必要であるという視点が欠けている。

クリステンセンの例を出すと、創発的戦略(当初実行に移されたときの戦略とは原型をとどめないほどに変容した競争優位獲得のための戦略や打ち手)とは以下のようなプロセスによって生じると説明されている。

「創発的戦略は、意図的戦略策定プロセスの分析、計画段階では予見できなかった問題や機会に、マネージャーが対処することによって生まれる。創発的プロセスを通じて出来上がった戦略の有効性が確認されれば、それを公式なものとして改良し、活用することは可能だ。このようにして、創発的戦略を意図的戦略に変えることができる。」- イノベーションへの解より

つまり、創発的戦略を生むためには、①計画の立案と実施 ②実際に起きたことを踏まえ、より効果的な取り組みの模索 ③有効性が確認された戦略の公式な仕組み化、というプロセスを経る。

そのため、創発的戦略のプロセスを機能させるためには①プランニング能力と実行力 ②批判的思考力 ③抽象化とプロセス化能力が必要になる。

①全員がPurposeの実現から逆算して計画を立てて実行できるのか。
②全員が結果からメタな課題やレベルの低さに気づき、最適解を模索できるか。
③全員が上手くいった行動から抽象化し、公的な仕組みとしてプロセス化できるか。

普通に無茶な話である。よって、創発的な戦略を期待するロールには、意図的に①②③の能力を持つ人をアサインするか、アサインした人の能力開発をしなくてはならない。これはバニラのホラクラシーでは考慮されていない。

Badgeベースの報酬アプリはこうした問題を補完するために、もしかしたら効果的かもしれない。


2. リソース管理が考慮されていない

ホラクラシーではリソースを管理する仕組みは、個人が自分の判断でアサインを拒否することしかない。意識していないとアサインを依頼されて断ることはあまりない。その結果、一人の人間が10サークルにまたがってアサインされることなんてことになる。関心事の分散は非効率だし、マルチタスクは生産性が40%落ちるみたいな話も聞いたことがある(詳しくは知らない)。それに加えて、先ほどの①②③の能力を持つ人のリソースが有限であるならば、創発的戦略が求められるロールに優先的に投下すべきだろう。今のホラクラシーにはリソース配分が適切なのか判断できる仕組みがない。


3. アラインしづらい

ホラクラシーのストラテジーは「AよりもBを優先する」といった優先順位の明示なので戦略とは言いづらい。各ロールがPurposeのために何でもやっていいという中で、有限なリソースをバラバラに発散しては成果につながりづらい。リードリンクはプロジェクトに優先度をつけられるが、自発的に取り組みをアラインできるようにするためには、やらないことを明確にし、比較的短期間のテーマにフォーカスする工夫が必要である。

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- 学習する組織より

LAPRASでは戦略カーネルという取り組みを試しているが、多分これはホラクラシーのProjectという仕組みを使いこなせていないからなのかもとも感じている。そうであれば、もしかしたらこれはホラクラシーの問題ではないのかもしれない。


(4. ガバナンスが説明しづらい)

予実管理や人事評価といった観点において、外部の人に適切なガバナンスが行われていると説明しづらいし、日常的に流動的に変化し続けるサークル構造に適応し続けることも手間である。ひずみが出ないのであれば、シンプルな構造で表現したい。


これから

こうした背景をふまえてHRとして今考えているのは、ホラクラシーと対等な関係で補完しあう「人をベースにした制度」の設計である。

創発的戦略が求められる「ロール」に対して、実現可能なスキルを持った「人」をアサインするために、人側のスキルを明瞭化しなくてはならない。これを等級制度や評価制度を利用して実現し、投資されているリソースの配分も検知できるようにする。

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ホラクラシーと人ベースの仕組みは独立したものではなく、同じ組織を機能とガバナンスという観点から切り口を変えて表現しているイメージ。

必要なスキルが可視化されることによって、リソース最適化だけでなく、キャリア開発にも繋がるはずである。ホラクラシーがロールを明瞭化しているように、人事制度は人を明瞭化していく。

あとは、人ベースの仕組みにホラクラシーでは直感的にわかりづらいカネの管理も組み込んでいいかもしれない。

いずれにせよHRとしての次のテーマは、Alignmentの強化と効率的なリソース(ヒト・カネ)活用によるパフォーマンスの最大化になるだろう。


最後に

この2年半を振り返ってみると、総じてホラクラシーはやって良かったと思います。メンバー全員が自律性を持ってこの人数まで維持できているのは素晴らしいと思うし、ホラクラシーのプロセスによって効率的に進められてきた部分は多かったと思います。

ただ、「すべての組織デザインは悪い」とHARD THINGSで言われているように導入しただけで完璧となるフレームはありません。こうして振り返ることで自分にとっても新しい気づきや次にやることがはっきりしてきました。

みなさんもこの夏、自由研究に取り組んでみては如何でしょうか。よい夏をお過ごしください。

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Kazuhiro Chida
LAPRASというスタートアップでHRやってます。ゲームすき