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尊さの不時着

わたしは、リ・ジョンヒョクに心配されたい。


家にひとりでいるところの様子を見に来てほしいし、急に泣き出したにも関わらず「泣き顔を見られるなんて嫌」という訴えにそっと灯りを消してほしいし、長い髪をハンカチでひとつに結んでほしいし、迷子になったところへアロマキャンドル片手に探しに来てほしいし、偶然通りかかった風を装って自転車で迎えに来てほしいし、アツアツのジャガイモの皮を丁寧にむいて渡してほしいし、座った状態で寝てしまったとき首が痛くならないように肩を貸してほしいし、見えてるあいだは安心だとか言って常に側に居て欲しそうにしてほしいし、あなたが待ってると思ったからという理由だけで山を越えて迎えに来てほしいし、姿を消したあとやっとの思いで生存の確認が取れた安心感から親の前にもかかわらず愛しさを口にしながら涙を流してほしいし、憎い人間を忘れないというひねくれた考えを愛情たっぷりに言い換えてほしいし、悪者に襲われてると気付きダッシュで駆けつけて身の安全を確かめた瞬間眉間に皺を寄せて安堵のため息をついてほしいし、救急搬送され意識が戻らないまま眠り続けている様子をじっと見守っていてほしいし、入院中はなにをするにも俺がやると横から手を出してほしいし、水しか入っていない冷蔵庫を食べ物でいっぱいにしてほしいし、何も置いていないキッチンの棚を食べ物でいっぱいにしてほしいし、ピアノの演奏を録音したボイスレコーダーをそっと枕元に置いておいてほしいし、本棚に隠しメッセージを残してほしいし、無理して走る姿を目にして危険を顧みずに駆け寄ってきてほしいし、会えない日々を少しでも幸せに過ごせるように1年分のメッセージを予約送信してほしいし、努力していればいつか必ず運命がふたりを会わせてくれると言って期待させてほしい。


愛の不時着は、リ・ジョンヒョクがどのようにして愛したのかを知る物語だ。
そしてそのすべてに命懸けで応えた、ユン・セリの愛され方を知る物語でもある。


本当は大変な時にいつも「大丈夫だ」と強がる人
契約書もないのに些細な約束を守ってくれる人
無敵じゃないのに「傍にいれば安全だ」と言い切る人
自分の傷は何ともないみたいに人の心配ばかりする人

ユン・セリは、リ・ジョンヒョクの愛し方を理解している。


なるほどわたしは、リ・ジョンヒョクに心配されたいのではない。
リ・ジョンヒョクが心配し、頭を悩ませ、思わず笑顔になり、助けたいと、守りたいと手を差し伸べるのがユン・セリという女性であることに、幸せを感じているのだ。

この尊さこそ、わたしが守り抜くべき愛なのだ。

この作品に出会ってから1年半。この先も何度も不時着するのだろうね。


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