NGワード
以前、差別用語を抜き出すアルバイトをしていたことがあります。
ある出版社が電子書籍化を進めるに当たって、過去の作品をチェックし、差別的な表現をリストアップしていく仕事でした。
放送禁止用語集のようなものを渡されて、該当することばを探す。
それ以外にも、文脈から差別的な表現と思われるものを抜き出していく。
文庫本を数冊ずつ持ち帰っての
在宅作業でした。
過去に読んだことのある作品もありました。
あまり差別意識が明確ではなかった時代の作品が多かったです。
デリケートな問題なので、
あまり大っぴらには書けませんが、
人種差別、身分差別、身体的差別、男女差別、職業差別などジャンルは多岐にわたっていました。
具体的にいえば、看護婦、保母、スチュワーデス、OL、農夫、工夫、受付嬢、オールドミス、未亡人等々。
未亡人には、
妻は夫と共に死ぬべき存在という意味が込められているということで、
とんでもない時代錯誤、女性蔑視に当たるようです。
しかし、未亡人には他に言い換えが効かないニュアンスがあるような気もします。
そういえば、老婆ということばもリストに入っていました。
他に、外人、共稼ぎ、孤児院、養老院、スラム街、ドヤ街などもありました。
このようなことばを拾い出しても、著者は亡くなっている場合もあり、改訂するわけではなく、巻末に断り書きを加えることぐらいしかできません。
今どきの作家なら、このようなNGワードはハナから使用しないということなのでしょうか。
どうしても譲れない表現は、許される範囲で敢えて使用する人もいるかもしれません。
その辺のところはわかりません。
昔の諺「〇〇〇〇に刃物」などは
もっての外。
しかし、わたしが子どもだった頃
読んだ童話の中には、
「〇〇〇〇のように泣きました」
というような表現は当たり前のようにあったと思います。
「我を忘れて」などより、もっと深い悲しみが込められていたような気がします。
時代と共に新しい差別意識も芽生えています。
アンテナを立てて、ことばの変化を見逃さないようにしなければなりません。
さまざまな立場の人のことを考えながら、読む人を不快にさせない。
そんな表現を探っていくことが求められているようです。