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経営視点で見るデザイン - CXO Night #7

2019年12月4日に開催の「CXO Night #7 - デザイン会社経営のリアル」に参加させてもらいました。印象的だった部分をかいつまんでまとめております。

クリエイティブ / デザイン会社経営を始めた背景

adot 牧野さん@MAKINO1121:
博報堂に6年いてコピーライターをやっていたが、これからはマス広告の時代ではないと感じた。
広告業界はまだまだマス広告中心に回っていて、TVCMは制作費だけで数千万円、出稿に数十億円。それで人の心に残るのはどのくらいだろう、と。優秀な人がたくさん集まって労力をかけて作ったとして、その時話題になるものもあるが話題にすらならないものも山ほどある。

スマホとSNSというインフラがようやく整ったのがこの5年。
メディア環境が変わったいま、僕たちは上の世代が作ったマス広告で戦うのではなく、自分たちの新しい時代のインフラにあったクリエイティブで戦うべきではないかと。話題になるものさえ作れば勝手にみんなが広げてくれる世の中になったのだとしたら、そのクリエイティブに特化したクリエイティブカンパニーが作れるのではないかと思った。

今年の夏休み、クレヨンしんちゃんの春日部駅広告がTwitterで拡散され話題に
https://togetter.com/li/1395865

CINRA 杉浦さん @ta1:
会社の立ち上げ当時は今のようなスタートアップのコミュニティがなかったので、やりたいことがあったら自分たちで資金調達をしなければならなかった。自社メディアは最初収益がないので、存続させるためにWebサイト制作の受託を始めた。受託の制作はやり始めたらめちゃくちゃ楽しい。なぜなら毎回毎回違う土俵でチャレンジできるから。

自社事業を突き詰めてやっていく過程で視野が狭くなりがちな時に受託の仕事と行ったり来たりできるのは良い横視線だなと。それで続けていくことになった。最近では自社メディアの強みで受託の仕事をいただける循環ができた。オリパラのプログラムなど、文化的な仕事も増えてきた。

クリエイティブ / デザイン会社を経営する楽しさと難しさ

BIRDMAN Royさん @roy_BIRDMAN:
もともとデザイナーで、フリーランスになりインタラクティブの世界へ。15年間経営という経営はしてこなかった、これしかできない人間。作品を作ることが営業になり次の仕事へ繋がっていった。広告の仕事は大好きだが、若い人向けと言っているのになぜTVCMなの?というようなギャップを感じる瞬間もあった。
そんな中でもSIXPAD STATIONを2年越しで開発。広告だけでなく根本的に人の生活を変えるような未来のジムを作った経験は僕らにとっても刺激になった。そういった刺激を作っていきたいというパッションが楽しいところ。経営となるとお金、人を雇う責任が伴う。

牧野さん:
まだまだコピーも書きたいし企画も考えたい。カラスはここ一年半で3人から20人になったところなので、今はひたすら結果を残さなければという思い。経営はたぶん向いてない。

杉浦さん:
自分で経営すると無条件にオーナーシップ100%。誰のせいにも何のせいにもできない環境を作れるのは、原因を他に考えなくていい点で楽。しんどくても代償を払う価値はあるなと。これを剥奪されたら何をしたら良いのか分からなくらい。

これからの時代のクリエイティブ / デザイン会社

デザイン会社を経営していく中で様々な決断に迫られる。
実はここ数年世界のマーケットでは、世界中の有名なクリエイティブ会社がコンサルティングファーム等に買収されまくっているらしいのだ。

国内では話題になる事例が多くない中、BIRDMANのadotグループ化はニュースだった。

Royさん:15年の間に売却を考えたことはなかった。受託で広告を作っていると3〜4ヶ月タームで納品になるが、僕らのやりたいことが広告からプロダクトやサービスで根本解決をすることに変わっていく中で1年以上を跨ぐ巨大プロジェクトに体力が続かなくなってきていた。借り入れをすれば良かったのかもしれないが、1+1が3以上になれる会社と組めれば売ってもいいとなと思い探していたらadotが合致した。

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エードット、総合クリエイティブプロダクション「BIRDMAN」をグループ化

ターニングポイントはFlashの終焉

モーション制作アプリケーションのFlashが全盛期だった2002〜2005年くらいまで、わたしが所属していた制作会社にもフラシャーという職種の人がいて、All Flashのサイトとなると数千万単位の案件も多く、凝った演出の作り込んだサイトはまさにWebデザインの花形だった。

そのFlashというアプリケーションが割と突然終了したことにより、受託制作会社の構図は大きく変わることになる。

Flashはなぜその役割を終えたのか

その後、スマートフォンの普及、ネットワーク環境の変化、SNSの盛り上がりが短期間に同時に起ったことで、デジタルのクリエイティブがスクリーンの中からより人々の生活に根ざした仕事へ変わっていった。インタラクティブが人々の日常に溶け込むのと同じようにデザイン会社の経営も変わってきたのだ。

デザイン会社は人。人の規模が事業規模になっていく

adot
広告の総合機能を持ったクリエイティブ会社として上場(とても珍しい)。
人数を増やす。会社の規模を拡大する。
BIRDMAN
adotのグループに。15年間自己資本、40人までの少数精鋭でやってきた。
Goodpatch
IPOを目指す。提供価値を上げUXDの平均年収1000万を目指す。
CINRA
自己資本。現在の事業内容だと多くても200〜300人まで。
教育分野での状況によってはフレキシブルに考える必要が出るかも。

Royさん:
デザイン会社は人しかいない。人を集めたもの勝ち。面白い人を集めるのにどうするかが課題。

牧野さん:
最近の広告業界の唯一新しい流れとして、博報堂を辞めた人達がベンチャーを立ち上げ「会社化」する流れがある。動画制作のチョコレイトNEWPEACEなど。それぞれビジョンを持ってやりたいことを体現することでどんどん人を集めている。この流れはすごい面白いし、自分たち含めどう生き残っていくか楽しみに思っている。

杉浦さん:
チャレンジを推奨するのがシリコンバレーだとしたら、日本の場合は大企業との連携。CINRAは自分達らしさをキープしたまま大きなインフラやサービス力、アセットを持っている大企業と繋がっていくエコシステムを作れたらいいなと思っている。

UIデザインの市場改革

Basecamp 坪田さん @tsubotax :

UIデザインは制作フローにおける末端で部分的なデザインの依頼がきてしまう事に限界を感じ、上流から関われるよう変える必要があった。方法のひとつとしてまずは認知を得る、こうゆう職種の人がいる、デザインの領域があることを伝えるためにこのイベントを始めた。

Googpatch 土屋さん @tsuchinao83 :

GoogpatchをUIデザインの会社として立ち上げた時、UIとUXという言葉はあったがビッグワードでマジックワードすぎて、成果物が全く定義できない状態だった。当時UXのイベントに登壇していたのはサービスを作ったことがないアカデミック領域の人達だった。定義だけ話していてはいけない、ユーザーの手に渡る具体のアウトプットまでを話すことに価値があると思った。そしていいUIを作るためには必ず上流の企画設計から関わらないと良いUI作れないので、仕事を受注するにあたりUIデザインだけでは受けないようにしていた。

デジタル領域のインターフェイスのデザインの価値を上げなければならない。そこに対価が払われるためにはマーケットの空気感を作らなければと思っていた。そのために起業して2年目から領域に特化したオウンドメディアにリソースを確保し情報発信を続けている。7年間自分たちの仕事を取るよりもこの領域を社会に認知してもらうことでビジネスのバリューが上がることを一生懸命やってきた感じ。

ミッションは本質的価値提供をすること

土屋さん:
会社の提供価値がものを作るだけの会社ではなくなっていて、いいものを作り続けられる会社やチームの文化に。僕らが関わっている間ユーザーインタビューやテストができていたとしても、いなくなった途端にビジネスレイヤーから降りてきた売り上げ重視の案件で機能を作らなければならなくなったら意味がない。その後も続けれられるように文化をインストールすることに提供価値を置くのを差別化のポイントにしている(ここまでできる会社は他にないから)。

坪田さん:
「デザイン」の限界ってあるなと。自分は0→1職人でスタートアップや大企業の新規事業立ち上げからチームづくりまでを請け負っていたけど、サービスを作った後にグロースさせるにはチームのカルチャーを作っていくしかない。カルチャーが根付き軌道に乗らない限りは成果として繋げられないので、カルチャーを根付かせグロースさせるところまでやり切らないとUXデザインの成果が出ない。

土屋さん:
プロダクトと組織は両輪。デザイナーがプロセスを変えたりいろんな事をやってアピールしたとしても組織の土台である文化が変わらない限り、デザイナーはデザインを実行できない。そこを変えに行くことが本質的な課題解決であると思う。簡単にできない。

坪田さん:
DeNA時代にGoodpatch以外にも海外の有名なデザインファームに発注したことがあるが、納品後に作り直すことが多々あった。どんなに素晴らしいクリエイティブを作っても組織に定着させてグロースさせる接着剤がないとデザインはワークしない。

土屋さん:
ミッションは本質的価値提供をすること。ものを作るだけでは何も変えられない。中途半端な関わり方では変えることができないし、外からならインハウスの上下構造の縛りのない、経営層と対等な外部のパートナーとして関わることができるのは大きなメリット。

求められるのは、繋ぎ合わせる力とバランス感覚

土屋さん:
2〜3年後も見通せない(戦略を立てても状況の変わるスピードの方が速い)不確実な社会。どんどん事業難易度も上がっていく中、デザイナーがデザイン領域だけ守っていて結果が出せるとかポジションを作れるという時代はすでに終わっている。デザイナーがより横断的な知識を持ちながら専門性を深めていく必要がある。

誰もが何かを生み出せる時代、勉強は常にし続けていかないと。ツールをうまく使うことで差別化できる時代ではなくなっていて、あらゆる分野の領域を超えた知識や経験をかけ合わせる「統合力(Integration力)」が圧倒的に求められる。それができる人材が生き残れると思う。
バランス感覚も大事。どんな分野でも誰とでも調整できるような人は重宝されるのでは。

クライアントよりもクライアントの仕事を愛する

デザインが本質的な価値提供し役割を実行するために、自分の所属が受託か事業会社かは大きな違いではなく入れ子の中のどの大きさの箱で働くか、だとも思っている。

重要なのは、デザインを組織の成果に繋げること。とその姿勢

仕事には必ず発注者(顧客・クライアント)が存在する。本当に良いデザイナーであるためにはユーザーに最も近い目線を持つのと同時に、クライアントのミッションを理解し、その人の仕事を誰よりも愛し楽しむ人でありたい。クリエイティブに限らず当事者意識で取り組むことはすべての「しごと」におけるマナーであるとも思うからだ。

そのための企業文化やチームのカルチャー、つまり「やりやすさ」「余計な障害がない環境」は成果を出すためには何よりも重要だし、文化は絶対に一人では変えられない。(頑張るとか諦めるとかではない、そういうものなのだ。そこで頑張らない)

ひとつの場所に留まるよりも同じビジョンの人が集まる場所に移った方が圧倒的に低コストなので、わたしも一ヶ月ほど前に新しい環境へ移ったばかり。いつでもどこででも勝負できるように自分を磨き続けたい。
自己実現もターゲットに起きつつ、まずは組織とクライアントの成果(=自分の目標)のため、実績を作り頑張るぞ😄!

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