仕事だけはちゃんと行く

結婚する前、
まだ実家に住んでいた頃の話だが、
母親が私に対して何度も同じことを言った。

「善蔵は、仕事だけはちゃんと行く」

かつては好きな仕事をしていたから
かなり体調が悪くても
仕事を休むことは無かった。

クライアントが待っている。

そう思うと、
休む訳にはいかなかった。

わざわざ私を指名してくれる人たちに
礼を失してはならない。

そう考えていた。

現在の警備士は
希望して就いた仕事ではないが
出来ることは尽くしている … つもりだ。

どんな仕事にも共通する話かも知れないが、
やっつけで
適当に済ませてしまおうと思えば
それはそれで
大概はどうにかなってしまう。

しかし、
精度を上げて
効率を高めて
より良く仕上げていこうと考えると
それは大変な作業になる。

前者と後者には
実のところ、大した差はない。

環境によって
誰でも
どちらにもシフトする。

要は意識の問題になる。

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