お寺の修行体験、実際どんな感じ?【初日編】

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こんにちは。ケービーです。先日、ある禅寺に3泊4日の修行体験に行ってきたので、その体験談を綴っていこうと思います。まあまあ長いです。
※ページ内の画像は全てフリー素材のイメージです。
↓YouTubeでも語っておりますので、よければどうぞ。

修行のきっかけ

いきなり私の話で恐縮ですが、今、私は老人ホームに会社員として勤めています。職務は、理学療法士。ホームに入居されている方の運動機能や生活動作に関するサポートを行う仕事です。4年、ホームに勤めていましたが、2021年1月、脱サラをして介護予防、フィットネスに関する事業を立ち上げることとしました。

独立起業となると、不安や高揚、迷い、期待…様々な感情や想念が錯綜します。そんな荒れた気持ちの整理が、泊まり込みの修行をすることでなされるのでは?と思い、禅寺での修行を決意しました。

もともと、仏教には関心があり、考え方に共感できることも多かったので、禅寺で修行をするという着想に至るのは早かったと思います。どこの禅寺に行ったかは、ここでは割愛させてください。綴る内容に関しても、時刻や設備などの細かい点にはフェイクを入れてあります。インターネットでワード検索したら1番上に出てくるお寺かもしれません。

メールにて申込み

現代の修行申込は便利になっていて、HPのメールフォームから申込ができました。修行日時や、人数、修行への想いなど、必要事項を記入して送信です。
私も、自分の思いの丈を「修行への想い」欄に打ち込みました。



そして当日。
多くの禅寺は山奥とは言えないにしても、山の麓にあることが多いです。今回の禅寺も例に漏れず、聞いたこともないような動物の声が聞こえそうな山に門を構えていました。

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静かな境内に入り、石張りを踏み歩き、人がいそうな建物にお邪魔しました。
「すいませ〜ん…」
緊張して声が小さくなります。小心者なんです。

玄関の扉を開いて出てきたのは、十代後半くらいに見える、作務衣を着たお坊さんでした。かなり若く見えたので、刈った頭は僧侶のボウズというよりは、まるで野球部のボウズに見えます。

『はい。』低く、荘厳な声。

「修行体験に参りました、ケービーです。お願いします(中小声)」

「こちらへどうぞ。」顔に笑顔はない。

こんなに若いあたり、流石に住職さんではないか?雲水(修行僧)さん…?

無表情で案内してくれたのは、応接室風の、12畳ほどの和室。綺麗に掃除してあり、床の間までピカピカです。「池の間」というお部屋だそうです。
なるほど、窓からは池が見える。

「では、ここ〇〇寺の施設説明をさせていただきます。」

それからは、施設の名称や、設備の使い方、禁止事項、流れなどを説明していただきました。

修行1日目のスケジュール

まず、修行予定表という、A4の用紙をもらいました。1日目は以下の通りです。


15:00 入山、受付
   規則、設備などの説明
17:00 薬石(夕食)
19:00 住職様からの坐禅の指導
20:00 坐禅25分
20:40 茶礼(お菓子、お茶を楽しむ時間)
22:00 開枕(消灯・就寝)


『初日の予定はこの通りです。遅刻などしないようにお願いします。』

やはり修行、時刻通りに生活が進んでいくんですね。

15:30 トラブル発生

案内係の方とお寺の敷地内を周り、それぞれの設備の使い方を紹介していただきました。説明の最後に、貴重品を入れるロッカーの説明をしていただきました。

ダイアルロック式で、数字を設定して、ノブを回し、数字をバラバラにすることで鍵をかけるタイプです。

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こういうの

「暗証番号を忘れるなどしてロッカーが開かなくなった場合、スペアキーは住職様しか持っていません。大変多忙な方の為、お忘れなきようお願いします。」

と、警告していただき、施設説明が終了しました。以降は薬石(夕食)まで休憩です。

私はこのタイプのロッカーを昔ジムで使っていた為、

「楽勝っしょ!」

とイキりながら財布、車の鍵を入れてダイアルを設定して鍵をかけました。

さあ、休憩時間なので施設内を改めて散歩するかな。と思い境内に出ましたが、修行期間中の履き物であるサンダルを車に忘れていました。

取りに行かなきゃと思い、鍵をロッカーから取り出そうとしました。
「4,6,4,9」と・・・

ガチッ

・・・ガチッ

開かない!?

どうやら鍵の締め方を間違えて、開けられなくなったようです。

「お忘れないように」と忠告を受けてから5分で開けられなくなりました。普通に馬鹿です。

すぐに先ほどの案内係さんに会いに行き、深々と謝罪しました。恥ずかしい…

住職様は出かけていて、夜にお寺に戻ってくる為、それまで待つように言われました。お手数おかけします…

(こんなことで大丈夫だろうか)

と、まあまあ落ち込みながら、休憩時間が終わるまでの30分間、池の鯉とアメンボを見ていました。

鯉って本当に跳ねるんだな…

アメンボクソでかいな…

お寺ってめちゃくちゃ静かだな…もしかして自分以外、修行者いないんじゃないか?

いろいろな考えを巡らせながら、時間は過ぎていきました。

この時点で思ったのですが、ゆっくり池を見ながら30分過ごすって、今まで経験がなくって。暇があれば何かしら、スマホ見たり、音楽聴いたり。

こういう時間も、いいな。

17:00 薬石(夕食)

夕食の時間となりました。私の最初の修行です。禅宗では夕食のことを薬石といいます。

戒律上では、正午以後の食事は禁止されているが、病者があって医療のための食事は許されていたので、これを「薬石」と称した。         Wikipediaより

だそうで、この薬石もただの食事ではなく、修行のひとつです。

薬石の前に、禅堂と呼ばれる坐禅用の御堂で「小坐禅」を行います。
禅堂は「単」と呼ばれる1畳の畳が引いてある空間が集まってできています。
自分の単に座り、坐禅を行います。画像をクリックすると画像検索で禅堂が見れます↓

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そこで初めて他の修行者と会いました。
私を含め、8人。年齢は私と同じくらい(20代後半)の方もいれば、4,50歳くらいの方もいます。

その日の上山者は私だけだったので、他の方は昨日以前から修行していることになります。

(すごいな…ド平日からこんな若い人たちがお寺で修行体験をしてるのか…)

禅やお寺が、現代人から求められているのを肌で感じました。

短い小坐禅が終わり、薬石(夕食)です。

食事の作法が、厳しい。

初日、献立はこんな感じでした。

白米 たくあん 高野豆腐 里芋の煮っ転がし 味噌汁

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おお、意外と豪華…?一人暮らしの不精な男なので、出てくるおかずが3つもあれば嬉しいものです。

食堂で、終始正座で食べます。

それぞれの食事が入ったおひつを皆で回して、適量よそっていく。

無言無音で私のもとへ回ってくるおひつ。

待て待て…

食事の作法、まだ習ってないぞ…

とりあえず周りの人を見て真似てみます。ご飯をよそう。

「まずは合掌です!」

ピシャッと。隣に座っていた作務衣を着た女性に指導を受ける。普通にテンパる私。
合掌をして、改めてご飯をよそう。

「まずはお椀を両手で持ってください。」  ピシャリ。

おいおい…これ…一挙一動、指導受けるんじゃないか?

予めの説明はなく、実践して、指導されながら覚えていく。

オン・ザ・ジョブ・トレーニング の究極のようなやり方は、ゆとり世代ど真ん中の私にはなかなか刺激的でした。

もう右も左もわからないなら、自分の思った通りにやるしかありません。

味噌汁をすする。ズズーッ

作務衣の人A「汁のすする音を出さないでください!」

作務衣の人B「他の方を見て真似てください。」

クッ…

「箸がお椀に当たる音を出さないでください」

「鼻すすりは厳禁です」

「おかずを食べる時はおかずの食器を持ってください」

「食べ終わったら箸を両手で握って待っていてください」

文字通り一挙一動、指導をいただき、ほとんど食事の味がわかりませんでした。これが禅寺か…

見ていると、私だけでなく、昨日以前から修行している方も指導を受けている。なかなか細かい作法。1日で覚わるものではなさそうだ。

終始緊張した食事が終了。これが1日3回…少し憂鬱かもしれない。

19:00 住職様からの坐禅の指導

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ところ変わって、本堂にて、住職様からの坐禅指導です。

1対1で、坐禅の目的、脚の組み方、印の組み方、呼吸法、意識の状態などを丁寧に説明していただきました。貴重なことですよね。

幸い、私は独学で坐禅をしていたので、脚の関節の柔軟性は確保されていて、しっかりと脚を組むことができました。

住職様は50〜60代くらいの方で、柔らかく、それでいて気の引き締まる指導をしてくれました。

指導の後は、早速、禅堂にて坐禅です。

20:00 坐禅 25分

禅堂にて、初の坐禅です。禅堂に入る時も作法があり、やっぱり間違えて指導を受けます。

合掌をして、合掌のまま単まで移動します。

一礼後、私に充てがわれた単に座り、坐禅を始めます。

半眼になり、心を鎮めて、呼吸を数える…







長ッ


25分、長ッ!!!!

独学で坐禅していたと書きましたが、実のところ、家で坐る時は集中力が持たずに10分程で終了していた私。

カブトムシ並みの集中力しかない私には、25分という時間でも苦行。

(ええ〜〜〜  長!)

(本当に25分?40分の間違いでは?)

(足、痺れてきた…背中イテ〜〜〜)

雑念の塊です。心の安潤など得られるはずもありません。

限界かも、というところで、作務衣を着た方が拍子木を打ち鳴らします。

カン!カン!カン!

どうやら、終了の合図のようです。助かった…

これ、やっていけるのかな…そんなことを思いながら、初坐禅、終了です。

20:40 茶礼(お菓子、お茶を楽しむ時間)

坐禅の後は、就寝まで、茶礼です。
お寺が用意したお茶、御茶菓子をいただきます。

この時間は休憩時間なので、娯楽以外のことは何をしてもOKです。

薬石を食べた食堂や、談話室で思い想いに過ごします。

お茶を飲んでいると、他の修行者の方が快く話し掛けてくれました。

短期間の修行体験なので、後腐れがないからでしょうか。それとも同じ修行を乗り越えることで起こる吊り橋効果からでしょうか。

すぐに他の修行者さんと仲良くなれました。色々な話が聞けました。

皆、インターネットで「お寺 修行」と検索して来たこと
私以外の人はほとんど昨日来たばかりということ
やっぱり、皆一様に、作法で叱られているということ
昨日きたばかりだけど、修行者同士はすぐに仲良くなれるということ

作務衣を来た人は「常住さん」と呼ばれる修行者で、3ヶ月以上住み込んで修行をしていると聞きました。さ、3ヶ月…
常住さんは、短期修行者と違い、運営を手伝い立場にあります。住職様から直接の指導を受けて、修行をしながら短期修行者をサポートしていただけます。

ちなみに私が受付の際に施設案内をしてくれた常習さんは、18歳だそうです。やっぱり若かった。

修行者同士、リラックスしながら言葉を交わしました。

コロナの影響で休業中だから来た人

今は無職で道を探し迷っている人

気持ちを傷めて仕事を休んで来ている人

私と同じように、起業を志し、気持ちを整理するために来ている人

理由は違ど、皆、修行で自分を変えたい。自分と向き合いたいと思っている人達ばかりでした。

22:00 開枕(消灯・就寝)

楽しい時間が終わり、就寝時刻です。

禅寺の修行における寝泊りは、禅堂の単の上で行われます。与えられた単の上で行住坐臥、修行をするということですね。

しかし現在はコロナ禍の為、短期修行者には個室が貸し与えられて、そこで宿泊します。

「すみません。ケービーさんは個室ではなくて、禅堂の単の上でお願いします」

ええ!?

申し訳なく謝る常住さん。私だけ、禅堂!

事情はそこではわかりませんでしたが、あることを思い出しました。修行申し込みの際のメール。
その「修行への想い」欄に

私は、起業を志しているので厳しい環境で修行をしたいです

みたいなメッセージを書いたのを思い出しました。

これだ…修行への真摯な想いを汲み取ってくれたわけです。

謹んで、禅堂で寝泊りさせていただきます。ありがとうございます。

この計らいに、私は大変喜びました。

その後、住職様に鍵を開けられなくなったダイアルロックを開けてもらう際に世間話をしていたのですが、

住職様「ごめんなさいね。私の手違いで、個室が満室になっちゃって。ケービーさん禅堂で寝泊りすることになっちゃって。」

手違いか〜〜〜い。

…なんにせよ、より本格的な修行が受けれるわけです。

そんな満足感に浸りながら、私は単の上に布団を敷き、眠りについたのでした。

初日終了−

2日目編は近日公開予定です。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!合掌

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