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「伝わる話し方」の目指すところをみつけた

スマホをいじっていた手を止めた。
録画していた「NHK新人落語大賞」の最後の演者がマクラを終え、落語のネタに入った時だった。

桂 二葉(かつら によう)さん。数少ない女性落語家だ。自ら「上方落語会の白木みのる」と名乗られるような高い声におかっぱ頭。ひとつ前の演者も女性だったが、二葉さんの声と見た目から、失礼ながら、話術よりキャラ頼みの人かと勝手に思っていた。
それが、古典落語のネタ『天狗刺し』の冒頭部分を話し始めた途端、私は思わず聴き入ってしまった。

「天狗をつかまえてスキヤキ屋をしよう」と本気で考えているアホな男が主人公の荒唐無稽な噺だ。何度か聴いたことがある噺だったが、聴いているうちに「あれ?この噺、こんなに面白かったっけ?」と思えてきた。
二葉さん演じる「アホ」のアホらしさに引き込まれ、「アホ」に振り回される周りの登場人物に同情し、どんどんどんどん見入っていった。

最後のサゲを少しはにかんだ感じで言ってお辞儀をした二葉さんを観た時、「へぇ〜〜〜っ。」と大きな声とため息が漏れ出た。一緒に観ていた夫に「すごない?この人、めっちゃすごい」と、同意を求めた。

審査員の柳家権太郎さんは「立派な、いい落語家さんになりますから。」とコメントされ、くしゃっとかわいらしい笑顔になった。その笑顔を見て、私の目は涙でいっぱいになり、食卓のハンドタオルを探した。

落語は人を笑わせる芸能なので、聞き終わって涙が出る、なんてことはめったにない。でも、噺の面白さと同時に、この二葉さんという落語家さんの「人となり」がブワッと伝わってきて、涙が出たのだろう。

一期一会のパフォーマンス。その瞬間にその人の人生そのものを全部盛り込み、聴き手に伝える。どう伝えたいか、どう伝えるか。聴いている人に、どれだけ伝わるか。
それだけのために何度もなんども稽古し、世界観を作り上げる。本番のわずか10分。聴き手と一緒になって噺の世界に入っていく。

こういうふうになれたらなぁ。

いつでもどんな時でも自分を出せて、目の前の人に伝えたいことが伝わったらなぁ。

目指すところが見えた、気がした。

私自身、トーストマスターズクラブというスピーチ・プレゼンの練習をするNPOで言いたいことを効果的に話す練習を20年以上続けている。また、同じくらいの期間、趣味で素人落語家として高座にも上がっている。その活動だけでなく、日常においても「伝えたい、でも伝わらない」という気持ちとずっとつきあっている。

長年やってきた中で、「伝え方」に関して、自分として少しはできるようになってきたこともある。また、一緒に活動している人が、より効果的に伝わる話し方ができるようになってきたのもたくさん見てきた。
その自分の知識や経験を生かして、他の人の役に立てたら。そして、自分自身も、伝えることで、自分の世界を広げていけたら、と思う。


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