シャーロック・ホームズに登場する家事使用人に関する覚書

考えてみればヴィクトリア朝を舞台にしたホームズ物語の中には、家政婦、女中、執事、小間使い等色々な使用人が出てくるけど、冷静に考えたら何がどう違うか全然分からず読んでたな、と思って調べてみた。

別に物語やトリックには関係ないけど、一度気になると本編に集中できなくなるのでまとめた。

なあ答えてくれ

シャーロック・ホームズが好きなせいか、こまかいことが気になると夜もねむれねぇ、、、

お手伝いさんの種類と仕事内容

ウィキペディアによると執事、家政婦、メイド等は全て家事使用人の役職ごとの名称らしく、「職種と概要」の項にあらかたまとめられている。

頭痛がしそうなくらい長いので部分的に引用する。
ウィキペディアの一覧はおそらく「地位が高い順」に並んでいるが、「持ち場ごと」に再編集した。

使用人をまとめる人々

ランド・スチュワード
全使用人の長。主人の領地の管理をする役目を負い、農地を賃貸し、借地料を徴収し、境界線を調査し、借地人の間の争いを調停し、領収・支出の細かい記録を保管する。屋敷にランド・スチュワードがいない場合はバトラーが兼任していた。

※スチュワードは日本語訳では「家令」又は「執事」と翻訳される場合が多い。従って、スチュワード、バトラー共に執事にされ、区別が困難な場合がある。
バトラー
イギリスの上級使用人。執事とも訳される。

数あるイギリスの家事使用人の中でも最上級の職種の一つであり、フットマン(従僕)を勤め上げた者がバトラーに昇格した。上流階級か、下層の上流家庭より裕福な中流最上層の家庭にのみ見られた。
ハウスキーパー(家政婦長)
ほとんどのメイドを取り仕切る家政婦。自身はメイドではない。メイドの仕事に必要な鍵の管理など、屋敷の管理の全責任を負う。メイドの人事権も持っており、雇用や解雇なども行っていた。相当な下積み期間を経て就く役職であり、ほかのメイドのように相部屋ではなく個室を割り当てられ、食事も個室でとることを許されていたのは上級使用人の特権であった。

尊敬の印として独身であっても常に「ミセス」の冠付きで呼ばれていた。

メイド(家事全般)

※「メイド」と一口に言っても仕事内容は多岐に渡り、大きなお屋敷では洗濯担当、料理担当、子守担当など専業化されていたらしく色々な種類がある。

ウィキペディアの「メイド」の「ヴィクトリア朝時代におけるメイドの種類」で色々なメイドが一覧になっているが、長すぎるため全ては引用しない。

おそらく一般的に「メイド」と言われて思い浮かぶイメージに最も近いものは以下の「ハウスメイド」

ハウスメイド(House Maid)
いわゆるメイド、といえばこれにあたる。家女中。ハウスキーパーの管理下にある。特にこれといった専門担当を持たず、文字通り、家中の仕事をひととおりこなす。最も一般的な種類のメイド。

メイドを雇う経済力は無いが「対面を保つためだけに雇っていた」という珍しい形態のメイドもある。

ステップガール(Step Girl)
メイドを雇う余裕のない家で、メイドが「いるかのように」振舞うため、週に1回雇われ、玄関を掃除するメイド。ヴィクトリア朝のイギリスの中産階級以上では、婦人に手袋をさせて「家事をさせていない」ことを誇示するのがステイタスになっていたことから、すこしでも余裕があればすぐにメイドを雇おうとした。しかしその経済力が無くとも外聞を気にしてこの種類のメイドを雇う家もあった。

厨房

コック (Cook)
上級使用人の一種で、厨房の責任者。料理人。
厨房というのは独立した部署であり、ハウスキーパーの管理下にはない。

洗濯

ランドリーメイド(Laundry maid)
洗濯担当の専門職。ハウスキーパーの管理下にある。使用人の洗濯を担当するものと、主人およびその家族の洗濯を担当するものとに分かれている。

馬まわりの人々

マスター・オブ・ザ・ホース
厩舎の責任者。1825年頃にはカントリー・ハウスからほとんど姿を消した。
コーチマン(御者)
アウトドア・スタッフの中では最高位を占めていた。馬が50-60頭もいるような大きなカントリー・ハウスでは2人の御者がおり、御者の助手であるアンダー・コーチマンが数人、その他大勢の馬丁がいた。
アンダー・コーチマン
コーチマンの助手。
グルーム(下男)
馬小屋の管理や飼っている馬の世話をする。

馬車を保有するための人手と資金の多さが一番予想外だったが、当時の馬車は「移動手段」という役割に加え、「ステータスシンボル」の側面が強かったようだ。

馬車は非常に高価な乗り物でした。
自家用馬車を所有していれば、アッパーミドル(中流の上)以上の階級とみなされていました。

馬車本体の値段はピンキリ――もちろん庶民には手が出せない価格。現代でおよそ3000万円の価値だそう――ですが、維持費が高くついたのです。世話をする馬丁や馬車を操縦する御者を雇い、そして馬小屋、飼葉を買わなくてはなりません。

引用元:馬車と自動車

現代で言うところの「自家用ヨット」とか「自家用ヘリ/ジェット」みたいなものだろうか?

男の使用人が少ない理由(男性使用人への課税)

アメリカ独立戦争と使用人への課税問題
18~19世紀初頭にかけては、イギリスの使用人制度に変化がみられた時期です。
この時期になると使用人の中に、屋敷の管理や男性使用人の雇用・解雇などを行う家令(ハウス・スチュワード)や、女性使用人の管理・統括などを行う家政婦(ハウスキーパー)といった職種が置かれるようになります。
また、中流階級の人々が少しずつ力をつけはじめ、使用人を雇用するようになったことも大きな特徴です。他にも、労働賃金の安い女性使用人の雇用が拡大したり、雇い主の使用人に対する扱いも穏やかなものとなるなど様々な変化があり、イギリスの使用人制度はだんだん整えられていきました。

しかし、1775年にアメリカ独立戦争が始まると状況は一変します。戦争の費用を捻出するため、1777年には男性使用人の保有が課税対象に、さらに1785年には女性使用人も課税の対象となったのです。後に女性使用人への課税は撤廃されますが、男性使用人への課税は残り続け、男性使用人の数が減ることとなりました。

引用元:ヴィクトリア朝が全盛期 イギリスの使用人の歴史とは

上記のような理由から男性の執事は雇うのに女性よりもお金がかかった。
だが、(というかそのため)上流の人間ほどステータスシンボルとして執事を雇っていたらしい。

翻訳と語弊

家政婦
同じく家事労働を行う女性の職業呼称であるメイドや女中と同義語とされることもあるが、特に後述する就業形態や歴史的経緯の面で区別して用いられることが多い。また、ハウスキーパーの訳として家政婦が当てられることもあるが、本来のハウスキーパーはメイドたちを統括する一種の管理職であり、現代の日本語でいう家政婦のイメージとは異なる。

引用元:ウィキペディア
執事という語について
一般に、バトラーの訳語として「執事」が充てられることが多い。

しかし、近代までの日本語において「執事」に上級使用人という語義はなく、多くの場合は執行官や執政官、家令の長官(家宰)を意味した[1]。その意味では、どちらかといえばスチュワードに近い。

地位
屋敷内でのバトラーはハウス・スチュワード(家令)に次ぐ地位

引用元:ウィキペディア


使用人から見る雇用主のパーソナリティ

収入と世帯規模
参考までに各階層毎に適正、あるいは「身の丈にあった」とされた世帯の規模を大まかに記す (Beeton, p.16 及び Huggett, p.54)。

中流最下層(150-200ポンド)
辛うじて雑働き女中を一人。
中流(-500ポンド)
料理人、女中、子守といった家事に必要な三人。男性使用人は雇えない。
中流上層(-1200ポンド)
実務上必要な三人に加え、男性使用人である従僕や、小間使いといった衒示的(誇示や外聞的)性格の強い使用人を雇う。女中が複数になる場合もある。
上流および中流最上層(-5000ポンド)
執事、家政婦といった使用人の管理を代行する上級職が加わる。
最富裕層
家令、外国人料理人、従者、洗濯婦を含む全ての使用人を雇用。

引用元:ウィキペディア

ホームズの作中の人物、見る人が見たらどういう種類の使用人を何人雇ってるかで地位、収入、見栄っ張り度が分かるかも知れない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?