江戸川乱歩の「名作選」「傑作選」「短篇集 」「江戸川乱歩作品集 I・Ⅱ・Ⅲ」を読んだ

名作選

石榴
読んでいて「ちょっとトリック分かっちゃうなぁ」とか余裕こいてたら、そこまで作者の意図どうりで、まんまといっぱい食わされたという感じ。
作者と読者の知恵比べ的な面白さがあった。

押絵と旅する男
空想怪奇というか、オカルトもの?でありながら純愛悲恋物なのがいい
押絵と旅する男 cv:大塚 芳忠 で脳内再生して楽しんだ。

目羅博士
トリックが意味不明。
というか、そういうの有りにしちゃうと推理モノとしてはガクンと魅力が落ちる気がする。
推理モノというよりはオカルトものの分類か?
前半の公園や私見現場の奇妙な町並みの描写が面白い。

人でなしの恋
以外にも純愛悲恋もの。グッと来た。
嫁さんも無垢なままでは終わらせないところに乱歩の執念を感じる。

白昼夢
本当に、「アレはなんだったのか?」という話。ただただ不気味

踊る一寸法師
水曜日のダウンタウン的な「イジリ」文化を煮詰めると多分こういうことが起こるんだろうなぁ、、、
小人の道化師も、周囲の団員も、それをやけに冷静に見ている主人公自身も、全員がとてもグロテスクに思える。

陰獣
「ハンターハンターのアレじゃん!!」と思ってテンションあげて読んだ。
不気味さだけは一級だけど話としてはあまり面白くなかった。
ダラダラ長いからストーリーの進行に読者の推理が追いつく、「柘榴」はその読者の推理さえ逆手にとったどんでん返しがあったけど、「陰獣」は結局よく分からないまま終わってくのでモヤモヤする。
シャーロック・ホームズなんかと違い、この作品は主人公が事件の不気味さに引き込まれて段々こんがらがっていくのが新鮮だった。


傑作選

二銭銅貨
前回読んだ時は「春先になれば防寒具を片っ端から質屋に入れて少しだけ金に余裕ができる」という当時の貧乏暮らしの生々しさしか記憶に残らなかったのに、読み返してみたらすごく面白かった。
乱歩らしくない痛快さが気持ちいい。

二癈人
「まさかそんなベタなオチにはならないよな?」というオチだった。

D坂の殺人事件
良く分からない。
俺達は雰囲気でD坂の殺人事件を読んでいる。

心理試験
「罪と罰」を思い出した。
どうしても明智小五郎が好きになれない。

赤い部屋

「まあ、俺らの階級って働かなくても食うのに困らないし、超絶ヒマを持て余してるワケ」じゃあないんだよ、お前ら全員蝋人形にしてやろうか!!
みたいな怒りがこみ上げてきて、話の内容があまり入ってこなかった。

屋根裏の散歩者
殺し方のトリックとかラストの「タバコ嫌いの理由」とか結構雑な印象抱いたのは俺だけなんですか???

人間椅子
今のところ自分的乱歩ベスト
とにかく短くまとまってるのが良い。
特に最後の数行で物語をひっくり返して見せるのはすごい。
以外や以外、なんと寝る前に読んでも大丈夫なヤツ
と、思って二回目に読み返したときに「二通目の手紙の内容は果たして真実なのか?」と考え出してやっぱり眠れなくなるヤツ

鏡地獄
世にも奇妙な物語じゃん
これ、なんと実際の実験を嵐のメンバーでやったことがあるらしい。正気か

芋虫
映画「キャタピラー」を見る勇気が無くて原作のこれを読もうと思ったのがそもそも乱歩の小説を読もうと思ったきっかけ
エログロの色が一番濃い作品
ドストレートな戦争批判もの
全員狂ってる、全員グロテスク、なのに最後の「ユルス」でこみ上げるものがある。最初から狂人だった、悪人だったヤツはいないのかもしれない。


短篇集 (岩波文庫)

火星の運河
「出たよ、インテリがよくやる、バカを置き去りにする抽象的情景描写がよォ〜」と思いながら読んでたけど、文末に「体調悪くて変なの書いちゃいました☆」みたいなことが書いてあって憎めない人だなぁとなった。
絶対体調が悪い時の夜に見た夢の風景だと思う。

お勢登場
ラストがジョジョっぽくて良い。
「僕が生まれ育ったこの町のどこかで、今日も殺人鬼が平気な顔で生きているッ!」的な不気味さと後味の悪さが魅力

木馬は廻る
ストーリーというよりは物語全体に漂う「わびしさ」「さびしさ」みたいなものがとても魅力的
どこにも着地しない話なのに何故かとても好き


江戸川乱歩作品集 I

日記帳
ラストのどんでん返し、「一本とられた!」って驚きよりも「それを先に言えや」っていうイラつきのほうが前に出てしまう。
ラストのオチよりも、語り手が姉でなく兄だったという部分が読んでいて一番ビックリする。

接吻
良く分からない。
江戸っ子口調というか、なんだか演劇の脚本みたいな文体だった。

仕事場の描写で「朝出勤してきた上司に敬礼」とあったけど、当時は本当にそんなことしていたんだろうか?


6冊読んだ乱歩作品の中でグロさ堂々のぶっちぎり第一位!!
おめでとうございます!!
踊る一寸法師、石榴は「血と肉」にとどまっていたのが、この作品では「内臓と腐敗」にまで踏み込んでいる。
(殺してバラしてキチンと腐敗処理してるって点で「白昼夢」の立ち位置は絶妙)

前半で「内気な少年の恋」として主人公の思いに感情移入してしまうので、後半が余計につらい。

孤島の鬼
6冊読んだ中で一番長いけど「人間椅子」と同着一位くらい面白い。

「陰惨な事件とその裏にうごめく陰謀」「それらの真実を求めてたどり着くのが真夏の孤島」というのが、なんだか「トリック」みたいな雰囲気がある。

おどろおどろしい前置きから始まり、主人公の初恋物語と三重の殺人、そして絶海の孤島での大冒険!!ワクワクしないわけがないのだ。

ただ、殺人のトリックは相変わらず意味不明だった。

洞窟内で諸戸が勇気を振り絞るようなことを言った次の章のタイトルが「絶望」なのが容赦が無さ過ぎて笑ってしまった。

ラスト、やっと探し当てた実の親の事もうっちゃって叶わぬ恋に悶えて死んだ彼の事を語る最終章を「大円台」というタイトルでくくる主人公もなかなかの鬼畜なんではないか。


江戸川乱歩作品集 Ⅱ

一枚の切符
良く分からない
発表当時、外国の小説のパクリ疑惑が出たくらい良く出来てるという評価だったらしいけど、そうか?本当にそうか???

何者
色々なものが「漂白」された作品だなと感じた。

第一に、乱歩特有のグロテスクさや不気味さがほとんど脱臭されている。
学生時代の最後の夏を海辺の別荘ですごす、美しい女性への恋と嫉妬、とただただ爽やかで詩情にあふれている。

第二に、ラストシーンの「彼」が去っていく砂の音が印象的だが波の音は一切描写されない、
ピストルを池に投げ込んだ音も描写されていない、など、特定の「音」が何故か不自然に描写されていない。
(せっかく池の鯉を描写してるんだから「その時、池の鯉が跳ねるようなポチャンという音がした。」みたいなことを書いて伏線にすればいいのに、と思うのは素人考えなんだろうか?あるいは単にノイズとしてカットされたのだろうか?)

黒蜥蜴
和製ホームズVS女ルパンという感じ、
黒蜥蜴、散々人間をおもちゃにしておいて最後は自分の美学をまっとうしたいとかワガママすぎないか?
そして、それを許してしまう明智がやっぱり好きになれなかった。

断崖
この女、、、!間違いないッ!!スタンド使いだッ!!!
話自体は面白くなかった。



江戸川乱歩作品集 III

毒草
これと言って事件性があるわけではないかもしれないけど、胸の中にいつまでもいやな物がこびりつくような感覚。
「輪郭のあいまいな、正体不明の恐ろしさ」というか「不確実だからこそ最悪を考えてしまう」という鏡地獄的な恐ろしさがあった。

乱歩がたまにやる「そうかもしれないし、そうではないかもしれない」オチが一番効果的に使われてる話だと思う。

パノラマ島奇談
とても好き、夜中に目が覚めて一気読みしたのがさらに良かった。

主人公の夢想した退廃的なユートピアは、なんでそんなに趣味が悪いんだと思ったけど、あれだけの事をやってのける男の描いたユートピアがディズニーランドみたいなものだったら、それはそれで恐ろしいな、とも思う。

偉大なる夢
ほぼ冒頭の段階で「そのタイミングで敵に情報が渡ったならスパイはコイツだろ」ってヤツがそのまま犯人でがっかりした。

そこそこ長い長野の山奥での「見えざるスパイとの攻防」のくだりを「まあ、犯人ソイツなんだろうけど」と冷めた気持ちで読み続けるのは結構つらい。

憲兵三好と韮崎の対決、スパイのアジトでのおおとり物と明かされる真実、犯人の一代記というラストはすごくおもしろい。

ラストは多分に演劇的。

ただ、感動的なラスト部分を読みながら頭の片隅には常に「今まさに毒飲んだ人間にそんなに長い話する???」があった。

防空壕
第二幕のはじめでオチが読める。オエー


3ページでこんなに衝撃的な話がかけるのすごい!!
こんなにコスパの良い小説を他に知らない。


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