Heaven 17という、たぶん知名度が極度に少なそうな人々について
Heaven 17というポップグループを知っていますか?
えっ?「時計仕掛けのオレンジ」に出てくる?違います。
イギリスの3人組です。あの、ヒューマン・リーグって有名なグループがいますが、そこから分派した2人、マーティン・ウェアとイアン=クレイグ・マーシュが、シンガーにグレン・グレゴリーを誘って始めたのがこのユニットです。
この人らとの出会いは、このアルバムでした。
当時「薔薇のダンディズム」という、小っ恥ずかしいのか何なのかよくわからない邦題がついてましたが。
最初は、いわゆるジャケ買いだったんですよ。
で、これに入ってた「Sunset Now」という曲がわりと好きになりまして。この、良い意味で予想を裏切る展開が好きでしたね。
でも、もっと度肝を抜かれたのはこれかも。冒頭に入ってる「Five Minutes To Midnight」だったりします。今聴くとどうってことのないエレクトロニックポップだと思うんですが、改めて冒頭から聴いた時にひっくり返りそうになりましたもん。何だ、この緊迫感は、と。エンディングがいきなり切れちゃうところもスリリングでした。これから間髪入れずに「Sunset Now」でしたし、カッコよかった。
続いて「This Is Mine」も素晴らしい傑物です。もうね、あの「How Men Are」のA面は自分の音楽観をかなり強固に作ってくれたと思いますね。特に冒頭3曲は「文句を言わずに聴け!」と強くお勧めしたいです。
「This Is Mine」なんて、歌の入りの部分からいきなり予想を裏切ってくれる。ミドルの部分に入ってもマイナーキーで来るんで、どうなるんだと思ったらサビでメジャー展開しちゃう。まあ、イントロの冒頭部分で一応ヒントは聴かせてるんですけどね。
個人的には、マーティン・ウェアやイアン=クレイグ・マーシュという人々のサウンドも好きでしたが、グレン・グレゴリーの歌が大好きでした。
いや、上手いか下手かって観点で言えば、どっちともとれる人だと思いますよ。
ただねえ、カッコいいんです。
自分はこのアルバム以前の作品を後追い的に聴いてるので、例えば大ヒットしたという「Temptation」だとか・・・
この「Let Me Go」とか・・・
この、ファーストアルバムのタイトルトラックにもなった「Penthouse And Pavement」も・・・
全部後追いで聴いちゃう始末でした。しかも、ほら、Heaven 17って、何しろ知名度が極度に少ない。その謎めき具合が逆に良かった。
これなんか、後追いで聴いた初期の曲では好きなものの1つです。リキ入ってるじゃないですか。歌詞はシンプルですけど。
この人らはさっきも言いましたが、元々ヒューマン・リーグにいたんですけど、路線対立だか何だかでグループを離れまして、で元々このコンビで組んでBritish Electric Foundation(以下BEFと略す)というユニットを作って活動を始めたという経緯があります。
で、このBEFに誘われたシンガーの1人がグレンらしく、何に惚れたのか知りませんが、彼を含めたパーマネントユニット「Heaven 17」をやっていこうとなったみたいです。
BEF名義ではポップスのカヴァーアルバムも何枚か出していて、そこにはグレンもゲストの1人として参加しているものがあるので、是非探して聴いてみていただきたい。
話をHeaven 17に戻しますが、先程のアルバム「How Men Are」のあとに「Pleasure One」というアルバムを出していますが、その冒頭にこういう曲を入れてきました。
これ、ベースラインがメチャクチャにカッコいいじゃないですか。このエフェクト気味に入ってるシンセは邪魔くさくて好きじゃないんですが、故にそうしたエフェクトの薄いエクステンディッド・ヴァージョンが良いです。
で、この次に「Teddy bear,Duke And Psycho」というアルバムを出すわけですが、その前にこういうシングルを出しました。
この「The Foolish Thing To Do」ってのが、自分としてはもうズッキューンですわ。これ、例の3人に加えてこのユニットに客演することも多かったピアニストのニック・プリタスが加わって作ってる曲なんですが、ここでグレンに代わってリードシンガーの座を占めているジミー・ラフィンは、テンプテーションズのデヴィッド・ラフィンと関係がある人だと聞いたことはあります。
まあ、ともかくですね、このジミー・ラフィン版はたまたまエアチェックで引っかかってきたんですが、破壊力ありましたね。
なお、グレンだけで歌っている方はこちら。これもこれで味わい深くて良いですので、是非聴き比べてください。
このアルバムのあと、ユニットは活動を止めてしまい、しばらくしてからまた復活しているようです。現在でも活動中だとか。
ただ、自分の前に1980年代中盤の一時期に彗星のように現れて、強烈な印象を残して過ぎていった人々として、今も時々懐かしく聴いたりしています。
この人たちは、エレクトロニックポップの第一人者的なポジションでありながら、ホーンやベース、ギターという、電子楽器とはあまり縁のないような楽器の使い方にも長けていたと思います。
ぜひ、機会があれば聴いてやってください。