1,000文字のアートレビュー⑦ Simon McBurney 『The Encounter 2020 Online』
コロナ禍のチャリティーのため、10日間に渡り配信されているSimon McBurney『The Encounter』。
アイディア、演出、構成、演技すべてが衝撃。演劇によるレヴィ・ストロース。2時間あまりの間にセスナで飛び、アマゾンの小さな村で(何に?)Encountした。
現実
現実とはなんだろう?あるいは、リアルとはなんだろう。
ラップトップ・スクリーンに映る誰かの姿は「現実」だろうか?ウィンドウを閉じた瞬間に消えてしまう彼は、いま、確かに存在しているだろうか?本当に?
この文章をインターネット上で読んでいるあなたは果たして現実世界にいるのだろうか?それともオンラインにいる?
時間
「2020年5月24日22:03」スクリーンにはそう表示されている。いや「22:04」。再訂正。22:42
時間。「ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」。ヘラクレイトスは「同じ川に2度入ることはできない」といった。それは絶えず、一方向に流れていく、らしい。
本当だろうか? (wrong, all wrong!)
川の終わりはどこなのか?そしてそのはじまりは?
水がすべてつながり巡るなら、この星の川は、すべて一つの川ではないのか?枝分かれした川は、果たしてちがう川(ちがう時間)なのか、同じ流れの中にあるのか。
僕らの身体にも(ビデオテープのように絡んではいるが)血を運ぶ一つながりの川が流れている。
言葉
言葉は人間の最高の発明品の一つだ。いま、インターネットを通じてあなたの頭に語りかけることができるのも、言葉があるからだ。
でもかなり昔、傲慢な人間がつくった塔のせいで、それは砕かれて(fragmental)しまった。思考はfragmentalになり、時間もまたfragmentalになった。
それらが「一」なら、言葉はそれでも必要だろうか。
死
死が巡る。時計回りに。
アディダスのスニーカーが焦げるにおいがする。
死は、現代人にとっては「他者」だ。暗闇の中で肌を切り裂き、血を吸い、傷口に卵を生み、体内をもぞもぞと蝕む、大きな太った蛆虫だ。
焼け。焼け!
そしてはじまり
1,2,3,
1,2, 1,2
クラップ!
1,2,3,
1,2, 1,2
クラップ!GOD
ふたたび現実
ふたたび、現実とはなんだろう?あるいは、リアルとはなんだろう。
幼な子にベッドで語られる物語は、現実ではないのか?あるいはうたた寝て見た夢は?(テレビの向こうで起きる事件や重ねられる嘘、インターネット上で呟かれる心ない言葉よりも?)
マヨルナ族は?
(2020年5月24日 Simon McBurney 『The Encounter 2020 Online』)
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