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欧州雑記:ドイツという国は色々面白い(歴史とか)

もともとドイツにはまったく何の関心もなかったんですが、なんのご縁か住むことになって早5年が過ぎました。

そして、住むようになってから読んだ本や歴史で、この国の面白さに気づきつつあるので、それを取りとめもなく書いてみようと思います。

個人的おもしろポイント①「ドイツ」という国の成立が(大国の割には)超最近

今や世界の大国の中でも存在感を放っているドイツだけど、「ドイツ」という国が成立したのは、19世紀の終わり(1871年)とけっこう最近なのを、私は最近知りました(え、常識?)。それまでは、プロイセン(北ドイツ地域)とか、バイエルン(ミュンヘンを中心とした南ドイツ地域)とか、その他小さな都市国家や領地がこまごま入り乱れた「別々の国(もしくは領地)」だったのですよ(その名残でいまだに地方自治がとても強い)。もちろん、それまでも国同士の同盟とかはあるけど国は別々。

日本が千年以上、ヨーロッパの他の大国フランスやスペインがなん百年も前から、ロシアも1600年台には今とだいたい同じような領地だったことを考えると、ドイツの「一つの国」としての成立からまだ150年くらいしか経ってないというのはものすごく異例に感じません?

日本も19世紀の終わりに明治維新が起きるまで、各藩が「国」としてその土地は治めていたけど、その上に「徳川幕府」という全国統一の統治機関があったわけで。ドイツの場合は、それがなくてほんとに別々の国や領地だったんですよ。

それが、第一次世界大戦敗戦後、天文学的な額の賠償金のために未曾有の不況に陥り、その苦境を脱するためにナチスにすがり、ナチスに煽られて「ドイツ国民」としての自意識が(おそらく)初めて、かつ最大限に盛り上がった結果、第二次世界大戦で未来永劫消せない罪を犯してしまったために、「ドイツ国民」は「ドイツ国民」としてのナショナリズムを声高に叫ぶことから距離を置いてしまったのかもしれない(注:個人の推測です)。

その代わりに、日本でいう「県民意識」のようなものが強い。ケルンなら「ケルン市民」、「バイエルン」なら「バイエルン人」というアイデンティティをとても大事にしている。

こんな話がある。以前、欧州の医療系学会(inオーストリア)で、オランダチームが「オランダカフェ」のようなものを運営してオランダ人顧客をそこにおびき寄せて(笑)商談をするという企画をやっていた。

ドイツ人同僚とそのオランダカフェでまったりとコーヒーを飲みながら「ドイツチームもドイツをテーマにしたなんか企画したらドイツの顧客集まるんじゃないの?」と何気なく聞いてみたら、「いや、ドイツ人は「ドイツ人」というアイデンティティが強くないので、そういう企画をやってもたぶんあんまり顧客は集まらない。それより、出身地や地元への愛着の方が強いのだ」と言っていたのがとても印象に残っている。

なので、ケルン出身のうちの夫に、有名なビールの祭典「オクトーバーフェスト」の話題を振ってもまったく盛り上がらない。なぜならあれはあくまでミュンヘンのお祭りで「ドイツの」お祭りではないかららしい。

ケルンでは「カーニバル」という、仮装したりしてバカ騒ぎをする伝統の方が大事にされていて、たとえドイツから9千キロも離れた日本で「オクトーバーフェスト」が開催されるような時代になろうとも、ドイツの他の都市でそれを真似した「オクトーバーフェストもどき」が開催されることは決してない。それくらい、「同じドイツだから」という理由で他の町や地域の文化を取り入れたりすることは基本的にないのである。それもこれも、もともと全然別の国や領土(なんなら仲悪かった)という歴史を考えると納得なのかもしれない。

個人的おもしろポイント② 科学技術・学術分野の本(特に歴史系)を読んでるとドイツの存在感がすごい

ちょっと前に読んだこの本、2021年に読んだ中でもかなり面白かった本で、(注:まだ翻訳版のKindleが出てなくて待つの面倒で英語版のAudibleで聴いたので、正確には「聴いた」ですが)、DDTやらアヘンやらロボトミーという、現代科学・医学の技術の進歩の過程で発生してしまった「禍い」を取り上げている。

で、その中ででてくるドイツ人医師・技術者・科学者・化学者の話の多いこと多いこと。Audibleを聴きながら「あれ、これドイツの本だっけ?」と思うくらいドイツの話が多い(作者はアメリカの感染症専門・小児科医さんですよ)。

あと、たまたま「地政学」の本を読んでたら「地政学」という概念を提唱したのもドイツ人らしくその話が長々と。

さらに、面白くて毎週金曜の更新を心待ちにしているこちらのお話も、主人公が森林学を学びにドイツに来るのでドイツ話満載。

更に更に、愛媛県人の必読書(かどうかは知らんけど、個人的に大好きな)坂の上の雲も、半分はドイツ式を採用した陸軍の話なのでドイツ関連の話が多い(残りの半分は英国式を採用した海軍の話なんだけど、なぜか英国関連の話はあまりでてこない不思議)。

そんなこんなで、別にドイツの話を選んで読もうと思っているわけじゃないのに、いろんなところでドイツの存在感が強すぎて、「また出てきたよ!」状態(笑)

ちなみに、(私の古巣の)医療界も明治維新後にドイツから医学を学んだことは有名だけど、いまだにドイツ語由来の医療用語は多い。

というわけで、ドイツは19世紀終わりにようやく今の形になった(植民地もほとんど持たない)ある意味新興の国でありながら、第一次世界大戦では潜水艦などの高度な軍事技術を次々開発して連合国側を散々苦しめ、敗戦しても這い上がって第二次世界大戦で欧州を恐怖のどん底に突き落とす軍事力を確立し、その後再度どん底まで負けてもふたたび不死鳥のように立ち上がり、東西分断の憂き目に遭いながらも今や科学技術立国・製造業国として再度欧州に君臨しているのは、こういう学術的・科学技術的なところで昔から存在感があった底力の上に成り立っているのだな、と感心します。

19世紀終わりまで「ドイツ」という国すらなかったのに、こんなにいろんなところで幅を利かせているのが、個人的な面白ポイント②なのです。

ちょろっと小話的に書くつもりが長くなってしまった…。何の役にも立ちませんが、まあ、雑学的に面白いと思ってもらえたら嬉しいです。

私なんぞの体験でも何かのお役に立てればと思って書いていますが、サポート頂くと続きを書く励みになります。