東京メトロの上場に関する深掘り
東京メトロが2024年夏以降の上場を目指すとの記事がありましたので、今回はこちらについて深掘りしてみたいと思います。
東京メトロとは
正式名称は『東京地下鉄株式会社』で、首都圏に在住の方であればお馴染みの丸の内線や銀座線などの地下鉄を運営している企業です。
実は東京メトロは株式上場しておらず、政府が53.4%、東京都が46.6%の株主となっています。
なぜこのタイミングで上場するのか
『復興財源確保法』という法律にて、政府が2027年度までに確保した売却収入を復興債の償還費用に充てると定められています。
現在、東京メトロの株式は政府と東京都で100%保有しており、それらを最終的に50%まで売却し、政府側の売却益を東日本大震災の復興財源とすることになっています。
それによって、今回東京メトロが株式市場に上場することで話が進んでいる状況です。
復興財源確保法とは
2011年に成立した法律で、東日本大震災からの復興を目的とした施策を実施するために必要な財源を確保するための特別措置法のことです。
東京メトロの他にも、日本郵政や日本たばこ産業(JT)の株式の売却などについて定められています。
東京メトロの期待値
東京メトロは首都圏に9路線を展開し、路線距離は195km、23年3月期の輸送人員は21億7191万人と、東急や西武鉄道など首都圏の私鉄大手を2〜4倍近く上回る規模を持っております。
また、今後30年代には南北線の品川延伸や有楽町線の豊洲-住吉間の延伸を目指しており、さらに旅客増が期待されています。
複数の国内証券アナリストによると、東京メトロの企業価値は8000億〜1兆円程を狙えると見られており、上場時の時価総額を8000億〜1兆円とした場合はPBRが23年3月期ベースで1.26〜1.57倍の計算となります。
【参考】(1/26 終値)
東急: 時価総額1兆750億円 PBR 1.36倍
阪急阪神HD: 時価総額 1兆1374億円 PBR 1.12倍
東京メトロの課題
東京メトロでは、売上高の約9割を鉄道事業が占めており、不動産等の非鉄道事業は約1割にとどまっています。
コロナ禍以降、テレワークが浸透し、定期券収入がコロナ禍以前の8割程度にとどまっており、今後も元の水準には戻らない見通しとなっています。
それに対して、東急などの競合各社はオフィスや商業施設など不動産開発を中心とした非鉄道事業の拡大を進めておりますが、
東京メトロは競合に比べて地上の土地の保有が少なく、それらの事業規模が見劣りしていることが課題となっています。
今後の展望
これまで政府と東京都が株主でしたが、今後は上場に伴い、新たな株主のもとで成長が強く求められる環境で事業を行っていくことになります。
ポイントとなるのは非鉄道事業の成長になるので、輸送人員の多さを活用し、駅構内や車内の広告事業を強化する等、東京メトロの強みを活かす施策を考えて、競合との差別化につなげていく必要があります。
上場時の時価総額はそれなりの高額がつく気がしておりますが、上場後に株主の期待にこたえ続けられるか、それを示すPBRに注目していきたいと思います。