積水ハウスの米住宅メーカー巨額買収に関する考察
積水ハウスが米国の住宅メーカーM.D.C.ホールディングスを約49億ドル(約7200億円)で買収すると発表しました。
今回のM&Aが何を意味するのか、積水ハウスの米国市場への戦略や課題について考察していきたいと思います。
記事を要約すると主なポイントは以下のとおりです。
日本の住宅市場
日本の住宅市場は先行きの見通しが厳しく、国土交通省によると注文住宅の23年11月の着工戸数(持ち家)は1万7789戸で、前年同月比17.3%の減少でした。
前年比でのマイナスは21年12月から24カ月連続となっております。
これまで積水ハウスの事業では、日本市場がけん引してきましたが、人口の減少で縮小傾向にあり、海外市場での成長が必要となっている状況です。
なぜ米国市場なのか
米国では日本と異なり、人口と世帯数ともに 毎年1%弱増加しており、世帯数は毎年100万世帯増加しています。
つまり新しい住宅需要が毎年100万戸生み出されていることを示しており、住宅メーカー各社にとって魅力的な市場となっています。
競合他社の動向
では積水ハウスの競合となる『住友林業』や『大和ハウス』の動向はどうか。
最も海外進出が積極的なのは住友林業で、この10数年で8社の住宅メーカーを米国とオーストラリアで買収しています。
その結果、10年前と比べて経常利益は約10倍となり、そのうち8割弱は米国を中心とする海外で稼いでいます。
大和ハウスもこの5年で5社の住宅メーカーを米国とオーストラリアで買収し、戸建住宅事業の利益が米国を中心とする海外で急増しています。
積水ハウスの米国市場での事業戦略
積水ハウスが米国市場でどのような戦略を描いているかというと、これまでに日本で磨いてきた木造住宅のブランド『シャーウッド』を米国で普及させて、断熱性や防火性能、バリアフリーなどを武器に唯一無二の住宅事業を展開する戦略としています。
シャーウッドは強度の高い構造材を柱や梁に使うことで広い室内空間を確保することができ、「安心・安全」「快適」「ダイナミックなデザイン」を提供することができます。
積水ハウスはこれまでに米国市場でM&Aを通じて段階的に事業拡大をしてきました。
MDC社の買収で販売戸数は他社を大きく上回り、事業基盤も広がるため、米国中心に海外で利益を引き上げるという計画が、前倒しで達成される可能性が高まっております。
今後の課題
積水ハウスの今後の米国市場における課題として以下3点が挙げられます。
大型買収の経験に乏しい積水ハウスがMDC社をうまくマネージできるか
米国市場でシャーウッドの販売戸数を伸ばすには時間もかかるため、まずは米国で販売する住宅の設計や資材の共通化などに取り組み、技術力や競争力の向上が必要
規模の拡大だけにとどまらない相乗効果を高めることができるか
今回の買収は日本製鉄のUSスチール買収に続き、日本企業による大型M&Aとなるため、巨額買収の成否がどうなるか、今後の積水ハウスの事業成長に注目したいと思います。
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