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問題解決あるあるコラム#23:タイパは正義なのか?

こんにちは。いちおか@問題解決サポーターKAIOS代表です。

問題解決あるあるコラム第23回のテーマは、「タイパは正義なのか?」です。「タイパ、タイパ」が叫ばれて久しい今日この頃です。ひと昔前は「コスパ、コスパ」が全盛でした。ではなぜ今「タイパ」なのでしょうか? 今日はこの「タイパ」について考えていきたいと思います。


「タイパ」はネット社会が生み出した評価価値

まず初めに「タイパ」の意味ですが、「タイムパフォーマンス」のことですね、かけた時間に対する成果、取り分、といったところでしょうか。「コスパ」の「費用対効果」に対して「時間対効果」と言ってもいいかもしれません。では、なぜこんな言葉が今になって使われるようになったのでしょう? それは、昨今のネット環境の高速化に影響を受けていると考えられます。どんな情報も個人携帯端末を使用すれば、あっという間に手に入れることができるようになりました。そして、我々がその環境に順応し「当たり前」になったことで、「即効性があることが正義」と社会全体が思い始め、時間がかかることに対して「時間対効果」が悪い、つまり「効率=タイパ」が悪い、と感じ始めたことにより表面化した価値であると考えられます。現代ならではの評価基準ですね。

「タイパ」と「コスパ」はトレードオフではない

では、一方の「コスパ」はどうでしょう? 「費用対効果」ですから、尺度はお金ですね。なるべく少ない費用でより良い品・サービスを手に入れたい、というニーズに基づいた評価基準です。この時、時間軸は補助的評価軸で、「時間がかからないに越したことはないけれど、時間がかかる分安くなるならそれを受け入れる」という許容幅も持っています。しかし「タイパ」は違います。時間が最優先だけど、「時間がかからない分、費用が余計にかかることを容認するか?」というと必ずしもそうではなさそうです。むしろ、「早くて安い」ものしか許容しない、という強烈なニーズがそこには含まれているように思います。もはや「コスパ」の時のようなトレードオフ関係は成り立たちません。

「エイジング」と「タイパ」は両立するのか?

「タイパ」と対極にある価値「エイジング」は日本語にすると、「熟成」や「熟練」など、時間の経過とともに得られる付加価値を指します。人間の技量もそうですが、食品や機械加工品などにも当てはまります。長い時間が経過することによって生み出される成果物は、その期間を「見守ってきた」という記憶も伴い、愛着や愛情も育まれます。それは数ヶ月から数年、時として数十年、数百年に及ぶこともあります。我々人間は、こうした時間軸でこれまでさまざまなものを評価してきました。人生のサイクルは年単位です。その間、春夏秋冬の四季があり、農作物の成長・収穫なども、この一年のサイクルの中で繰り返されてきました。そして、今も脈々と続いています。

季節の巡りが人の生活のサイクルを作り出した

このサイクルの中で、人は先を予測し、備え、意図した成果を生み出すことを目標に暮らしを営んできました。この、「一年」というサイクルは、出来事を覚えておくには少々長く、記憶頼りは成立しません。しかし、同じ季節は必ずやってきます。そこで、人々は記憶を記録し文書化することで、得られた知識・経験を維持し、他者とも共有できるようにし、失敗を避け、成功を得ようとしてきました。

「タイパ」は「今」を取り「将来」を捨てている

しかし、現代の時間の流れは、この季節基準のサイクルを遥かに超えたスピードになりました。成果を求める時間軸がどんどん短くなり、われわれ人間が根本的に持っている「今、得をしたい」という気持ちを加速させ、将来得られるはずの利益を捨ててしまっているように思えます。将来を捨てることは「想像力」を失い、そこから生まれるはずの「未然防止」ができなくなる、ということにつながっています。

「タイパ」は満足も一瞬

少々強引な考え方かもしれませんが、「タイパ」はPDCAサイクルの「D」を求めすぎた末に生まれた価値で、残りの「P・C・A」を捨てているのかもしれません。これは、これまで人間が生み出してきた、「時間をかけたことによる付加価値」である「創造的価値」や「愛着」を放棄し、「今すぐ満足したい」という即効性のみを追い求めることを意味し、直ぐにまた「次の満足」を求めて追いかけ回す、達成感のない不幸なサイクルに足を踏み入れてしまっている、ということではないでしょうか?

まとめ

「想像する」楽しみ、「待つ」楽しみ、「育てる」楽しみ、時間が我々に与えてくれる楽しみは、「効率」には変え難い価値があるように思います。そして時間をかける楽しみの究極は「考える」ことだと僕は思います。何かの完成・完了を想像してワクワクしたり、頭を悩ませ、時間をかけ、考えに考え抜いて導き出した結論は、時間をかけた分だけ輝いているように思います。皆さんはいかがでしょうか? それでもやっぱり「タイパ」を求めますか?

今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
次回のテーマは「PDCAを回したかったらCAPDoからはじめよう」です。
次回もお楽しみに!


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