さよならのそのあとで。<住まいの引き上げ:準備>

母が亡くなって半月。
母が20年以上を暮らしたこの団地も
整理して引き上げなけれれば、ということで、
団地事務所に出向いて手続きの話を聞いた。

事務処理に関しては、入居時に緊急連絡先に
指定されていた弟の名前で
行う必要があるらしく、
私が行う場合は、弟の代理人として
書類が追加で必要になるとのこと。
めんどうなので、弟に来てもらうことにする。

この国では、親子であっても
「登録されている名前かどうか」と、
「国内で連絡がとれるかどうか」の2点で、
私では役不足とされることが多い。
(今となっては、私も一時的に、住民票を
母の住所に移しているので、後者に関しては、
手続きがぐっと楽になったけれど)

そういった愚痴を日本にずーっと住んでいる
知人にこぼすと、
「そんなこと言わなかったらよかったのに〜」
「本人の体で電話すればよかったのに〜」
と言われることが多いけれど、
(虚偽の申請をして思い通りにことを運ぶという)
その一連のパッケージそのものに、
空虚なものを感じてしまう。

一昔前、日本におけるキセル乗車の大半は、
乗車駅と下車駅の最低料金の定期券を用意して、
堂々と不正乗車を行うものだと聞いたが、
そこに通じるものがあるような?
(ちなみに欧州では、改札を飛び越えたり、
前の人にくっついて改札に入るなど、
幼稚で原始的な手口がほとんど)

少し話がずれたけれど、この団地事務所では、
家賃の管理はしていないようで、
総務を担当している
別の事務所の連絡先を教えてもらう。

というのも、おそらく母の銀行口座は
凍結されている可能性もあり、
家賃の引き落としがなされず、
別途振り込みなどの処置が必要になるのでは、
と思ったから。

その総務担当事務所に電話をして、
事情を話したら、案の定というか、
「緊急連絡先に書かれている
お名前の方以外とはお話できません」
と言われた。

家賃が滞らないように、
先回りして連絡したのだけれど、
まぁ、家賃が落ちなかったらそのときは、
きっと向こうから連絡がくるのだろうから、
それを待てばいいか、と思い直し、
「なら、とりあえず放っておきます」
と電話を切ろうとしたら、
「ちなみに、なんですけど」
と滑り込んできた。

「いま、ご契約者さまの自宅番号から
かけてくださっているようですが、
今後、ご長女さまとお話したい場合は、
こちらの番号におかけしていいでしょうか」

たったいま、私とは話せないって言ったよね?
明らかに本音と建前の間で立ち往生する
担当者さんなのであった。

空虚だ。

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