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卵子凍結に行政が助成金を補助する危うさ

最終的な数値ではないが、2024年1月中旬の時点で東京都の卵子凍結説明会参加者は7300人、その中で1650人が申請を既に行っており、申請者は今後も増える見込みだと言われている。

都が想定していた上に関心度が高かった卵子凍結。卵子凍結は自費診療のため、負担も多く補助金を待ち望んでいた人も多かったのではないかだろうか?

そして何より都内クリニックの、卵子凍結に関する熱心なプロモーションも、関心度をあげるのに大きく貢献したのではないかと思う。
Instagram等のSNSを見ていても、卵子凍結のPRを目にしない日はないというぐらいに、各クリニックの発信が目に止まる。

2024年度以降の助成金に関してはまだ発表されていないが、関心の高さ及び、元々は2023年度はお試し期間として想定されていたことから、引き続き実施されるのではないかと私は予想している

そして、山梨県が卵子凍結の助成を検討していることが先日ニュースになっていた。今後、他府県がどこまで追随するのかが気になるところだ。


卵子凍結に助成金を出す自治体の真の狙いとは?

「女性の選択肢のひとつとして」「女性活躍推進の一環として」
卵子凍結に助成金を出す理由として様々な言葉が並ぶが、自治体の真の狙いはどこにあるのだろうか?

結局のところ「少子化対策」ではないかと思っている。実際にニュース等でも「少子化対策」の一環での卵子凍結と報道されている。

産むこと、凍結した卵子を使用してくれること、少子化対策に貢献してくれることを期待して助成金を出しているのではないだろうか?

そしてもうひとつ気になるのが、今後の他府県での卵子凍結の助成だ。

現時点では他府県では山梨県の助成しか聞かないが、個人的には「出産適齢期女性の転出阻止」を目的として、他府県も卵子凍結に対して助成金を出さざる負えない状況になるのではないかと思う。

20代女性の転出と転入を表した数値を見ていると、増加しているのは
東京都 神奈川県 大阪府 埼玉県 愛知県の5県のみであり、その中でも東京都への転入率はずば抜けている。

ちなみに転出超過のワーストは、福井県、青森県、福島県、秋田県、徳島県となっている。

もちろん、転出の理由は様々である。
20代であれば、進学先がなく都市部に出たまま戻らない、就職で都市部に出るなどが主な理由となり、「卵子凍結の助成金」がそこまで影響を及ぼさないという意見が一般的だろう。

ただ東京都での助成金がスタートしたタイミングで、他府県の助成金に関しての質問があったり、東京都の助成金をうらやむ声が少なくなかったことも事実だ。

特に東京近郊の県であれば、卵子凍結の助成金が東京へ転入するキッカケになってしまう可能性は大いにある。人口減少に悩む自治体としては、何とか阻止したいのが本音ではないだろうか?

「卵子凍結助成金」と一言でいっても、様々な思惑が見え隠れしているような気がしてならないのは私だけではないはずだ。

産まない選択が尊重されなくなるリスク

個人的には、行政が卵子凍結の助成金を出すことには、正直危うさを感じている。

卵子凍結は「少子化対策」にはならない。これは多くの医療関係者が訴えている。未受精卵の卵子凍結での妊娠・出産率は想定以上に低いからだ。
そして凍結した卵子を使用しない人も一定の割合でいる。

卵子凍結に助成金さえ出せば、将来女性が子供を産む選択をするのではないだろうか?というのは正直なところ甘い期待でしかない。

そもそも第三者提供の精子で体外受精が難しい日本の場合、卵子凍結をしたからといって将来必ず使用できるわけではない。まずはパートナーを見つけることから始める必要がある。

自分の意思だけではどうしようもないのだ。

税金を使わずに卵子凍結したのであれば、個人の判断でその卵子を使用せずに破棄してもなんら問題はないだろう。

ただ助成金の場合は違ってくる。税金を利用している以上は、5年後、10年後の利用率や妊娠率、出産率が注目されることは明白である。

助成金で卵子凍結をしたのになぜ産まないのだ…という声も少なからず上がってくるだろう。
なんなら一昔前に流行ったようなお見合いパーティーみたいなものが行政主催で増えるかもしれない。まだまだ昔ながらの感覚が蔓延っている日本だからこそ、周りから妥協した結婚を迫られる可能性だってゼロではない。

「そんなの知った事ではない!産む、産まないを決めるのは私の権利」と外野の声を流せるだけのメンタルの持ち主であればよいが…と思ってしまう。

卵子凍結の助成金が、産まない選択、凍結した卵子を使用しない選択をないがしろにしないものであってほしいなと思います。


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