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【エグゼクティブの成功マインドを磨くCEOコーチング:シーズン1-2】「イチヒャク発想」のメカニズム(後編)

(1)「イチヒャク」は伝染していく


こんにちは。
エグゼクティブ専門コーチの久野和禎です。
 
今回は、前回の続きとして「イチヒャク」についてお話ししたいと思います。
 
前回の記事の最後、「イチヒャク発想」について私は、次のように説明させていただきました。
 
「組織のトップを含めた全メンバーが『私たちはいまはまだ1だけど、
100だっていけるはずだ、そこまで行ってしまおう。できたらすごくおもしろそうだよね』と思ったとしたならば、それは脳の仕組み上は実現可能だと考えられるのです」
 
たとえば、社長自身がCEOコーチングを受けながら、「100を目指していく」ことを打ち出して、自分なりにそうなったときの世界観をリアルにイメージできるようになってくると、そのイメージが社員に伝染していきます。当然、社員の中でもトップに近いところから伝染していくので、まずは役員だったり、経営幹部の人たちが社長と同じような温度感になっていきます。
 
この「温度感」を説明する際、「映像」に着目するのが認知科学の特徴の1つです。
 
100になったときの映像が本当に見えてしまえば、脳はその見えたものを実現すべく、脳の各箇所の能力を駆使して直感を働かせてどんどん進むことができる――。
 
社長から幹部たちへ温度感が伝染していく場合は、幹部全員が一度に変わるというより、一人ずつ変わっていくことになります。そして、その結果、今までとはまったく違うサービスを生み出したり、ひらめきを生んでいくわけです。
 
私は会社内で温度感が伝染していく様子を、何度も見てきました。
 
ラインの調整などが必要な製造業は少し時間がかかりますが、特にIT系の企業の場合、新しいアイデアが浮かんでから1週間、2週間という短期間で、新しいコンセプト、新しい製品、新しい世界観が生み出されることは珍しくありません。

(2)コロナ禍のイチヒャク社長たち


それはコロナ禍でも同じです。
2020年、コロナ禍が始まったころ、「業績が劇的に下がってしまうのではないか」「うちの会社はまずいんじゃないか」と多くの人が感じたのではないでしょうか。
そのような有事に力を発揮したのが、私がお付き合いしているイチヒャクを掲げている社長のみなさんでした。
 
まず、イチヒャクを掲げている社長は、天気でたとえるなら、「いまは土砂降りでも、いつかは晴れる」ことを知っていました。
そして、「そうだとしたら、土砂降りの雨の間にどんな準備をしたら、晴れたときにもっとよくなっていけるだろうか」と考えていたのです。
 
いま現在、必ずしも全ての分野で完全にアフターコロナとは言えない状況かもしれませんが、ビジネスではほぼアフターコロナになりつつあります。そして、イチヒャクを掲げていた社長は、アフターコロナになってから次の手を考えたのではなく、コロナがはじまってすぐにアフターコロナを考えはじめていました。その結果として、コロナ禍にも準備をし続けたことで、コロナ前に比べて収益性がよくなって、強くなっているのです。
 
ビジネスの観点でいえば、「新しいニーズを見抜く力」といったものも大いに影響しているのですが、その起点となったのは「イチヒャク発想」です。「嵐、土砂降りの雨に打ちひしがれている暇はない。これをチャンスと捉えて、もっと強くなろう」とイチヒャクを掲げ続けるなかで、新しく生まれたアイディアに取り組んでいった結果、さまざまなサービスが生まれていきました。イチヒャクを掲げている社長のみなさんは、コロナで仕事が減ったことすらも前向きに捉えて、余っているリソースを活用して、サービスを開発していったのです。
 
たとえば、ある会社はVRやAR分野でのポジションをしっかりと固めることに成功しました。
また、従来型のルート営業を一新して、インターネットを活用した仕組みに切り替えて、流通すらも変えることで、お客さんとの距離感をより近づけて、信頼を勝ち取った会社もあります。
建築関連の製造業でいえば、もともと持っていたユニークな製品の需要が鈍化していくなかで、「どうしたらもっと活用できるか」を考えて、これまで温めていた防災向けの技術をもう一度引っ張り出して、目先の利益ではなく、もっと長期的な視点でイチヒャクに取り組んでいる社長もいらっしゃいます。
 
すべてのケースに共通しているのは、私がコーチングしている社長・CEOを通じて、幹部、社員の方へと「イチヒャク発想」が伝わっているという事実です。
このことはまだ科学的には証明されていませんが、どうも人間の脳には「リアリティを強く持っている人がいると、そのリアリティが他者へと移っていく」という性質があるようなのです。
 
たとえば、サッカーのワールドカップの試合を現地で見て、その熱狂を体感した人が熱を持って話をすると、それを聞いていた人も実際に現地で試合を見ているような気がしてくるのと同じようなイメージです。
 
そういう性質があるとするなら、言葉から感じられる熱量とか温度感だけではなく、映像であったり、その時の音や匂いだったり、そういうものも共有できる可能性があると言えそうです。
 
このことは、人間が古から宗教をはじめとする世界観、あるいは場を共有するなかで、集団として何かを成し遂げてきたことにも起因しているのかもしれません。
そして、その性質をしっかり理解したなら、このようなイメージの共有を偶然にではなく、意図的に起こしていくことができると考えられるのです。
 
そうした成功事例は世の中にたくさんあります。
だからこそ私は、社長がしっかりゴール・夢を持って、それを幹部の方・社員の方に伝染させていって、それが映像としても共有されることでイチヒャクの実現に近づいていく様子を何度も目の当たりにすることができているのです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
 
(了)

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