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【エグゼクティブの成功マインドを磨くCEOコーチング:シーズン1-4】「過去」と「未来」をつないでいく(後編)

(1)古い記憶を蘇らせても、前には進めない


こんにちは。
エグゼクティブ専門コーチの久野和禎です。
 
ここまで「コーズ」について複数回連載してきましたが、いったんは今回が「コーズ」の最終回になります。
 
「コーズ」という概念を深く理解することに努めてきた私の経験上、「コーズ」は一言二言で答えられるものではありません。10歳の子どもであれば5分で聞き出せるかもしれませんが、コーチングをするなら、いくついくつも質問をしながら、うんうんとお聞きして、少なくとも40歳なら1時間30分、50歳の方なら10年分長いから2時間、60歳の方なら3時間半くらいはかかるかもしれません。
 
その際に注意が必要なのは、1時間「コーズ」について話していただければ、私にとっても、その方にとっても、その方自身への理解は深まりますが、その方の人生は1ミリも前に進まないという点です。
 
もちろん、整理する時間は大切です。ただ、そのときに蘇ってくる記憶はなまなましいものであり、1時間も過去の話をしてしまったら、過去の「自己イメージ」にどっぷりと浸かってしまい、「自分にとって慣れ親しんだ状態」(コンフォートゾーン)を再現してしまうことになります(「コンフォートゾーン」というのは、「CEOコーチング」や「ゴールドビジョン」の中で一番中核的なコンセプトでもありますので、また別の機会にご説明します)。
 
蘇ってくる記憶は、二度とやってこない過去の話です。15歳、16歳の話をたくさん聞いて盛り上がることで、「すっきりした!」「わかってもらえた!」となって、一瞬気持ちいいかもしれません。でも、40歳、50歳、60歳の人の「明日」に役立つかという点では疑問が残ります。「自己イメージ」を高めて、「自分ならできる」ことを理解していく過程に時間を割くべきだと私は考えているので、「過去」にはあまり時間を割かないようにしています。
 
認知科学、脳科学のコンセプトでは、1回起きたことを人は忘れない、その記憶は脳のどこかに格納されていると言われています。つまり、当時の古い脳神経の回路を使って、格納されているものをわざわざ呼び起こしていると考えられるわけです。
 
いま、40歳、50歳、60歳の人が、15歳、16歳のときの脳の回路をわざわざ引っ張り出して、未来のことをやろうとするとどうなるでしょうか。認知科学では、新しく構築した脳の回路を使う割合が下がり、前に進む力が落ちるという説明をします。単純にいえば、「過去のことを思い出すと、前に進まない」ということになります。脳は、過去のことを思い出しながら未来のことを同時にはできないため、未来のことがおろそかになってしまうのです。
 
もっといえば、過去のことを一生懸命考えすぎると、自分に向き合うだけの人になってしまって、未来に進む力が損なわれてしまうことを、私は懸念しているのです。ですから、「コーズ」は重要だけれど、取り扱い方によってはリスクもあるということです。

(2)慌てて探さなくても、ゆっくりと見つければいい


「コーズ」というのは、他のコンセプトと合わせてお話ししないと伝わりづらい部分があるため、本連載でも4回にわたってご説明してきました。
 
そして、「コーズ」は本人にしかわからないだけでなく、本人でもよくわからないことがあるから厄介です。自分なりに振り返ってみてわかっているつもりでいても、実はわかっていないということがあるから難しいのです。自分の本当の姿というのは、玉ねぎの皮のようなものであり、何層にもなっているので、「わかった!」「いや、まだわかっていない……」「そうだったのか!」「いや、まだまだ……」ということを繰り返しながら、だんだん掘り下げていくものだとご理解いただければと思います。
 
でも、その結果として、自分にしかわからない「本当の姿」を理解したときの強さ、説得力はものすごいものがあります。
だから私は、自分のことをしっかりと理解したうえで、弱みを含めた自分の本心をさらけ出せる人に出会うと「すごい!」と感じるのです。
 
最後に私の友人の話をして終わりたいと思います。
40代後半にもかかわらず、彼の身体はとても引き締まっています。40代後半、あるいは50歳を超えてくると、体型を維持するのはだんだんと難しくなってくるものです。基礎代謝が落ちてくるわけですから、これは仕方のないことでもあります。
 
何かの折に、「どうやって維持しているんですか?」と彼に質問したことがあります。「こんな運動をしています」とか「こういうポイントを気をつけています」とか「お酒を飲みすぎると太りますよね」といった話をひとしきりしたあとに、その方は「やっぱりモテたいじゃないですか」とおっしゃいました。
 
その方の名誉のために付け加えると、彼は奥様もお子様もいて、家族をとても大切にされています。ですから、現実的に「モテたい」というよりは、「みんなのお手本になりたい」という意味合いでおっしゃったのです。そういう言葉が普通にさらっと出てくることに「裏表なく、自分の本当の姿を一言に凝縮して話せる人はすごいなあ」と私は感じましたし、そういう方は信頼できるし、安心していろいろとお話しできると思ったものです。
 
なぜ、こんな話をしたかといえば、「コーズ」の話をしなくても、たとえ「体型維持の話」であっても、目指しているもの、その人の原点みたいなものが表現されるようなコミュニケーションができることをお伝えしたかったからです。
実際、彼の場合も、「やっぱりモテたいじゃないですか」というメッセージを発するだけで、私を含めた周囲に、彼の人となりが瞬時に伝わって、誰もが「そうだよね!」となって一緒に楽しめる、心がつながって楽しめるようなコミュニケーションが成立しました。
 
「あなたはなぜそれをやっているのですか」という質問に対して、「そんなこと、一言で説明できないよ」と思うのは当然のことです。30年、40年、50年の人生を一言で説明できるわけがありません。
 
「コーズ」というのは、ストーリーなのです。そしてそれは単純な物語ではなく、いろいろなアップ&ダウンがあって、いろいろな苦労しながら、途中「もうやめようかな。投げ出そうかな」と思ったこともきっとあるはずです。でも、そこを乗り越えていく中で「やっぱり続けていこう」というようなことが繰り返されていくなかで、自分がやりたい理由が強化されていく――。「コーズ」はそういうものなのです。
 
ですから、「自分のコーズは何だろうか」と慌てて探しにいかなくても、仕事をしたり、日常を過ごしていくなかで「自分なりのルーツ、原点を探していこう。見つかったらいいな」というくらい捉えていただけたら無理がなくていいように思います。
 
次回以降は原点に立ち戻って、「夢」「ゴール」の話をしながら、どうやって実現させていくかという話をしていきたいと思います。
 
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回お会いできるのを楽しみにしています。

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