小児施設で学んだ、子どもの意思を尊重することの大切さ
子どもと日々接する時、子どもを子ども扱いしないことを常に意識しています。
「どうせ子どもの言っていることだから… 」と彼らの訴えをなあなあに聞くのではなく、彼らなりに訴えたいことをしっかりと聞くように心がけています。
その様に子ども扱いしない様にするきっかけを色々考えた時、10年以上も前に臨床実習で脳性麻痺の子ども達と接していたことが大きいのかなと思っています。
今回は学生時代に子どもとの関わりから学んだ子ども扱いしないことの大事さに関してを記事にしたいと思います。
実習生泣かせの男の子
僕は理学療法士という資格を持っていて、この資格をとるためには養成学校で数年医療知識の勉強を行う必要があります。そして養成学校では理学療法士の資格を取るために長期実習という臨床実習があります。2ヶ月ほどの間、実際の病院施設に行きそこで患者さんと接しながら臨床のことを学ぶ勉強期間があります。
僕はその臨床実習で小児の療育センターに実習を伺うことになりました。この療育センターには脳性麻痺(出生前後に脳機能に障害が生じ、身体機能に麻痺が生じてしまった障害)を中心に、幼いながらに様々な障害を抱えた子ども達が生活している場所でした。
長期実習において、学生は大抵の場合一人症例をもらい、その症例にリハビリとしてどの様に関わるのかを実習期間中ずっと考えていく形になります。
当時の僕が担当になったのは当時12歳の男の子。その男の子が一筋縄でいかなくて大変だったのです。
その男の子は周囲からも「わがまま」、「その子についた学生は症例としてその子を担当することをみんな諦める」と言われるぐらい全くいうことを聞かない子でした。訓練しようとすると車椅子で逃げていく、気に入らなければ無視を決め込む… 。とにかく一緒に頑張ろうと言っても頑張る気がない。僕も最初関わった時は上記の様にまともな訓練にはならず、無駄に時間ばかり消費していく日々で疲れ切ってしまっていたのを覚えています。
その子の意思を読み取ってみる
僕は必死でやっているつもりだけどなかなか症例の男の子はこっちを向いてくれない… 。どうしたらいいのかを日々考えました。考えている中で、本当に僕はこの子の事を理解しようとしているのかと考える様になりました。
実習ということで、その子を上手く担当できないと実習不合格になることにだけ気にする様になっていたのではないか。彼が何が好きで、何を求めているのか、彼なりの考えを理解しようとしていなかったのではないか… 。いつの間にか実習に受かることだけ優先で考えていて、僕も他の人同様に彼を気難しい子としてしか扱わなくなっているのではないかということをすごく考える様になりました。
まずは相手が子どもで障害者だから大人の道理がわからないと考えるのではなく、その子が何を考えているのかを知り、その子の必要なものと向き合う様にしてみよう。そこからはその子の事を理解する様に意識して接する様にしました。
そのことを意識しながら彼と話をしていると、彼は頭がよく、学生と関わる時間は自分の身にならないと考えていたことがわかりました。確かに彼からしたら短い期間だけ訪れて自分の成績のために訓練を押し付ける学生のことは好きになれないかもしれません。
なので、当時の僕は少しでも彼が僕との時間を楽しんでもらって一緒にいる価値がある人間だと認識してもらおうと考えたのです。
一緒にやる訓練は筋トレの様な機能的な訓練ではなく、遊びを取り入れながら介入を行いました。その時はリハビリの先生として関わるのではなく、一緒に楽しむ様に意識しました。よく車椅子の操作訓練で、男の子が運転する車椅子を全力でダッシュして追いかけ回していたことを覚えています。笑
彼の好きな音楽やテレビ番組はチェックし、訓練中に流したり彼が聞きたいという曲を録音して本人に渡したりもしていました。
彼に何が必要かを考えるために学校生活を見学しに行きましたし、彼が気分でリハビリを拒否したり嫌なことを言ったときには本気で叱ったりと、彼のためになればと当時色々考えながら関わっていきました。
彼からもらったプレゼント
その結果、彼からの拒否もなく最後まで彼を症例として実習を終えることができました。当時指導していたバイザーからも「お前は出来が悪いけどこの子と最後まで実習を過ごせたのは凄い」と褒めているのかよくわからないコメントをいただきました。
そしてお別れするとき、彼は「じゃあね」と素っ気ない感じではありましたが、帰りがけに彼の好きな音楽がいっぱい入ったCDをプレゼントしてくれました。彼からそんなプレゼントがもらえるとは思っていなかったので、少しは彼も楽しく一緒に時間を過ごしてくれたのかなと感じさせてくれました。
この様に10年前まだ僕が学生だった頃に、子どもから、その子を人間として尊重して接することの大事さを学ばせてもらいました。当時は非常に大変でしたが、思い返してみると今の自分の考え方のもとになった経験をさせてくれた、貴重な時間だったと感じています。
あれから10年、彼も20歳を超えているでしょう。もし会うことができたら、彼にありがとうと伝えたいなと持っています。
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