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心を鍛える~堀江貴文、藤田 晋

おつかれさまです。本日は、KADOKAWAから2022年2月17日に出版されました単行本を紹介します。

サイバーエージェントの創業者である藤田晋氏とライブドアの元CEOの堀江貴文氏の共著の1です。

2人は日本のビジネスシーンを牽引し、多様な新しいサービスを生み出してきており、華々しい成功の経験だけではなく、両氏が味わってきた激しい「浮き沈み」が時系列で記されています。

両社の共通点~地方出身、同世代、父は堅実な勤め人
正反対の性質~動と静、熱狂と冷静

そんな2人が変化の激しいこの時代に大切なスキルとして挙げるのは、「ハートの強さ」です。

藤田氏も、冒頭で、ここまでやってこれたのは「ハートの強さの賜物」であると語り、堀江氏はタイプの違う2人の活動はどちらも「心の強さあってこそ」だと結んでいる。
そうしたハートの強さは、努力や意識の持ち方によって、後天的に鍛えられるという。

両氏が当時の心情を交えながら語る人生のストーリーは、物語として楽しめるだけでなく、ハートの強さを鍛え、ビジネスパーソンとして活躍していくための示唆に富む、そして多くの学びがある1冊といえます。

POINT
☑若いうちに自分がハマれる「沼」を見つけて結果を出し、成功験体験を積むことで心は強くなる。
☑決めた目標に向かい、ひたすらに「自分」と戦うこと。そうすれば、ハードワークやつらい精神的負荷も心も鍛える糧となる。
☑不安や迷いが頭から離れないときは自分の思いを公言しよう。自分の「外」に発言することで、自分の心という「内」面をブレさせずにすむ。
☑欲しいものをはっきりさせ、他の重要でないものを捨てよう。そうすることで、残された本当に大切なものを力いっぱい抱きしめることができる。

10代 環境を変えたい人へ

堀江氏~夢中になったパソコンとの出会い

幼少期に周囲から大きな楽しみや喜びを与えてもらった記憶がなく、文化や遊びの欠落した環境で育ったために、外界の情報を貪欲すぎるほど追い求めた。入学祝いで購入してもらった、コンピューターにて「プログラミング」にハマった。
1年が経つ頃にはスキルを向上させ、徐々に複雑なプログラムも構築できるようになり、中2のときに仕事のオファーが舞い込む。
小学校の時に通っていた塾から「パソコンの買い替えに伴う教材の移植」を頼まれ、試行錯誤を重ね、期日内にシステムの移植に成功し報酬を得た。
中2にして初めての成功体験だった。
自分に声をかけてくれる人がいて、作ったシステムに多くの人が喜び、役に立てたこと。これらは本当に大きな収穫だったと振り返っている。
好きなこと報酬を得るという体験を人生の早い段階で済ませることで、自分の感性というセンサーを研ぎ澄ませ、自分がハマれる「沼」的な対象を見つけることがおすすめである。
しかし、パソコンに没頭するあまり学校の成績は急落、将来の展望すら見失ってしまうが、親が納得できる形で家を出られるように東大に向けて受験勉強を始める。
結果的に東大に現役合格を果たした。合格のために自分の状況や配転を踏まえて戦略的に対策を練った経験は、大人になってからも役に立っている。
受験から結果を出すことの重要性を学んでいる。
大人を説得し道を切り拓くには「結果」を出すことが必要である。
人生の節目に訪れる「ここぞ」という瞬間に自分力を出し切るためにも、心を強くすること。そして、そのためには世に溢れる情報をうまくカスタマイズして自分に取り入れることである。

藤田氏~泥臭く粘れるのは若さの特権

若いころから麻雀にハマっていたこともあり、麻雀から学んだ哲学を語っている。18歳のころには競技団体にも通っており、「忍耐力」の重要さを学んでいる。麻雀で他の人と競り合っていると、無理をしてアガろうとしてしまいがちになる。しかし、麻雀はチャンスが来るまで待つという忍耐力を競うゲームである。実社会において最後に生き残るのはやはり忍耐力のある人だ。また「何が起きても自分のせい」というマインドを叩き込まれた。だから、言い訳をしないように心掛けた。
「忍耐力を養うこと」「言い訳をしない」この2つの教えを守り、泥臭く粘ることが心の強化に役立つのは間違いない。

20代 勝負したい人へ

藤田氏~ハードワークは自分の将来に対する先行投資

1997年にインテリジェンスに入社し、毎日終電ギリギリまで残業し、土日や夏休みも返上して猛烈に働いた。しかし、このハードワークは起業に向けての先行投資と位置付けていたので、苦にならなかったと語る。
そして、就職して1年にも満たずに起業のチャンスを得る。常に「目標」を意識し自分に負荷をかけて、「心の筋力」を鍛えていたからこそ、大きなチャンスをものにできたようだ。目標があるときは、「自発的に負荷をかける」ことが重要だ。
1998年にサンバーエージェントを設立し、2000年に上場を果たす。しかし、ネットバブルは崩壊しており、初の株主総会時には上場時の8分の1まで株価は下落し、大荒れとなった。
その後、「3年後に売上高300億円、利益30億円」という中期計画を発表するも、短期の黒字化を求める株主からの批判を受け、プライドはズタズタになっていた。
そんな時に思い至ったのが、自分の個人的な資産が批判的な感情を生んでいるのかもしれないという仮説だ。そこで、役員報酬を全額返上し、保有していた当時の7億円強の株式を全社員に配分した。目的は社員の士気を高めることであったが、予想とは裏腹に、株を受け取るや否や会社を退職する人が続出した。「同士」と信じていた社員たちにも見限られた。
どん底にいたとき心がけていたのは、「心を鍛えるチャンス」と捉えようとしていたということだ。今では「藤田氏はブレない」と言われるほどだ。

堀江氏~親世代の考えを鵜吞みにせず、いい大人とつながろう

「ライブドア事件」のあとに個人で株式を買い取ったインテリジェンスの社長の宇野氏は、堀江氏にとっても大恩人だ。自分の後輩達には「余計な時間をすっ飛ばしてほしい」という思いがあり、これぞいい大人の見本だ。
たいていの大人は若い人から時間や「変わっていこうとするチャンス」を奪おうとする。親世代の思考は、20年以上前の常識から作られたものだ。これからの世間の当事者は若者であり、今を生きたいならば、親の言うことより今の情報と感情を優先すべきである。
心を強く保つには、いい大人と繋がって、その長所や情報を吸収すべきである。いい大人は、若者の実力だけでは出会えない世界や人と繋いでくれる可能性がある。

30代 熱狂したい人へ

藤田氏~人間関係のメンテナンスの大切さ

社員の心を繋ぎとめるための土台作りに着手する。特に大きな影響を与えたのが「長く働く人を奨励しよう」というポリシーだ。
それから、社内の雰囲気が良くなり、退職者がいなくなった。更に、社内恋愛にて次々に結婚するカップルが増えて、社内がより明るくなった。
また、「若手の活躍の場作り」という方針も掲げて、活性化にも注力した。中でも、目標を達成した部署に飲み代と翌日の半休を支給する「社内飲み会」には大きな効果があった。
藤田氏のモットーは堀江氏とは対照的に「事業を自分たちでゼロから創って伸ばす」ことだ。「小が大を呑むような買収では、せっかく育てた企業文化が崩れてしまう」と考えた。
ライブドアがプロ野球に参入しようとしていた2004年頃は、買収を発表するだけで株価が上がる時代であったため、この方針には投資家からは疑問の声が相次いだ。
そこで、「大型買収に踏み切らない理由」を自身のブログに書いて社内外に公言した。目標は他の人に伝えると叶い易くなるという“宣伝効果”を狙ったのだ。やがて、時代に逆らう方針が注目を浴びて、取材が増えていく。
その度に自分の考えを繰り返し伝え、社外の人に明言することで、自分の心をブレがなくなっていった。

堀江氏~塀の中で学んだこと

2006年、証券取引法違反容疑で、逮捕された。「ライブドア事件」で収監された堀江氏は、刑務所生活で「自由とは心の問題だ」と学んだ。
頭の中にまでは誰も手だしができない。獄中でも、思考に没頭している限り、羽が生えたように自由だった。
獄中のストレスのほとんどは人間関係だった。逆に、刑務作業はストレスになるどころか、ストレスを跳ね飛ばすのに役立った。
紙袋を折るという作業を課せられたときは、初日はノルマの50個達成がギリギリだったが、試行錯誤を重ね、3日後には79個もの紙袋を折ることが出来た。「仕事の喜び」とは、こうした能動的なプロセスの中で生まれる。
長野刑務所に移送されてからは介護衛生係として働き、介護士的な仕事を一通りこなせるようになった。最初は積極的にやりたい仕事ではなかったが、自分の成長を実感することは楽しかった。
獄中生活を通して、どんな環境に置かれてもストレスを上手くかわしながら自由な思考で生きる自信を手に入れた。心を不自由にさせるのは、自分自身なのだ。

40代 広く貢献したい人へ

堀江氏~捨てて身軽になることで心は強くなる

「ライブドア事件」で全てを失い、30代の貴重な7年をも一瞬で失うことになった。しかし、そのおかげで「もの」では満たせなかった「自由」を手に入れることができた。〝物理的不要物〟や人間関係などの〝目に見えない不要物〟を捨てた結果、身軽になってストレスも減り、仕事のパフォーマンスがあがった。
一番大切だったのは、「自分の人生の目標を達成すること」であり、「仕事の成果」だった。まるで失われた30代を取り戻すかのように仕事に集中していった。
モノを捨てられない人は「欲しいものがはっきりわかっていないから」ではないか。本当に欲しいものがはっきりしていれば、なんだって捨てられる。

藤田氏~自分のタイミングで勝負してはいけない

麻雀は知名度の高さとは裏腹に、イメージが悪いせいかスポンサーがつかず、プロでも麻雀だけで食べていける人はわずかである。そんな状況に一石を投じようと考えた。
プロリーグの「Mリーグ」を立ち上げて、試合の模様をABEMAで無料放送している。成功の理由は、参入の時期がベストであったことが挙げられる。
スマホやWi-Fiなどの環境面の変化が進んだことによって、ABEMAで高画質な麻雀番組を提供できた。もし参入タイミングを間違っていたら、ブームを生み出すことできなかっただろう。
麻雀において「自分のタイミングで勝負してはいけない」という教訓があるが、これは経営においても同じことだ。自分たちの事情ではなく、周囲の環境が整ったタイミングで勝負しなければ結果は出ない。
自分のタイミングで無理な勝負に出たくなる思いを抑えられるかどうか。
それが「心の強さ」そのものである。

終わりに

両社のエピソードはとても濃厚なものであり、正反対の2人の波瀾万丈なストーリーは必読ものです。
2人の採る経営戦略は真逆であり、共に「相手の様なことは自分には出来ない」と感じている。
ただ、これだけ正反対の2人でも「心の強さ」では、多くの共通点を持っていると言える。
この書籍を通して、2人の織り成す人生哲学を感じてみてはいかがでしょうか?




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