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のこぎり崖、ハクソー・リッジ

2017年度アカデミー賞に輝いた、第二次世界大戦末期の沖縄戦を舞台にした実話である。監督は「マッドマックス」シリーズのメル・ギブソン。
沖縄県浦添市の前田高地を舞台にしたもので、壮絶な激戦の様子が描かれている。

あらすじ
主人公デズモンド・ドスは第二次世界大戦が激化する中、陸軍に志願する。ただ普通の志願兵とは違う主張をする。「衛生兵として人を救うために志願した、生涯武器には触らない。」訓練の際も頑として銃をとらず軍法会議にまでかけられてしまう。思いがけない助けを得て彼の主張は認められるが、アメリカ軍が史上最大の苦戦を強いられている激戦地、沖縄の「ハクソー・リッジ」に派遣される。
そこでも彼は頑固に武器を持たず戦場を駆けずり回り、衛生兵として75人もの同僚を助け出した。そう、人の命を救うことにより、彼は戦っていたのである。このデズモンド・ドスは実在の人物で、退役後、良心的兵役拒否者として名誉勲章が授与されている。

ストーリーはアメリカ人の好きな、少し変わった英雄伝であるが、とにかく戦闘の表現が凄惨で地獄絵図であり、ドンパチが好きな私でも目をそむけたくなるようなものであった。「ランボー」シリーズと似たところがあるが、「ハクソー・リッジ」は現実であるところに背筋が凍るようなシーンの連続と感じたのかもしれない。

もう一点興味深かったのが、当時のアメリカが敵国である日本をどのように見ていたのかが透けて見えるところである。
「冷酷」
戦場が少し落ち着いてから日本兵が、倒れたアメリカ兵に刀剣でとどめをさしに回るシーンがある。この時の日本兵の顔つきはまさに狂気である。
主人公ドスは、死んだ同胞の下に隠れて難を逃れる。
「狡猾」
戦いの趨勢が見え始めた時、白旗を上げた日本兵が数人、土豪から両手を上げて出てくる。遠巻きに取り囲むアメリカ兵。だが凝視すると日本兵の手には手りゅう弾。「いまだ!」の掛け声を合図に自爆。戦場の最低限のしきたりを守るアメリカ兵と卑怯な日本兵。
「洗脳」
土豪から大勢の日本兵。人数・火力からみて、明らかに玉砕のために飛び出してきている。口々に「テンノウヘイカバンザイ~」。最初は何を叫んでいるのかわからなかった。ああ~アメリカ人にはこういう風に聞こえるのか。
納得。
「残虐」
最後の最後、日本の司令官が割腹する。短刀を腹に突き刺した瞬間に介錯。
頭がゴロゴロ。アメリカ人なら、こめかみに銃口を向けて。。。であろう。

「冷酷」「狡猾」「洗脳」「残虐」。
このキーワードが「ハクソー・リッジ」すなわちメル・ギブソンの日本軍像だったのであろう。
逆に日本人が同じテーマ、コンセプトで映画を作ればどうだったであろう。
沖縄県の方々にとっては彼らは「赤鬼」だったのではないか?
戦勝国だからこんな映画にアカデミー賞を与えることができるのだろうか。
現代のアメリカは大好きだが、少し悲しい気持ちにもなった。

次に沖縄に旅することが出きれば、前田高地に行ってみようと思う。
きっと、絶景で素晴らしい場所と期待したい。

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