福井県知事の主張に賛成
これまでエネルギー・原子力政策にさまざまなコラムで触れてきました。
要約すると次の通りです。
①再生可能エネルギーのうち太陽光発電だけみても、30%を維持しようと 思えば、必要基数6300万基、必要面積1890㎢(大阪府と同じ)、
必要費用94兆5000憶円。いったい誰が負担するのか。
電力会社が負担すれば、現行の制度ではすべて電力料金に上乗せ。
②カーボンニュートラルの議論に関して、原子力を続けるのか止めるのかを対立軸にした議論はナンセンス。原子力を続けるのか経済規模の縮小を考えるかの議論であるべき。GDP中位の国も幸せに暮らせている。
③技術的な妥当性と、福島事故の精神的なダメージを考えると「高性能で小型の加圧水型軽水炉(PWR)のリプレース」を検討すべき。
④40年を経過したプラントはカーボンニュートラルの議論とは無関係。
至近の電力ピークを乗り切るだけのこと。
⑤原子力規制委員会は技術的観点の評価のみ。どんな発電所が運転されているかを評価するが、誰が運転しているかは興味も権限もない。
福島事故や電力会社の数々の不祥事を知ると、実はここが大問題で、大幅な電力システム改革が必要。
⑥上記のような状況をデータに基づきすべて公開した上で、更に政府の目標を堂々と開示し、開かれた議論をすべき。
いろいろな意味で「覚悟あるエネルギー政策」が必要。
ご興味のある方は再度お読みください。
最近の議論
ここ1~2週間の間で、上記①~⑥に関連する議論が報道されています。
・膨大な再生可能エネルギーへの投資をどうするのか。電気料金の高騰をどうおさえるのか。産業界から懸念の声が噴出しています。当然です。
だが経済産業省は「既存の原発の再稼働を進めることが重要で、現時点では新増設、リプレースは想定していない」ということ。自民党の調査会でようやく新増設を求める案がでましたが、これが「覚悟あるエネルギー政策」と言えるでしょうか。
・河野規制改革大臣はインタビューで、以下のようにコメントしています。
「電力業界の改革が遅れている。日本は発送電分離が中途半端。昨冬の卸売電力価格の高騰をみても市場の整備が遅れている。総理肝いりのカーボンニュートラルのいろいろな議論が閣内で行われる。内閣全体の課題として、ここに任せるとか、うちは関わらない、とはならないはず。
少なくとも私は規制改革の面で、やらなければならないと思っている。」
頑張れ!河野太郎。
・今夏、来冬の電力ピーク対策として、経済産業省は休止火力の稼働要請を行いました。東京電力管内が一番厳しく、予備力率がマイナスとのこと。
定年退職した化石燃料発電所に老体にムチ打てということです。かたやゼロカーボンとかいいながら。。。40年経過の原子力の時限稼働でもした方がよっぽどましなような気がします。
最後に、先日の朝日新聞の記事に杉本福井県知事のコメントがありました。
私の思いを代弁していただいているようでした。珠玉でした。
「原発の立地を消費地が批判する状況はとても残念です。原発の安全性や必要性、重要性への国民の理解をもっと進めるよう国と事業者には求めたい。『原発があると危ない』という意識を持つならば、原発の電力が必要なのかそうではないのか、必要ならば誰がそれを担っているのかをよく考えて議論していただくことが大事。再生可能エネルギーだけで日本中の電力を賄えるなら良いが、現状はそう簡単ではない。
カーボンニュートラルを念頭に置くのならば、原発は無くなっていくのか、それとも一定数は維持されるのか、国は明らかにする必要があると思う。
時間のかかる新増設やリプレースも明確にしておくべきだと国に申し上げている。そこが不透明だと、技術開発も人材育成も進まず、結果として安全性が脅かされる。立地県として非常に危惧している。」
国や電力業界より自治体の首長のほうが「覚悟あるエネルギー政策」をお考えなのかもしれない。
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