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ロッキー不在でまさかの平凡なスピンオフに【映画「クリード 過去の逆襲」】

過去2作のクリードシリーズ

ロッキーのライバルであり盟友であったアポロクリード。彼の血を受け継いだ息子アドニスクリードを主人公に据えたロッキースピンオフ映画シリーズ。

一作目「チャンプを継ぐ男」でクリードはプロボクサーとして生きるためそれまでの独学ではなく、ロッキーを師事し次世代のチャンピオンとして地位を作ることに成功する。

一時はボクシング界から完全に身を引いていたロッキーがトレーナーとして返り咲き、リングではセコンドとして過去に辿った魂をクリードに継承していく。

高齢による哀愁は感じさせながらもかつてミッキーから受け継いだ時間をクリードに継承していく姿はロッキーシリーズを見ているほど熱くなる。

2作目「炎の宿敵」ではロッキー4で対峙した露のボクサードラゴの息子が挑戦者としてクリードと対決する。

ロッキーだけでなくクリード家にも因縁のある相手であるが、ドラゴ家側にもロッキーとの対戦後に波乱が起きていたことも新たに描かれている。

こちらもロッキーファンにも強く向けた物語構成でクリードから入った人は途中から置いてけぼりになる人も多かったかもしれない。

基盤となったロッキー4では政治工作の色が強いステレオタイプなドラマ構成でストーリーはつまらなかったが、クリードでは政治色は全て払いのけ、ロッキー含むキャラクターだけの因縁に焦点を当てられていたのも良かった。

ドラゴに勝ったクリードを見届けたロッキーは「これからはお前の時代だ」とリングを後にし、ファイナル以来となる息子の家族の元へ再会し終わっていく。

クリード 過去の逆襲

あらすじ
ボクシングの世界を制したアドニス・クリードは、キャリアも家庭も順調な生活を送っていた。しかし、失うものが何もなく貪欲になった昔の友人が現れ、自分の未来をかけて戦うことになる。

クリードとしてキャラクターを自立させるための作品だったと言われれば理解はできるが、月並みなボクシング映画に終わった。

今作からロッキーは急な不在となり、クリード自身もプレーヤーからは退きジム経営とマネージャーの立場に変わってしまっている。

裏でスタローンと制作側に関する諸事情による今作ではありながらも、物語上そこにいたる過程がすっとばされて困惑する。

ロッキーではそうだったがせめてそこに至るハイライトぐらいつける方が親切だった。

ロッキーとクリードの師弟話があっさり解消されてしまったことで、クリードの過去に焦点をあてたキャラの奥行きを見せるための話になっていく。

順風満帆で暮らすクリードの前に過去のわだかまりであった昔の兄弟分が出所し再会することになる。

元々ボクサーだった彼が復帰からタイトルマッチまでの挑戦権を支援していくが裏切られ、過去のわだかまりの因縁と共にクリードはボクサーに復帰し戦っていく。

正直この過去のわだかまりについても話が薄く、兄弟分も中途半端にいいやつとして描かれているために最後の二人のマッチは気持ちが乗ってこない。

過去作まで正直ロッキー在りきでクリードを見ているために、過去を描くなら強烈な出来事にないとクリードに感情が向いてこないのだが、ボクサー映画としてもかなりありきたりな話に終始しているのは残念だった。

また対戦相手の対立軸も弱く描くならもう少し胸糞悪い悪役に見せてほしかったところもある。

トレーニングシーンもやはりロッキー不在の穴は大きく魅力は薄かった。代わりに大事なキャラであるドラゴが練習相手として雑に扱われていたがあれでいいのだろうか。

ここまで制作に携わっていたスタローンは一応プロデューサーとしては今作はクレジットされていたが、ストーリーや演出は関わっているとは思えない凡作映画だったと思う。

ロッキーの不在はあらゆる面で影響が大きく感じてしまう今作だった。


ロッキー不在の理由

物語上二作目のラストがロッキー退場の伏線にはなっていたのだろうが、裏では大人の都合が絡んでいる話もある。

スタローン自身「クリード」二作制作過程で自らが監督脚本してきたロッキーの所有権を未だ持っていないことを強く訴えていたが叶わず、そのまま降板したとも考えられる。

それを踏まえるとクリード自身の急展開な暮らしぶりとテーマ変更の経緯としてはうなずける。

ただ今作を見るとこのシリーズにおけるロッキーに関わる血縁と師弟関係の要素は欠かせなかったといえる。

ラストシーンではクリードから娘に継承していく伏線が見られたが、続編は早くもクリードが継承する話にしたいのだろう。

正直今作でクリード個人の奥行きが弱かったゆえにそそられてこないが、泥沼化する前にきれいに閉じられていくことだけを願う。




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