これから親になる全ての人へ 〜一生の後悔を背負う前に〜
2020年6月4日、娘が産まれました。
田上千紗(ちさ)と言います。
『常位胎盤早期剥離』という赤ちゃんがまだお腹の中にいる時に母親の胎盤が剥がれてしまい、母子ともに危険な状態になってしまう症状の中で産まれてきました。
緊急帝王切開でした。
この『常位胎盤早期剥離』は赤ちゃんの『低酸素性虚血性脳症』を引き起こすリスクが非常に高いと言われています。難しい病名ですが、つまりは、赤ちゃんの脳に障がいを負うリスクが高い症状です。
私の場合はたまたま、運良く、娘に脳障害が残らず済みました。
今回この記事を書こうと思いたったのは、これから出産を控える、もしくは将来的に親になる可能性のある人が、もし同じような境遇に立った時、後悔のない選択をして欲しいからです。
結論を先に言いますと、
◆予定日の近い妻が、些細なことでも違和感を口にしている場合は何にかえてでも側にいること
◆何か起こった場合、スピードが命であること。
この2点をどうか心にとめておいて下さい。
それでは6月4日、出産日当日の経緯を書きたいと思います。
前提としては、もともと6月14日が予定日と言われており、10日も早い日だったので、当初の危機感としてはだいぶ薄かったという前提です。
6月4日、午前7:00
妻が起床し、夜中からお腹にハリがあると話す。
妊娠している妻をもつ人からするとハリがあると言うのは決して珍しいことではなく、予定日より10日も前だったのでそこまで大したことではないだろうと思っていた。
妻がいつもと違い定期的に痛みを伴っていることを話す。
この時点で違和感を感じ、いつもは近くのファミレスやカフェで仕事をしていたが、ファミレスに行くか迷う。
結局、妻のいつもと違う発言が気になり、ファミレスには行かず家で仕事をすることに。
↑今思うとこの決断が無ければ一生後悔したことになる。
午前9:00
妻がやはり定期間隔で痛みを感じると話し、病院に電話すべきか相談してくる。
この時の妻の気持ちとしては、どうせ相談してもとりあえず病院にきてくださいと言われるだけだから、あまり電話したくないと言う気持ちがあったらしい。
私から、病院に行くか行かないか、どういった判断基準で決断を下せばよいか病院に電話して相談すべき、と助言した。
午前10:00
妻は基本ベッドの上で過ごしていたのだが、時々トイレに立った。その際に腰回りの痛みを訴える。
私は、病院に連れて行くことも考えこの時点で外出準備を済ます。
午前11:00
やはり、お腹の痛みと腰回りの痛みがひどくなってきたと言うことで、掛かりつけの産婦人科に電話をすることに。
妻が産婦人科の人と話している時に、突然出血。ベッドが一瞬で血の海に。
急いで妻にタオルを渡し、電話を代わり医師と話つつ、妻をトイレへ連れていく。医師から急いでタクシーを呼び病院へ来るように指示を受け、一旦電話を切る。
トイレに座っている妻の顔はみるみる白くなっていき、貧血で意識が朦朧となっていることがわかった。
事前に登録していた妊婦タクシーに電話をし、急いで迎えに来るよう依頼。その間に妻の着替え、入院用の外出準備等を済ませ、妻をサポートしながら外出準備を整える。
タクシーが到着(電話をしてから7分くらいだったと思う)。妻に靴をはかせ私は荷物をもって家の外へ。家は一階ではないので階段は私が先に降り、妻が気を失っても受け止められるように配慮。
タクシーの後部座席にタオルと、ゴミ袋をビニールシートがわりに敷き妻をその上に寝かせて病院に向け出発(寝かせるのは病院からの指示)
タクシーで15分前後で病院に到着。
タクシーのところまで看護師さんを呼び妻を受け渡すとともに、必要な荷物を渡す。(コロナ対応のため、夫である私も院内に入ることはできず。)
12:10
もう一度念を押すと、まだこの時点でも私は、出血はあったけど、きっとこういうことはあるっちゃあるケースなんだろうな、くらいの認識だった。
そのため、看護師さん達お産のプロに妻を引き渡したことで、『もう大丈夫だ』と安心していた。
妻を引き渡した後、看護師の方が、今から診察して場合によってはそのまま出産になるかもだけど、とりあえず1時間〜2時間後に医師から状況の説明があると思うので、電話でお呼びしますと言われた。
私からは、病院の近くで時間を潰しておくことを伝えその場を去った。
お昼時だったので、昼飯でも食べようかと思ったが、何かあった時にすぐ動けるように近くのコンビニで立ち読みすることにした。
↑この時の判断も今考えると本当によかった。
20分〜30分後、病院から突如電話があり、『子宮口の開きに比べて、出血がひどく、胎児の心拍が弱っているため大きな病院に搬送します』と言われた。
このあたりから、本当にヤバい状況なのかもしれないという認識に変わってきた。出産は命がけと言われていても、本当に妻や子どもが死ぬかもしれない状況に直面するなんて、思ってもみなかった。
急激に膨らんでくる恐怖心を胸に、急いでコンビニを出て病院へ到着。数分後に救急車が到着し、近くの大きな産科の病院に搬送することに。救急車に乗り約7分くらいで受け入れ先の病院に到着。
ストレッチャーで二階に運ばれ、エレベーターがのドアが開くと医師・看護師10人前後が受け入れ態勢万全で待ってくれており、その中でもおそらく偉いであろう人が私に向かって、『緊急を要するので書類などの手続きは後にします。とにかく急ぎます』と。
私に選択肢などなく、よろしくお願いします、とだけ伝え妻は手術室に入っていった。
妻が手術室に入っていった後、私は看護師さんから必要書類の説明を受けつつ手続き関連を済ませていき、妻の母親に連絡をとり、必要な人たちへの連絡を済ませていった。
13:30
妻が手術室に入って1時間も経たない内に、呼ばれた。
手術室から赤ちゃんだけが透明な箱に入って出てきた。口には管が通され、呼吸は管理されている状態だったけど、両目を開いていて元気そうだった。
その箱に付き添っていた医師から、『生まれた時は、すぐに泣かずに心配しましたがすぐに蘇生できたので、今は呼吸器をつけてますが本当はいらないくらい元気ですよ』と言われ少し安心した。
赤ちゃんはそのまま集中治療室に運ばれていった。
14:30
個室で手術の終わった妻と対面。ベッドに横になっていた妻は割と元気そうだった。『展開が早過ぎて、なんでここにいるのかよく分かっていない』と言っていた。
医師が部屋に入ってきて、手術の説明をしてくれた。そこで初めて『常位胎盤早期剥離』という病名を聞いた。一刻も早く子宮外に出して酸素を供給することが重要だったため、緊急の手術を行ったとのことだった。
また妻は出血量が多く、輸血が必要な旨も説明され同意書にサインをした。
この『常位胎盤早期剥離』は母子ともに非常に危険な状態に陥りやすいものだと言われ、医師や看護師から折に触れて命に別状がなくてよかったと言われたことからもその深刻さが伺えた。
15:30
集中治療室で赤ちゃんに対面できるとのことで、私一人で集中治療室に向かった。入念に手洗いを済ませ、まずは個室に通される。そこで、先ほど娘が入った箱を運んでいった医師と看護師の方から今の赤ちゃんの状態について説明を受けた。
内容は、『常位胎盤早期剥離』は赤ちゃんがお母さんのお腹の中で低酸素の状態にいた、つまり『低酸素性虚血性脳症』になるリスクが極めて高く、脳にダメージをおっている可能性があるというものだった。
お腹から取り出してすぐに泣かなかったこと、肌の白さ、手足がだらんとしていたことから低酸素の状態だったことは間違いなく、集中治療室で経過をみていくと説明された。
脳にダメージをおった赤ちゃんは産後6時間から12時間の間に痙攣を起こすことがあるらしく、その場合は痙攣を抑える薬を使うと言うことも同時に説明された。
あらかたの説明が終わり、その後看護師さんに集中治療室に案内され産まれたばかりの娘と会い、妻の待つ病室へと帰った。
17:00
妻を病室に残し、家に帰った。
家に帰ると、家中血だらけだった。改めて、出産というものがいかに命がけのものなのかを実感した。
もしも、今朝仕事をしに近くのファミレスやカフェに行っていたらどうなっていただろう?
もしも、妻が出血後にトイレの中で失神していたらどうなっていただろう?
妻・赤ちゃんともに命があったかすら分からない。
家の片付けをしつつ、ずっとそんな問いが頭の中を巡っていた。それと同時に電話がずっと気になっていた。
赤ちゃんに痙攣が起きれば連絡が来るだろうし、最悪の場合も考えられる。夜ベッドに入ってからも電話が気になり、全く寝付けなかった。
後日
結局、病院からの電話はなく、その後の経過は順調で、先生からは今回の『常位胎盤早期剥離』を原因として脳に障害をおっている確率は極めて低いと考えていいでしょうと言ってもらった。
今回は、幸いなことに常位胎盤早期剥離が起こってからそんなに時間が経っていなかったこと、また常位胎盤早期剥離はその判断が難しく、処置が遅れるケースがほとんどらしいが、最初に妻を運んだかかりつけの産院の先生の迅速な判断のおかげで、かなり軽度な状態で赤ちゃんを取り出せたことが大きいらしかった。
正に運がよかっただけである。
上述したが、ことの重大さに気づいたのは娘が集中治療室に入り、先生から説明を受けた時だった。それまでどこかで命の心配や娘に一生涯残る障がいを負うかもしれないなどと考えてもみなかった。
まとめ
今回こうして記事を書いたのは、同じようなケースで後悔をする人が一人でも少なくなればいいなと思い筆をとることにした。
これから出産を控えている、もしくは将来親になる可能性のある人は是非以下の点を肝に命じてほしい。
◆予定日の近い妻が、些細なことでも違和感を口にしている場合は何に変えてでも側にいること
◆何か起こった場合、スピードが命であること。
お産は、本当に命掛けの行為であり、子どもの一生を左右しかねない状態に本当になるのだと。仕事は大事だが、妻や我が子の一生を棒に振ってまで取り組むものなどないはずだ。
ぜひ、今回の私の体験をケーススタディーとして後悔しない選択をしていただきたい。
昨日、6月12日、娘の千紗が退院し、我が家へ帰ってきました。
こうして、みんな生きて、健康で、家族写真を笑顔で撮ることができて本当によかった!
これから3人家族になった田上家をよろしくお願いします!
娘のためにも仕事頑張るぞー!!
終わり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?