廃棄物再生と分析
こんにちはかず波です
今回は、廃棄物再生時における分析の有用性を、具体的な事例を用いて説明したいと思います。
粉体廃棄物の再生利用技術開発での話
有害物質を含む粉体廃棄物の再生技術開発時に用いた分析法を説明します
廃棄物由来の再生品(地盤材料、骨材などに再利用)では、水に接した時の有害物質(フッ素、六価クロム、他金属類、など)の溶出量を基準値以下にする必要があります
既存の再生法としては、原料となる廃棄物(灰、汚泥など)をセメント等により固化する事で有害物質を不溶化したのち、骨材などに利用する方法が一般的です
一方、その方法では処理品のpH(酸性、アルカリ性の指標)が高くなり(アルカリ化し)、再利用時の環境影響が問題となり、用途が限定されていました
対策として単に酸を添加してpHを下げた場合、固定されていた有害物質が溶解し、溶出量が増加する等再生品として求められる機能(機械的強度、有害物質溶出特性など)を保つことができません
よって、pHを低くしても有害物質の溶出等の諸機能を満足できる方法が開発出来れば、再生品としての用途が広がることになります
さらに現実的な条件として、処理工程はシンプルで、かつ安定性・再現性が高くかつ低コストである必要があります
これらを満足できるものとして検討を行い、ある添加剤(酸性物質)を加える手法が有効であることを見出しました
SEM(走査電子顕微鏡)
その際に有効な評価法のひとつだった、SEM(走査電子顕微鏡)について紹介したいと思います
この分析法は、視覚的に現象を理解できるものとしても非常に有効で、実験データ解析で予想された現象(反応機構)の生起確認だけでなく、数字だけで伝わりにくい関係者への説明・理解に大きな効果を得ることが出来ました
この観察では、対象物の
① 表面形状
② 物質(元素)の分布
などに関する情報を得ることができます
①表面形状
今回有効だった添加剤を入れる前後の表面観察写真(二次電子像)です
右が添加前、左が添加後、下段に倍率を示します
これらの結果からは、
添加剤との反応物がバインダーとして、バルク(添加剤以外の主成分)表面を覆い(×1000)、粒子間を接合し団粒化(×30,×100)したと考えられました
こうした考察を導きだせたのは、観察像という結果だけでなく、分析条件の最適化をはかる過程で、試料の性質に関する情報をある程度把握出来ていたからです
例えば今回の試料は絶縁物で、SEM観察の際、電子による帯電(チャージアップといいます)が生じて、像が乱れてしまいます
それを防止するために金属コーティングを行い、試料に導電性をもたせてから観察を行います
今回、二つの試料は同じ条件でコーティングしたのち観察しましたが、明らかに添加前のものはチャージアップし易く高倍率での観察に支障がありました
原因としては、試料に細孔が多いためにコーティング剤が深さ方向まで入りきらない部分でチャージアップが起きたと考えられました
これは、表面からみた細孔の程度が違う、つまり比表面積が異なる事を意味しており、今回の処理により水と接触する面積が小さくなり、有害物質溶出抑制に有利に働く可能性が考えられました
以上のように分析では、その結果だけでなく、その過程で得られる情報も含めて対象物の真の姿に近づく事が出来ます
その結果、対象物に対する理解が深まり、より的確な再生処理の選択につながると考えています
《 記事には続きがあります。そちらもよろしくお願いします 》
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