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関西↔関東0泊2日の車中泊旅をして十数年振りに仲間に会った話【エッセイ】

友達の美樹から連絡が来た。

「かずさ、金曜日の夜11時に迎えに来て」

えっ?いやいや、出発は昼間でしょ?

そう言ったら、

「私、仕事あるし、運転は2人で交代するから大丈夫だよ」

と言った。

渋々だけど了承した。

でもまあいいか。深く考えない。きっと楽しいドライブ旅になる。

十数年ぶりに会う仲間もいる。

そう考えることにした。

行きは私が運転をした。助手席にいる美樹は、仕事の疲れのため眠り始めた。

静かになる車内、久しぶりの高速道路での長距離運転に心躍る。

かすかに聞こえてくるエンジン音。周りを一緒に走る物流トラックと暗闇のトンネルに吸い込まれていく。

楽しい。この静寂が心地よい。夜中の2時だけど、昼間二時間仮眠したので眠くない。もう少しの間、孤独に運転を続けたいと思った。

「かずさ、そろそろ運転代わるよ。休んだ方がいい」

静寂な時間が終わった。

パーキングエリアで休憩をして、美樹に運転を変え出発した。

気がつくと空は白んでいた。いつの間にか眠っていたんだ。

「もう少しで到着するから。昔の仲間に会えるよ。連絡入れとくから」

美樹ありがとう。

昔のキャンプ仲間には、男女問わずたくさんの人がいた。

いじめで不登校になっていた私。十代のほとんどは引きこもりをしていた。でも今は違う。キャンプ仲間のおかげで自分を変えることが出来た。初めて友達が出来た。

でも仲の良かった人もいれば、仲違いした人もいる。あの時はみんな一生懸命生きていた。今までの十数年みんなどんな人生を送ってきたのだろう?彼らのことを懐かしく思い出す。

「かずさー」

待ち合わせ場所に向かうと、遠くで何人かが手を振っている。

泣きそうになりながら手を振り返した。

「兄いー、うー太、ともー」

ごめん、あの時は素直になれなかった。みんなに会いたかった。いくつになっても仲間なんだね。

美樹が私の腕をつかみ、早足に仲間の元へ向かう。

みんなありがとう。今までごめん。

「かずさに会えて本当に嬉しいよ」

みんな口々に言ってくれる。

縁が切れたと思っていたけど、縁は余程の事がない限り切れないようだ。細い糸、蜘蛛の糸のようにかすかに繋がっていた。人が縁と縁を繋ぎ、時には人が間に入り縁を強くしてくれる。

今回は美樹がその役目になった。美樹が私を昔の仲間の元に連れ出してくれた。

仲間の話しを聞いていたら、みんな懸命に生きていたんだと思った。今まで受けた苦労と喜び。幸せって何だろうと疑問が湧いてきた。でも足を知ってると誰かが言った。

「周りがなんと思おうと、自分が幸せと思うなら幸せ。それでいい」

十数年という時間が、個々の人生に深みを与えた。人生の時間って長い、そして人生って奥深いと感じる。

またいつか仲間に会えたら嬉しいと美樹に伝えた。

「かずさ、また会えるよ必ずね」

美樹の言葉に安堵して、うなずいた。