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Wizardry と UCSD-PASCAL

Apple][には、当初からスタートレックやスターウォーズをはじめ、優れたゲームがたくさん用意されていました。ゲームセンターでしか出来なかったアーケードゲームと、ほぼ同じものが自宅で楽しめるのですから、人によってはそれだけでも元がとれるでしょう。

アーケードゲームには、一定時間ごとにコインを入れるという行為が必要になるので、どうしても、それが制約になります。パソコンですから、もっとじっくりとゲームがやりたいと考える人も少なくありませんでした。チェスなど古くからあるゲームも出てきましたが、テーブルゲームとして流行っていたロールプレイングゲーム(RPG)というジャンルのゲームがパソコンの世界に殴り込んできました。

代表的なものがウィザードリィとアルティマです。当時のパソコンには通信機能がありませんから、プレイヤーは一人しかできませんが、仲間という概念でパーティというグループでゲームを進めるというのは共通でした。これらのゲームは大人気となり、その後のゲームの世界での新しいジャンルを切り開きました。

ウィザードリィは、マス目状にレイアウトされた10階層ほどあるダンジョンを、モンスターと戦いながら経験値と宝物を集め、レベルを上げることで、より強いモンスターに勝てるようになり、最終的にボスキャラを倒すというゲームです。

ウィザードリィ

ウィザードリィ 狂王の試練場(ウィザードリィ1作目)

基本的にはD&Dと呼ばれるテーブルゲームの世界をパソコンでプレイできる形に整えたものです。今までのゲームのように必勝法というものが決まっているわけではなく、プレイヤーごとに好きなプレイスタイルで進めていけるのが特徴です。

このゲームにはかなりハマって、ダンジョンのマップはほぼ記憶してしまったくらいなのです。ボスキャラを倒しても、新たなプレイスタイルを試みて、何度でも楽しめました。今となれば類似のゲームはたくさんあるので、当たり前であるかもしれませんが、当時はとても斬新なものでした。もっともグラフィックスは比較的、地味で、ひとつの動作毎にコマンドを打ち込むというリアルテイム性も無いスタイルなので、その意味でも異彩を放っていました。今でもわざわざエミュレータを用意してプレイする人もいるようです。

ゲームの解説をすると際限が無いので、以下のサイトで雰囲気を感じてください。

Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord

Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord (Apple II) (1981) (Sir-Tech)

ところでプレイしていると、どうもApple][らしくない何かが感じられます。ところどころDOSでは見かけない、どこかで見たことがあるメッセージが出てきたりします。そうです、これは

Language System と UCSD-PASCAL

で説明したUCSD-PASCALで開発されていたのです。出来上がったプログラムを動かすのには拡張カードはいりません。DOSではエラーになってしまうフロッピーもUCSD-PASCAL環境でユーザディスクをドライブに入れると、あら不思議、ファイルがあるではないですか。ファイルの中身の構造はわからないものの、PASCAL形式のファイルであることさえ、わかってしまえば、DOSからでも変換ツールでバイナリファイルに直して、バイナリエディタで中身を眺めることが出来ます。基本的には固定長ブロックのランダムファイルなので、ASCIIの部分や、プレイするたびに変化する部分を抽出することで経験値やレベルの場所が見えてきます。

なかなか楽しめたのが、マスターになるデータファイルには、開発中に使われたと思われるゴミデータが残ってしまっており、そこには開発中に仮のデータとして使われたのではないかと思われるモンスターの名前が散見されました。プログラマはD&Dの世界に馴染んでいたわけではないので、プログラマにとって馴染みのある「ラッチ」であるとか「ニブル」といったモンスターと戦っていたみたいです。

これで調べた構造を元にPASCALでパラメタを編集するソフトを書いたのですが、ファイルにあるデータは、都度、範囲チェックを行っていたわけでは無かったようで、あまり派手に値を変えると、ラップアラウンドして却って弱くなってしまったり、意味不明の動作になってしまうこともママありました。何事も程々にです。

後に日本での開発元である会社の方とお知り合いになる機会があり、デバッグで使っていた最強のパーティのデータを、こっそり使わせて頂くことが出来たのですが、なる程、ソースコードをお持ちの方のデータですから、きちんと強くなりました。

オリジナルの開発者であるアンドリュー・グリーンバーグ氏とも、お話することは叶いませんでしたが、眺めることは出来て、このお兄ちゃんが作ったんだ、なるほどWerdnaは、そういうことなのね。と理解した次第です。

このシリーズも3までは、しっかりプレイしたのですが、世界観に追いつくのが大変で、ゲーム中にクイズみたいなものがあるのですが、日本人には馴染みのない問いなので、調べるのが大変でした。しかし種族に侍であるとか忍者が出てくるあたり、開発者も、なかなか日本がお好きなようでしたね。

ウィザードリィに熱狂した人々については、当時の雑誌、特に遊撃手なんかに詳しく書かれていますので、そのあたりを思い出してまとめでも書いてみたいとは思っています。


ヘッダ写真は、以下から使わせていただきました。権利関係が整理されていないようで、Apple版のデータで使えるものが見つからなかったので、他のパソコンの画像。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Maze_representation_using_wireframes_2022-01-10.gif


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