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「雑に作る」を雑に読んでみた

今まで本については書いてこなかったのですが、それは老眼がつらくてあまり本を読んでいなかっただけです。もちろんキンドルも使いますが、こちらはあまり長いものはどうも向いていない感じです。パラパラとメクレないからですかね。

動物の表紙で有名なオライリー・ジャパンから「雑に作る」という本が先日のMakerFaireTokyo2023で先行販売されました。実は初日で売り切れていたそうで、書いそびれたかと思っていたら、オライリーのスタッフが日曜であるにも関わらず、倉庫まで追加分を取りに行ってくれたそうで、なんとか入手することができました。

著者はヘボコンで有名なデイリーポータルZの石川大樹さん、光り物なら任せろのギャル電さん、そして無駄こそ命の藤原麻里菜さんの共著です。

誰しも欲しいモノを作ってみようと思い立つことはあるかもしれませんが、どうして作ってみないかと言うと、面倒くさいというよりは、どうやって作るのかがわからないという方が多いのではないでしょうか。作るという行為も学習が必要なので、方法を学んで手を動かしてみないことには、いつまでも作れるようにはなりません。だからと言って、大抵のものはそんなに難しいものではなく、ネットで調べてやってみれば、思いの外、簡単に出来たりするものです。

そうやって作る時に大切なことは、いきなりちゃんとしたものを作ろうとしないことです。だいたい最初はうまく作れるかもわかりません。作ってみたものの使えないかもしれません。どうして使えないかは作ってみないとわからないので、まずは作ってから何がポイントであるかを理解する必要があります。それがわかってから必要なら修理したり作り直したりすれば良いのです。

とはいえ最低限知っておく必要があるといえば、あるのです。それは何が危険なのかということです。これをいい加減にすると怪我をしたり火を吹いたり、ガスが出たり爆発することだってありえます。逆に言うとそれだけを押さえておけば最悪でも作ったものが動かないだけです。

表紙はわら半紙のような色彩に黒でイラストと文字が書いてあるだけとなんとも雑なものですが、これがこの本をあらわしています。実は大事なことが帯に書いてあるので、まずはそちらに目を通しましょう。

雑に作る

雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集

内容については、実に感覚的にわかりやすく説明してあるのですが、これを読んで思い出したことがあります。昔、大学院に工学部でない出身者(とはいえ理系ではある)の方が編入してきたことがあり、最初は(学問的な)会話が成り立たなかったのです。

理系、特に工学部の学生なんかは、それなりに鍛えられていて、何かを表現する時には、それが再現可能であり比較することができるように注意するものです。例えば温度に対して決して「熱い」とか「冷たい」などと言うことはなく、ばっちりと◯度(それもちゃんと摂氏と書きます)と表します。色についても「緑色」などというと曖昧なので、波長500nmと言いがちです。グラフについてもルールが厳しくて軸の説明や単位、点は測定値で必要に応じで誤差の範囲がわかるようにします。そしてグラフが示していることをしっかりと説明できるように意図を明確にすることを叩き込まれます。図についても(ジャンルによって結構違うのですが)もちろんたくさんの掟があります。

これを守らないと「それは単なるメモだね(個人の感想だねみたいな意味です)」「それは図じゃなくて絵」と厳しく指摘されるわけです。ですから理系の人たちの書いたものが、どこか堅苦しくわかりにくいように感じるかもしれないのは、いつもこんなことばかりに気を使っているからなのかもしれません。

ですから、これに慣れていない人と話すと言いたいことこそわかりますが「そうじゃなくて」と、いちいち言い直してもらうことになりますし、言い直す方もその都度、思考が中断されるのでなかなかやりにくいだろうとは思います。これを逆に考えると理系の人はいつもわかりにくい話ばかりすると捉えられている可能性はかなりあります。

そこで、この本です。電子工作というなかなか理系なカテゴリの話を「理系ではない」人の視点で書かれています。だからきっと多くの人にとってはわかりやすく書いているんだと思います(実は理系の人にはそれがわからない)。そしてもっと大事なことは作ることの説明ではなくて、作るためのモチベーションの維持の仕方と「作り上げる」ためのコツ、そして作ったもので幸せになるために大切なことが書かれています。欲しいと思ったものを買ってきて済ます生活と、自分で作ったものに囲まれた生活のどちらがあなたは幸せですか。理系の人でないとモノを作れないなんて言うことは全く無いので、多くの人が何かしら自分の欲しい物を作るようになったらいいなと思います。

ヘッダ画像は中表紙、ギャル電さんのサイン入り。石川さんは忙しすぎてサインを貰いそこねました。

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