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和文タイプライター って活版印刷じゃん

文字コードの話も、そろそろ漢字に突入しそうな時代が対象になりそうですが、その前にコンピュータではない一般的な漢字を扱う環境はどうだったのかを思い出しておきます。

書籍のような本格的な大量印刷であれば、それこそ活字を組んで組版して印刷するのですが、そこまで部数が無い場合は、手書きのガリ版印刷を使うことが一般的でした。その中間に入ってきたのが写真製版によるオフセット印刷で、文章の部分は和文タイプライター、写真は網掛けして、イラストなどに含まれる文字はインスタントレタリングを使って原版を作っていた覚えがあります。

この和文タイプライター、英文のものとは違って平たい箱に活字が詰め込んであり、活字は逆さ文字になるので見ても間違うことが多く、活字の上に対応する普通の文字が印刷されたプレートがあって、このプレートで字を選択して1文字ずつ紙を叩いていくという使い方でした。

和文タイプライター

私が使ったのは1970年代も終わりの頃ですから、かなり小型になっており使い勝手も良くなっていましたが、何せ1000文字くらいある文字一覧から1文字ずつ字を探すのですから、慣れてきても1秒に1文字がやっとでした。いろいろ残っている説明ではわかりにくいのですが、書体や大きさを変える時には、この活字の箱がそれぞれ用意してあって、箱を取り替えて打っていたように思います。また記号など普段使う文字と異なる箱を使う時には、文字盤の上に乗せるプレートがあって、それを差し込んで使っていた記憶があります。

和文タイプライター パンライターMAC-M45

文字は原則左上から音読みの五十音順に並んでいて、アルファベットや数字は最後の方にあったような気がします。タイプによってはアルファベットだけ字体を変えられるように小さな箱だけ取り替えられたかもしれません。普通は手書きの原稿を渡して本職の方に打ってもらうのですが、何せ学生なのでコストを抑えるために時間外に機材のある部屋に入らせてもらって自分で打っていました。

これで打てる字はおよそ1000種類程度だったと思うので、人名であるとか地名などの中には活字の無い字もあります。これもよく覚えていないのですが、部首だけの文字があって、これを重ね打ちすることで目的の文字を合成したり、足りない部分だけをそぉーっと手で書くなどをしていたようです。さすがに手書きは真似ができなかったので、インスタントレタリングを使って切り貼りした文字を写真で縮小して、1文字だけ貼り込んだこともあったと思います。

こうやって版を作るのですが、日本語の印刷物には英語とは異なる多くの規則があって、用語がわからないと印刷屋さんとの会話が成り立たなくなることもあるので、いろいろと覚えました。今でもワープロで凝った印刷物を作る時には、出てくる話も多いのですが、そもそもはこの規則から始まっているわけです。

日本語組版とつきあう

パソコンで漢字を扱うときに頻繁に出てくる全角や半角も、元をたどれば活版印刷で版を作る時の話から出てきているのです。まあちょっと意味は変わって使われたような気もしますけどね。

4.2.2. 和文組版特有の特徴

Windowsになってからのワープロは、かなり英語ベースのものになっていて(文字サイズも級は無くなってポイントしか使えない)、日本語固有の処理は扱いにくくなってしまったのですが、日本語ワープロというハードウェアがあった時代は、かなり日本語の組版ルールを忠実に扱っていました。なんとJISにもなっていて漢字コードなどの参照規格が列挙されているので、出発点として使いやすい規格です。

JIS-X4051:2004 日本語文書の組版方法

文字を扱う時には、文字コードだけではなく書体や修飾、文に対する規則、文の集合である段落や章、節といった規則、そして頁に対する規則が組み合わさっているので、これらを混同しないようにしないといけないのですが、最近のUNICODEは色情報まで持っているので、ちょっと困ります。

和文タイプライターと戯れていた時には、その知識がワープロを使ったり、作ったり!するのにこんなに役に立つようになるなんてゆめゆめ考えていなかったのですけどね。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Japanese_typewriter_SH-280.jpg
miya - 投稿者自身による著作物, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3637668による

#和文タイプライター #オフセット印刷 #写真製版 #組版 #日本語

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