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FACOM9450 - 松下と富士通の微妙な関係

先日、元祖PCであるIBM-PCの記事を書いたのですが、そこで出てきたオフコン達の中で忘れてならないFACOM9450についてを、まだ書いていませんでした。

IBM-PCの登場

富士通といえば、1981年にFM-8を華々しくデビューさせてパソコン業界に参入してきたのですが、同じ年に企業向けパソコン(オフコン)のFACOM9450も発売していました。

FM-8とバブコム80

ところで富士通と松下などが出資したパナファコムという会社が1973年に設立されたのですが、これは当初はLKit-16などでご存知のMN1610というCPUを作るのが目的だったようです。

MN1610 - 日本ではじめての16ビットCPU

Panafacom

PFU

このMN1610を使った製品として1980年にC-180という企業向けパソコンをリリースしました。これに大型機の端末機能を追加して富士通ブランドとしてリリースしたのがFACOM9450です。

FACOM 9450

この機種も2つのCPU(MN1610A)を搭載し、入出力はサブCPUに任せていたアタリFM-8と同じ設計思想が伺えます。メモリは120K以上あり、テキスト画面は80✕24、当初はこれだけでしたが、その後、720✕480ドットのモノクログラフィックも扱えるようになり、FDDやHDDも搭載できるようになっていました。

オフコンですから「BASICがあるよ」だけではなく、業務で使うような表計算(EPOCALC)であるとか端末エミュレータ、ワープロソフト(EPOWORD)、グラフ作成ソフト(EPOGRAPH)も用意されていました。大型機で行っていた業務を引き取ることも多かったのでしょう、COBOLも使えたようです。

FACOM9450(1981年)

Advert of Fujitsu FACOM9450

当初はもっぱら既に大型機のサービスを受けていたような企業での利用が中心だったようですが、いわゆる「OA化」という合言葉で業務の電算化(これ、死語かな?)が進み、注目されるようになってきました。その後、1983年にはCPUやメモリ、グラフィック能力を強化した9450IIをリリースし、盤石の体制を整えて翌1984年に発売された「IBMマルチステーション5550」を迎え撃ちます。

富士通のパソコン40年間ストーリー【4】本格ビジネスPCの1号機「FACOM 9450」

この時代のパソコンは漢字を出すにも苦労していたくらいですし、いろいろな装置を拡張したり接続したりするにも少々、クセがあり、いわゆる「パソコンに詳しい人」がいないと、業務で使うには苦しいものがありました。そういう人がいない、もしくは、そういう人の手を煩わせない(何せ彼らは高給取りのことが多い)ためにも、サポートの手厚い企業向けパソコンは必須でした。

それでも、手元にパソコンがあるわけで、自分たちで業務ソフトを作って使いたいというニーズも強く、そういう会社から当時まだ学生だった私なんかも便利に呼ばれて、いろいろなお手伝いをした記憶があります。そういう場合はだいたいBASICを使うのですが、いつも使っていたようなパソコン用のBASICとはかなり毛色の違う部分があって「業務」とはそういうことなのかと感心した覚えもあります。

記憶に残っているのがファイル処理で、いわゆるランダムファイルでデータを記憶するのですが、レコードに含まれるフィールドが、そのまま画面上の情報と対応させる機能を標準で持っており、最近のシステムで言うとdjangoのようにデータベースとGUIを自動的に連携させることが出来るスタイルに近いです。もちろんパソコン向けのBASICでもFIELD命令があって、ランダムファイルとBASICの文字列の間を取り持ってはいたのですが、これが画面まで拡張されているといった感じでした。どうやら、これが端末機能までつながっているようだったので、元々は大型機でのファイル処理の一般的な方法だったのかもしれません(大型機は数値計算しかしたことがないので、よくわからない)。

こうしていわゆる「業務ソフト」の基本を覚えられたので、その後、いろいろなお仕事をいただくのにとても役に立ちました。業務で使うデータは企業内のいろいろな部署でいろいろな状況で活用されるので、大型機からパソコンにデータを受け取り、それをハンドヘルドPCなどのモバイルデバイスに入れて客先に向かうなんていう連携プレーが大切で、これにはいずれのデバイスについても精通している必要があり、そういう人材がどこも不足していたようで、とても忙しくさせていただきました。

パナファコムはその後も後継機種を出し続けたのですが、オフコンというジャンルが消滅に向かい、1987年にUSACと合併しPFUとなり、1996年には「あの」HHKを売り始めました。さらに2001年に富士通のスキャナー部門が移管されScanSnapで知られるようになっていたのですが、2022年にはリコーに譲渡され今に至ります。メインのパソコンからはすっかり遠ざかり、周辺機器に特化して生き残ったようです。それにしてもなかなか紆余曲折が激しいですね。

リコーになってもScanSnapの火は消えない

気がつけばLKitに始まりScanSnapまで、私にとってのメインストリームにはいなかったのですが、ずっと御縁は続いているようです。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:FACOM_logo.svg
By Darklanlan - Adverts in 1980s., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49788390

#レトロPC #富士通 #パナファコム #MN1610 #PFU #9450 #FACOM #C180 #オフコン  

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