カセットテープにデータを保存していた頃
マイコンが登場した頃は自分で基板を作って部品を載せて、メモリの内容を7セグLEDに表示し入力はスイッチやテンキーで行っていたのですが、RAMは電源を切ると消えてしまうので、電源をいれるたびにパチパチと入力するものでした。プログラムが完成すれば電源を切っても消えないROMに焼き込むということもしていましたが、さすがにそれも大変なのでデータを保存する方法を悩んでいました。
当時の大型機では紙テープがポピュラーで、磁気テープが使われることもありましたが、かなり大きなリールを使いますし、とてもではないですが手軽に使える大きさでもお値段でもありません。そんな頃、海の向こうから「カンサスシティスタンダード」という単語とともに会話や音楽を録音・再生するために普及していた「コンパクトカセット」いわゆるカセットテープを使う方法が聞こえてきました。
カンサスシティスタンダード
当時のカセットはあまり性能の良いものではなく、周波数帯域の上限もせいぜい10kHzといったところで、記録速度は300ボー(ボーとbpsは微妙に定義が違います)といったところで、例えば8KバイトのサイズがあるBASICインタプリタを読み込むには5分ほどかかります。もっとも当時はせいぜい16Kくらいしかメモリが無かったので30分テープの片面に充分収まりはしたのですが。カセットを使うという方法は手軽で安価ですし、そのための回路も簡単なもので済んだので、競うようにどのマイコンにも採用され、市販のパソコンはほぼすべてにカセットインターフェースが搭載されました。
懐かしのカンサスシティスタンダード
300ボーという速度はあまりに遅かったので、元の規格でも高速化は図られたのですが、日本ではサッポロシティ・スタンダードという改良された規格が発表され、その後も改良が加えられ、より高速にカセットにデータを記録できるようになりました。
データレコーダ
世界つなごうPCN、ブラウザで鳴らす「サッポロシティスタンダード」とISTS出展のお知らせ
Androidでカンサスシティスタンダードのデコード
パソコンで採用されたインターフェースも、各社が競うように高速化を図っていました。APPLE][は相変わらず最低限のハードウェアを用意しただけでソフトで頑張っていたので一般的には1500ボーで使っていましたが、ソフトウェア的に少しズルをすることで独自のフォーマットを使うことも出来て2400ボーくらいまで高速化する方法もありました(一部のゲームなどで使われていた)。
Apple IIのハードウエア(2)
PC-8001は600ボー、PC-8801になると1200ボー。MZは専用の機器を内蔵していたので最初から1200でしたね。やはり内蔵していたPET2001はプロトコル的には1500ボーだったのですが、信頼性を確保するために必ず2回データを送っていたので実質的には750ボーだったようです。音声のための装置なり伝送路を使う限り、モデムやFAXでもだいたい2400ボーくらいが上限で、それ以上に高速化するためには変調方法の方を工夫するというのは同じようなものです。
1980年代前半にFDDよりも安くて手軽に使えた「データレコーダー」 ~NEC製品編~
実のところ私は、最初は小型の会話を録音するようなテープレコーダーで済ませていましたし、サッさとフロッピーに移行してしまったので、カセットを使うのは市販品を読み込むときだけでした。その後、PC-1500というポケコンとセットで手に入れたデータレコーダーを使うようになりましたが、これにはリモート端子というのがついていて、少しだけ操作をサボれるので便利でした。MSXまではこれで済ませていたのですが、レコーディング・ウォークマンを使うようになってからは、モバイルデバイスにはこちらを使っていました(小さくて便利!)。
この時代、市販ソフトはカセットで供給されることが多かったのですが、このバックアップをとるにはパソコンに読み込んでから保存するという手段がとれないようにされていることも多く、2つのレコーダを接続してアナログ的にコピーすることも多かったです。アナログですから波形が劣化するので、なるべく高性能な例えばカセットデッキを使っていましたが、それでも1世代の複製が限度でした。そもそもテープは伸びますし劣化するものですから、マスターは大事に保管してコピーしたものを使うのが常道だったんですけどね(絡まるという事故も起きます)。まあ複製が困難だったので、あまり防止策はとられていなかったのですが、APPLE][では微妙な方法で嫌がらせもされていました。
ハッキング事始め
この時代は使えなくなってしまったテープを発売元に送れば、新しいものを返してくれるメーカーもあったのですが、海外まで送るとなるとコストも時間もかかりますし、段々とそのようなサービスをハッキリと謳っているところも無くなってしまいました(サポートとして対応してくれることはありましたけど、電話はネイティブ相手は辛いですし、あちらの国ではFAXなんて普及していなかったんですよ。あっ!日本から800で始まる番号は掛けられなかったのもありました)。権利を持ち出す割には義務を果たしていないのでバックアップツールと呼ばれるコピーツールが売れに売れたのも必要悪だったんだと思いますよ。
データ保存はカセットテープがあたりまえだった
まあ異なる機種とのカセットのやりとりをすることは、その必要性も無かったのですが、変調方式も同じとは限りませんし保存フォーマット(中間言語)も違うので、どうしても他の機種とデータをやりとりしたかったらシリアル接続をしていました。カセットもモバイルデバイスで使うときは少しばかり大きかったので、マイクロカセットを使うことも増えていった気もします。あんまりカセットの時代を経験していないのですが、8ビットなパソコン時代にいた人にとってはカセットに思い出がある人も多いようです。
懐かしい記録メディア 「カセットテープ」
昔のデータ記録メディア―カセットテープ
ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SWTPC_AC30_Cassette_Interface.jpg
Swtpc6800 Michael Holley - Transferred from en.wikipedia; transferred to Commons by User:Liftarn using CommonsHelper., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4488959による
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