電源を切るまでがパソコンです
今はノートPCを使っていれば余程のことがなければ不用意に電源が切れてしまうことも無いですし、デスクトップであっても電源コードが抜けてしまったとしても、大体のアプリは最後の状態を保存しているので、あまり深刻な事態になることは少なくなりました。
初期のパソコンは、そもそもフロッピーなどの装置すら無かったので、テープなどに保存していないデータは電源を切れば綺麗さっぱり消えてしまうのが、それこそ常識でした。ダンプリストの入力がついに終わったなんていうときに、カセットの用意をしようとして電源が切れてしまった暁には、それこそ「オレの時間を返してくれ！」という事態になったものです。
フロッピーが使えるようになって、データの保存は少し楽になりましたが、今度はセーブ中に電源が落ちてしまうと、フロッピーが丸ごと駄目になってしまうという事故が起こるようになりました。もちろん保存したデータ自体は途中までかもしれませんが、フロッピーには書き込まれているのですが、フロッピーの管理領域のデータが矛盾した状態となってしまい、フロッピー全体が正しく使えなくなってしまうんですね。大体、CP/Mとか初期のNECのDISK BASICは、管理領域を自動的に書き戻してくれなくて、セーブが済んでいても、おまじないを忘れると、これをやらかします。
もちろん、この程度のことで大事なデータを諦めるわけにはいかないので、管理領域を目で追って直接書き換えるとかの大技でなんとかしてしまうのが、当時のマニアです。手計算では危ないので自分でプログラムを作り出すのですが、同じ目的の人はたくさんいるのでツールが出回るようになるのです。
この管理領域の不整合は結構、根が深くて、記憶装置がハードディスクになっても続きました。特にUNIXの古いファイルシステムは、先のCP/Mとかと同じ問題を抱えていて、管理領域の不整合が出やすいです。もっとも予め専用のコマンドは用意してあって、電源を入れた時に正しく終了していないことを見つけると、このコマンドが自動的に走るのですが、その結果、壊れているファイルを教えてくれるのは良いのですが、何をどうすれば正しい状態に戻せるのかは、かなりの知識と経験が必要です。UNIXはサーバなどでよく使われていたので、停電などでサーバが突然落ちた後に、この復旧が大変でした。サーバは自分だけではなく使う人が待っているので、早くなんとかしないと大騒ぎです。
実は今でも根本的な問題は残っているのですが、ファイルを更新する都度に記録を残すようにしているので、矛盾を見つけてもほぼ自動的に解決してくれます。稀に起動時に警告が出ることがあっても、人が何らかの判断をする事態になることはまず無くなりました。
このレイヤーでなくても、以前はアプリでファイルを保存していなければ、電源が切れるとともに編集内容は消滅するものでした。注意して一定時間ごとに保存をするようにしていても、何故か忘れた時に限って電源トラブルに見舞われるものです。もっとも電源トラブルではなくても、アプリ自身やOS丸ごと、バグやその他の理由で突然終了してしまったり、固まったりして、もうデータをセーブすることすらままならないこともシバシバでした。
フロッピーの時代はセーブするのにも、それなりの時間がかかったこともありますし、稀にセーブすることでアプリが死んでしまうということすら起きたのですが、ハードディスクの時代になって、あまり負担がかからないようになると、一定時間ごとに自動的に保存されるような機能が一般化しました。
このあたりのテクノロジーは、デスクトップやサーバのOSに関しては、あまり進歩していないのですが、スマホなどで使われるOSでは、元々電源やメモリなどのリソースが潤沢ではないことが前提なので、ユーザが何もしなくても常に編集内容が保存され続けるような仕組みになっています。このテクノロジーやユーザの体験がデスクトップOSにも、ある程度はフィードバックされているので、電源が切れても大したことがないようになりましたし、そもそもデータを保存するという行為そのものが意識されにくくなりました。
今は特にノートなどのバッテリーを持ち、スリープが安全に使えるようになってからは、再起動をすることこそあっても、あえて電源を切るという行為自体が滅多になくなったことは確かです。それでも電源を入れたり切ったりする時には、随分といろいろな処理が行われているので、ちょっと調子が悪いなと思ったら、電源を切ってみるのも悪くはないです。もっとも何らかの問題を抱えている時は、それが発覚して大慌てになることもありますけどね。
長くパソコンを使っている人は、きっと一度は電源が切れて酷い目にあったという経験をお持ちですよね。いやいや良い世の中になったと思いますよ。
ヘッダ画像は、いらすとや より
https://www.irasutoya.com/2014/10/blog-post_250.html
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