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バックアップの話

パソコンを使っていて最も恐ろしいことは、きっとデータが喪失してしまった場合ではないでしょうか。それなりに多くの人が、一度ならずも必要なファイルが見つからなかったり、使えなくなって深刻な事態を招いた経験があるのではないかと思います。

そこで、耳が酸っぱくなるほど聞かされるのが「バックアップは?」という言葉なんですが、実に多くの人がちゃんとバックアップの設定をしていなかったり、してあっても適切ではない設定であったために、目的のデータを手に入れることが出来なかったりするわけです。

そうなんです。バックアップと言っていますが、実にいろいろな種類や方法があって、ちゃんと理解していないとイザというときに役に立たないかもしれないのです。

さて、目的とするデータが喪失してしまったというのも、いろいろなケースがあります。思いついたものを列挙してみると

  • 誤ってファイルを消してしまった

  • ファイルの内容を消してしまった

  • パソコンが起動しなくなった

  • ディスクが壊れてしまった

  • サービスのアカウントにアクセスできなくなった

が直ぐに浮かびました。それぞれの状況と対処について考えてみます。

誤ってファイルを消してしまった

いらないファイルを消そうと思ってエクスプローラなどからファイルを削除したりごみ箱に入れる際に、誤って消してはいけないファイルを消してしまう場合などです。この場合はまず「元に戻す」をすることで、消す前の状態になりますし、消してしまったファイルはごみ箱に残っているので、ごみ箱を開いて目的のファイルを選択してから「元に戻す」を選んで消す前の状態にすることができます。

ところが稀にごみ箱の設定を「ごみ箱にファイルを移動しないで、削除と同時にファイルを消す」にしていたり、わざわざDELキーではなくシフト+DELキーで削除するときがあって、これだともうごみ箱には行きません。またコマンドラインから DEL コマンドでファイルを削除したときもごみ箱が使われることはありません。

このような場合は、ファイル復元ソフトというものを使うと、運が良ければ元のファイルを手に入れることができます。但し、復元はディスクの状態が変化する前にやらないと、復元できなくなってしまいます。システムドライブにあるファイルを復元するのであれば、間違っても、復元するからと新しいソフトをインストールしてはいけません。その操作が復元したいファイルを壊してしまう可能性が高いです。ですから、インストールしないですぐに使える状態で復元ソフトを使う必要がありますし、あらかじめ復元ソフトの使い方を練習をしておかないと、間違った操作でせっかくの可能性を潰ししてしまうかもしれません、さらに悪いことには、復元されたファイルが本当に元通りになったのかは、実はわからないのです。もしかしたらファイルが途中までになっていたり、一部に間違ったデータが混入した状態で復元されてしまうこともあります。

なので、復元に頼るのは他の方法がない場合の最後の手段であって、あまりオススメできるものではありません。やはり大切なのはバックアップです。バックアップソフトは必ず復元する機能がありますが、このときに「全体を元の場所に戻す」「全体を別の場所に戻す」「特定のファイルのみを戻す」のいずれかが出来るはずです。いずれにせよ、バックアップした時点でのファイルしかないので、バックアップが古くなっていれば、目的のファイルはまだ無かったかもしれませんし、見つかっても古い内容になっているはずです。これは仕方がありませんが、毎日バックアップしていれば、少なくとも昨日の状態を取り戻すことができます。

ファイルの内容を消してしまった

これはファイル自身は残っているのだけど、何らかの理由でファイルの中身を消してしまったとか、意図しない内容に書き換えてしまって、以前の状態に戻したいというケースです。ウィンドウズの場合は「ファイル履歴」という機能があり、運が良ければ更新されたファイルを以前の状態に戻すことができるかもしれませんし、オフィス系のアプリケーションであれば「変更履歴」の機能で変更を元に戻すことが出来る可能性もあります。もちろんバックアップがあれば、復元することで、その時点でのファイルを手に入れることも出来ます。

この機能も一度は試しておかないと、履歴管理が有効になっていなかったと慌てることになるかもしれません。

パソコンが起動しなくなった

これはパソコン自身をなくした時も含まれるかもしれません。パソコンに内蔵されているSSDであるとかHDDにバックアップをするのは、自動的に行えることも多く、忘れずに確実にバックアップできるのですが、そのバックアップを復元するのに、そのパソコン自身が必要です。起動しなくなってしまったのですから、それを解決する前にデータを使うには、どうしても他のパソコンが必要になるのですが、どうやって他のパソコンで元のパソコンに入っているデータを読み出すかが問題です。

HDDであれば元のパソコンから取り出して、他のパソコンに接続して読み出すことも可能ですが、最近のSSDはインターフェースの規格がいろいろあるので、同じ規格のインターフェースを持つパソコンを用意しなければなりませんし、そもそも基板から取り外すことのできないSSDもノートパソコンには見受けられます。ですからバックアップは外付けのデバイスにしておかないと結局、使うことができません。最近はUSB接続の外付けデバイスも多いので、できれば、こういったものでバックアップをとるのが望ましいです。ノートパソコンの場合、SDカードへのバックアップでも構いません。そしてバックアップは持ち歩かず、大事にしまっておいてください。一緒になくしては元も子もありません。

ディスクが壊れてしまった

ディスクというのはいつかは壊れるものです。SSDも寿命がありますし、電気的な障害で読めなくなることも無いとは言えません。壊れるときにどう壊れるかで、対処方法は異なるのですが、壊れ始めると、どんどん悪くなっていくのが普通なので、できるだけ早く残っているデータを取り出して安全なディスクに移す必要があります。大事なことは壊れかけのディスクからデータを読む事はしても、書き込まないようにすることです。システムドライブが壊れかけた場合、バックアップをとるだけでも作業用のデータを書き込んでしまうので、ネットワーク越しなどで「そぉっと」読み出してあげるのがベターです。電源を切ったり、ましてや取り外すと、より壊れてしまうことも多いので、読めるうちに読み出すのが大事です。

ちなみにディスクの故障に備えて、複数のディスクを使ったRAIDという仕組みがあるのですが、これを使いこなす、特にシステムドライブに導入するのは、かなり難易度が高いので、余程のことがなければオススメしません。またRAIDは故障に備えるものであって(RAIDの種類によっては、その効果がないものもあります)、バックアップのかわりにはなりません。ファイルを消してしまったら、即座に冗長なドライブからも消えてしまうので、ここから復元することはできません。

サービスのアカウントにアクセスできなくなった

クラウドな時代になり、データはローカルではなくネットワークの先に保管することが増えました。これでいつ目の前のパソコンが壊れたり、なくなっても、同じアカウントを持つ、他のパソコンからは同じデータにアクセスすることが出来ます。手前のネットワーク機器が故障しても、とりあえずスマホのテザリングから急場をしのぐこともできるでしょうし、サービス側の障害が発生することが無いとは言えませんが、まあ翌日になれば何とかなるものです。

これで安心かといえば、クラウドサービスの最大の問題点は、何かの事故でアカウントにアクセスできなくなることです。もっともよくやるのが、パスワードがわからなくなることです。パソコンにパスワードを記憶させておくことで利用していると、パソコンが壊れて他のパソコンからアクセスしようとしても、そのパスワードがわかりません。ほとんどの場合はメールさえ使えれば、パスワードをリセット出来るのですが、サービスによってはその限りではありません。また何らかの理由でパスワードが流出し、アカウント自身が乗っ取られてしまうことが無いとは言えませんし、理由はいろいろあるでしょうがサービス提供元から、突然アカウントを凍結されることだってありえます。

こうなってしまったら、データを取り戻すことはかなり難しいです。アカウントが乗っ取られた場合、データが以前のままである保証はありません。消されていたり、何らかの改変が行われている可能性もあります。もし他にバックアップがあるのであれば、こうしたリスクを考えると、アッサリと諦めてサービスを解約してしまった方が良さそうです。


このように、バックアップを取っていたところで結局データを無くすことは防げないのですが、その可能性を小さくすることはできます。まずバックアップは2つ以上取ることです。Googleは、そのサービスを提供するために Google File System という仕組みを開発して利用しているのですが、その基本はひとつのデータは必ず3つあるようにしていることです。この3つというのがマジックナンバーで、とにかくデータが3つあるようにすれば、まず安心です。

バックアップがひとつしかないと、バックアップを取っているときが一番危険で、このときに元のデータが破損していると、この破損したデータがバックアップされてしまうか、途中までしかバックアップできていない状態でバックアップが終了してしまいます。このとき、元のデータもバックアップも使い物になりません。ですから、必ずひとつ前のバックアップが存在している必要があるのです。私も以前にこれをやらかしてしまい、それ以来、必ずバックアップが複数ある状態を維持するようにしました。それ以降はディスクに問題があってもデータを喪失した経験は無くなりました。そうなんです。データは必ず元のデータとバックアップが2つの3つある必要があるんです。

さらに、これとは別に複数の手段でバックアップを取ればよりリスクは減ります。つまりバックアップのひとつは外付けディスクで、もうひとつがクラウドといった使い分けです。もちろん、さらに多くの方法でバックアップを取れば、より安心ですが、とにかく最低でもデータが3つある状態を維持してください。ここまでして、データが無くなってしまった時には、それはもう神の思し召しだと考えるしかありません。

さて、最後に忘れていけないことがあります。それはバックアップを取ったことで、安心して、どうやって復元するのかを試していないことです。何らかの勘違いや設定ミスで、実は思った内容のバックアップが取れていないこともあります。またデータが消えてしまった時は、慌てていることも多いので、やったことがないことを、そのときに初めてやると、操作を誤って、せっかくバックアップしてあったデータを消してしまうことが無いとは言えません。ですから、時間があり平常心が保てているときに、実際にバックアップからデータを復元する作業をやっておきましょう。こうしてちゃんと復元した経験があれば、慌てていてもきっと大丈夫です。やったことがあるというだけで、随分と安心できるものです。

これを避難訓練と勝手に呼んでいるのですが、新しいパソコンを買ったとき、新しいOSを導入したときなど、たっぷりとバックアップと復元の練習をしておきます。これを済ませておくと、その後、データが無くなるような事態が発生しても、その時の手順で復元することができると「わかっている」ので、特に慌ててるようなこともなくなります。落ち着いて作業をすれば良いだけです。


殆どの人は実はデータを喪失して困ったことがあるはずなのに、ちゃんとバックアップをとっているかというと、システムにお任せで特に何もしていなかったりします。システムが持っている機能だけで事なきを得ることも多いのですが、泣いたり騒いだりして諦めてしまうこともママあるようです。

「パソコンに詳しい人」というのを長くやっていると「何とかしてくれ」と泣きつかれた経験も増えてきます。その度に何とか復元をしてきたわけですが、残念ながらまったく何も出来なかったこともあります。最近のように保存しているデータが多くなってくると、随分と時間が経ってからデータに問題があることが発覚することもあります。そうなると、そんな前のデータに対するバックアップは、もうどこにも無かったりするんですよ。またクラウドサービスにあるデータは、そのままの状態でバックアップするのが難しいこともあり、時代が進むに連れ、その時代にあったバックアップと復元手法を編み出し続ける必要がありますね。

そうそう、まったく違うレイヤーの話になるんですが、データはちゃんと揃っているんだけど、この中のどこに欲しいデータがあるのかが、わからないんだよ。ということが増えてきています。とりあえずファイル名には何らかのキーワードを入れてください。これで検索で見つかる可能性がグッと高くなりますんで。これ、笑えない話ですからね。

ヘッダ画像は、いらすとや より
https://www.irasutoya.com/2017/12/blog-post_459.html

#バックアップ #復元 #ディスク故障 #削除 #GFS #避難訓練

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