伝わらない患者さんへの説明
皆さんこんにちは。長野県の回復期病院で理学療法士として勤務している竹中寿史です。
最近は、noteの更新に注力して食事を作ることを放棄しつつあります。笑
今回は「日常的に使用する専門用語は患者さんには伝わらない」というテーマで書いていきます。よろしくお願いします。
専門用語は理解できない
皆さんは、普段業務を行なっている時に専門用語を使用していると思います。専門職の間でコミュニケーションを取る際には、専門用語を使用することで伝達速度が圧倒的に速くなるため、非常に有効です。
例えば、専門用語を使用していないと、炎症反応のことを、
「手術してすぐに起こる患部が熱くなり、腫れていて痛みがある状態」
と表現しなくてはいけません。
これは、非常に手間ですよね。だからこそ専門職の間では専門用語を使用しないと上司に指摘されます。笑
しかし、患者さんに対して専門用語を使うと伝わりません。伝わらないので患者さんからの理解も得られず、信頼してもらえません。
そのため、患者さんと話す時には専門用語を翻訳して伝える必要があるのです。
例えば、毎回左側のご飯の食べ残しがある患者さんに対して、
「Aさんは左半側空間無視があって、左側への注意が向きにくいから食べ残しがあるんですよ。」
と伝えても患者さんは理解できません。
理解できるのは、食べ残しがあるんだなという程度です。
だからこそ、患者さんに説明する時には、専門用語の翻訳をする必要があります。これができないとコミュニケーションの基本であるお互いの共通理解を作ることが出来ないからです。
(共通理解については前回の記事を読んでね)
翻訳する時の2つのポイント
患者さんに伝える際に、専門用語を翻訳するのはわかっているけど、どうすれば良いのと思う方もいると思います。
翻訳する時のポイントは以下の2つです。
①専門用語に関して詳細な知識を持っておくこと
②比喩を上手く使うこと
まず、一つ目は専門用語に関して詳細な知識を持っておくことです。医療職自身が専門用語の理解が不十分であるとそもそも説明できません。
例えば、「炎症症状って何ですか?」「痛いのはどうして起こるの?」と聞かれた時には、そもそも炎症症状について知らなければ、翻訳できません。
どのような機序で炎症は生じて、その結果体の中ではどのような反応が起こっているのかを理解しておく必要があります。
そのため、ある現象に対しての専門的な知識を持っていることが大前提となるのです。
二つ目は、比喩を上手く使うことです。比喩とは、物事に対してある共通点を持った別の物事に置き換えて表現することです。
「君は太陽のような人だ」というのも比喩ですね。君も太陽も輝いているという共通点があるため、喩えとして機能しています。
比喩の利点は、相手の知っているもので表現できるため、難しい専門用語や現象を患者さんに理解してもらいやすいことです。
例えば、筋トレで重い負荷をかける時に
「なんでこんなに重いもので筋トレをやらないといけないんですか。もっと軽くしてくださいよ。」
と言われたとします。
その時に、生理学的にきちんと説明すると、「過負荷の法則というのがあって日常生活以上の負荷をかけないと筋破壊が起こらず…etc」となります。
でもこれって患者さんが理解するのは難しいんですよね。自分たちが学生の時に聞いてもよく分からなかったものなので。
ここで喩えを使うとこうなります。
「力士が稽古をする時に、小学生とはやっても強くならないですよね。同じくらいのレベルの人かそれ以上のレベルの人と稽古するから力がつくんです。だから、筋トレも同じで、その人の力に合わせた重さじゃないと力がつかないんです。」
これなら、さっきよりも分かりやすいのではないでしょうか。患者さんは過負荷の法則は知らないと思いますが、力士なら知ってますよね。
このように比喩を使って専門用語を翻訳することは、相手の知っている言葉の中から説明することが出来るため、納得してもらいやすいです。
またイメージが浮かぶため、右脳に働きかけることが出来ます。すると論理的に伝えるよりも感情が動きやすく、動機に結びつきやすいという利点もあります。
まとめ
・専門用語は専門職間は伝わるが、患者さんには伝わらない。
・専門用語を翻訳するポイントは以下の二つ。
①専門用語に関して詳細な知識を持っておくこと
②比喩を上手く使うこと
・比喩を使うと相手の右脳に働きかけることが出来るため、動機に繋がりやすい。
ぜひ皆さんも翻訳する二つのポイントを意識して、専門用語を分かりやすく説明をしてもらえると良いかと思います。
今回もここまで読んで下さってありがとうございました。少しでも皆さんの日々の仕事や生活に役に立てば幸いです。
ではまた!
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