矢野和男(ハピネスプラネットCEO、日立製作所フェロー)

AIと人間社会行動や幸せについて研究しています。これがAIと合わさって大きなな変化をも…

矢野和男(ハピネスプラネットCEO、日立製作所フェロー)

AIと人間社会行動や幸せについて研究しています。これがAIと合わさって大きなな変化をもたらすと考えています。著書『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』http://amzn.to/1mgfZHF http://bit.ly/Unmhs6

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    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

  • 変化に向き合う力 記事まとめ

    変化が加速するこの時代にこそ、 忘れてはいけないものがある。 すべての人は、幸せになるために生まれてくる。  すべての企業や組織は、社会の幸せのために存在する。   その原点に立ち戻り、 「幸せ」とまっすぐに向き合うことから始めようではないか。   困難に立ち向かう。常識を変えようと挑む。 そんなときこそ、幸せという問いから逃げてはいけない。    このためのヒントや考察をまとめた。 人生の何かの参考になれば幸いです。

最近の記事

幸せと業績との因果

今日は「幸せと業績との因果関係」について書きたいと思います。    ウエルビーイングや幸せは、最近はいろいろな場所で語られるようになっています。その中でも大きな話題が、従業員のウエルビーイングが、企業の業績に影響を与えるか、という点です。    最近では、企業の財務的な数値(お金の動き)を見ているだけでは、その企業の良し悪しや価値が見えなくなっています。業績を生み出している実態は、人の知恵や行動力だからです。このために、従業員の様々な実態を指標化した「人的資本」や「非財務指標

    • 接続詞の魔法

       言葉は、私たちの思考や行動を無意識のうちに縛っています。その中でも特に重要なのが「接続詞」です。  例えば、今日、締め切りが守れるか不安な仕事があるとしましょう。締め切りが守れないかも、という心配が、思わず浮かんでくる状況です。ここで、接続詞が大事な役割を果たします。     締め切りが守れるか確信がもてない。だから、不安が抑えられません。   と思う時、「だから」という接続詞は、あなたの不確実な状況を強調しています。  接続詞を変えてみましょう。     締め切りが守れ

      • 幸不幸を分ける「ファクターX」

        今、多くの企業が、離職やメンタル不調、さらに受け身で生産性の低い職場という課題を抱えています。一言でいうと、多くの企業が、不幸せで消極的な組織になっています。これが、この20年に渡る日本の凋落をもたらしている大きな原因だと考えます。 私のグループでは、過去20年に渡り、組織に関するデータを収集、解析し、 これら課題を起こしている要因、すなわち「ファクターX」を、データから明らかにしてきました。   組織に、このファクターXが多いか、少ないか、により、生産的で幸せな組織になる

        • 稲盛さんの言葉に力をもらいました。

           京セラやKDDIの創業者で、JALの再建にも力を発揮された  稲盛和夫さんが亡くなりました。    私は、稲盛さんにお会いしたことはありませんが、  本や映像を通じて、稲盛さんの影響を実は受けています。  今日は、その体験を共有します。    私は約2年前にハピネスプラネットという会社を創業しました。この会社をつくること思い立ち、設立準備を始めたのは、約3年前になります。    その時点で、30年以上に渡り、日立で研究開発とその事業化を行ってきました。それまでも、現在の事業

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          矢野和男(ハピネスプラネットCEO、日立製作所フェロー)
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          信じることの大事さ

          今日のテーマは「信じること」です。 幸福な社会を論じる際に、私が最も影響を受けた著者に小林秀雄がいます。    私の高校時代には、小林は国語の教科書によく取りあげられていました。  私も教科書で知りました。  小林は、その本質を突いた深い論考によって、  20世紀の日本を代表する知識人と言われています。    私は、社会人になり、結婚して、子どもができる中で、  小林秀雄とはご縁がなくなっていました。  ところが40代になって、突然、また読みたくなったのです。    皆さん

          「うつ」と三角形

           今日のテーマは「うつ」です。    そもそも、試練や困難が避けられないのが人生です。  人間関係には常に問題が起きがちです。  しかも、自分や周りの身体的な不調が重なることもあります。  いつでも、誰にでも起こりえます。  従って、うつには、誰もがなる可能性があります。  意外に、もろいのが、人間です。    これまで、うつになった人に対し、  その人が生真面目だからとか、内向的だからという  説明がされることがあります。    しかし、その説明に、私はしっくりきてませんで

          「ウエルビーイング」が注目される訳

           「ウエルビーイング」が注目されています。この分野を牽引してきた前野先生の本を始め、書籍もいろいろと出版されています(私の仕事も紹介していただきありがとうございます!)  ただ、ウエルビーイングはあまり日常会話では使わない言葉です。どんな意味なのか、よくわからない人も多いかと思います。  日本語の「幸せ」にあたる英語の言葉は「ハピネス」です。これに対し、ウエルビーイングとは、ハピネスをより固く表現したものです。この意味で、日本語でいえば「幸福」にあたりますが、幸福よりもさらに

          人生の複利計算:必要なのは心理的抵抗を超えること

           以前ここで、「人生と仕事を複利計算にする」ついて書きました。  簡単にいいますと、毎週2%でも新たな工夫を入れるのは、1年で300%、2年で900%というものすごいことになるということです。  2%、即ち102%と100%の差など、環境変化の激しい仕事や人生の中で、単なる誤差のように思えます。それが一回しか起きないならば、その通りです。しかし、それが継続された時には、ものすごい差になるのです。  これは、直感に反します。これは、我々の直感が、複利計算をイメージする能力がい

          人生の複利計算:必要なのは心理的抵抗を超えること

          今を大事にする

           最近、福井県の永平寺に行ってきました。  実家は山形県の酒田市で、お墓は酒田にありますが、  一年前に亡くなった母のお骨の一部(分骨)を、  永平寺に納骨してきたのです。    納骨の儀式でお坊さんが、「今」の大事さをお話されたのです。  禅では、今こそが大事で、そこに、あなたの全てがあると考えるといいます。  あなたが「過去」と呼ぶものは、  これまでのことを、どんなストーリーで、「今」とらえるかのことです。  あなたが「未来」と呼ぶものは、  これからのことを、どんな

          幸せの本質:人生と仕事を複利計算にする

          人や経済が成長することはいいことです。この成長という概念をここでは敢えて数値化してみましょう。 例えば、2年で10倍成長するというのは、すごい急成長です。ただ、これを要素に分解していくと驚くべきことが分かります。 実は、これは毎週に換算すると約2%の成長なのです。 毎週2%は、毎月10%で、毎四半期30%で、毎年3倍です。 これは、2年で10倍です(2年は104週で、1.02の104乗は10です) 即ち、毎週2%は、2年で10倍なのです。意外じゃないですか? これこそが複

          幸せの本質:人生と仕事を複利計算にする

          あなたは社会を変えるパワーを持っている

          我々は市民です。実は、市民には、4つの責任と権限があります。 第1に、納税者として、自治体や官公庁の行政に影響を与える権利と責任があります。 第2に、有権者として、政治や立法に影響を与える権利と責任があります。 第3に、購買者として、企業(商品・サービスの事業者)に影響を与える権利と責任があります。 第4に、年金/保険金の積立者として、投資家に影響を与える権利と責任があります。 これらを合わせて、行政、政治家、企業、投資家への責任と権利を持っているのです。従って、行

          あなたは社会を変えるパワーを持っている

          「科学的」という言葉の使われ方に違和感があります。

          「科学的」という言葉について言いたいことが実はあります。 「科学的な根拠が大事」ということがたびたび言われます。特に、このコロナに対する判断についても、「科学的であるべき」ということは沢山言われています。 ここで科学的とはどんな意味なのでしょうか。 多くの人にとって、科学的とは、  データで検証されたことを判断の基準にする という意味ではないかと思います。 実は、これに私は強い違和感を覚えるのです。 なぜでしょう。 驚くかもしれません。 これは科学が実際に行って

          「科学的」という言葉の使われ方に違和感があります。

          さらばテイラー:標準化と横展開の罪

           1月3日の日経1面に「「心の資本」は十分ですか さらばテイラーシステム」という記事が出ました。  テイラーシステムというのは、業務を標準化して、横展開することによって、効率化する手法です。これは20世紀の製造業を中心に、大変うまくいきました。そして、その恩恵を大いに受けたのが日本でした。このため、日本の多くの組織で、このテイラー方式、すなわち「標準化と横展開」は、生産性を上げるための普遍的な方法と考えられるようになりました。  実は、これがその後の日本の停滞を招く大きな原因

          シリアル化の威力:新たな年を迎えて

          明けましておめでとうございます! 新たな気持ちで今年も前進していきたいですね。 BeBitの遠藤社長に勧められて、年末から『イノベーションスタック』(ジム・マッケルビー)を読んでいます。とても良い本で、多くの人に文句なしに勧めたいと思いました(遠藤さんありがとうございました!!) 著者のジム・マッケルビー氏は、「スクエア」というスマホ装着デバイスでのカード決済の会社の創業者です。スクエアは、ツイッターの創業者、ジャック・ドーシー氏も創業に関わった会社です。 内容が素晴ら

          占いの科学

          今日は大晦日です。 一年を振り返るとともに、来年を展望する日だと思います。 その意味でも、年末年始に占いやおみくじを試される方は多いと思います。 しかし現代では、占いというのは、非科学的な迷信と思われています。 私も以前はそう思っていました。 ところが、ある視点から占いを捉え直すと、占いには科学的な根拠があると考えるようになりました。 遂にスピリチャルや神秘思想にはまってしまったか、と思った人がいるかもしれません。残念ながら、そうではありません。 古くから時代を超え

          お金の3法則:物理学の視点から

          これまで何回か成長と分配とそのためのお金の話をしました。 今回は、このお金の話を、正確さを失わない範囲で、できる限りシンプルにしたいと思います。そこに、物理学の視点が役に立つのではないかと考えました。 物理学を、「物に関する科学」と捉えている人が多いと思います。 しかし、本来の物理学は、ものごとの理(ことわり)を明らかにする学問です。明治時代に"Physics"が西洋から到来した時の最初の訳語は「究理学」でした。この究理学の方が、物理学の本質をよく捉えていたと思います。