【詩のようなもの】父のワークブーツ

日曜日の昼下がり
父のワークブーツを磨くのが僕の日課だった
埃まみれの白くなったワークブーツ
埃を落としてブラッシング
クリームを布につけて磨き上げる
埃で白かったブーツは
やがて徐々に黒く光りだす
僕は手を真っ黒にしながら
懸命に磨いた
すると父がやって来て
大きな手で頭を撫でてくれた
『また一週間 頑張れそうだぞ ありがとうな』
父のその言葉が嬉しくて
頭を撫でてもらうのが嬉しくて
毎週毎週 僕は懸命に磨いた
やがて何足目かのワークブーツから
僕は磨かなくなった
父は月曜日の朝も
白い埃まみれのワークブーツを履いて仕事へ行った
父はやがて亡くなり
遺品を片付けていると下駄箱の中に箱に入った
たくさんのワークブーツを見つけた
どれもボロボロだけど黒光りしていて
僕が磨いていたワークブーツだった
父は捨てないで大切に取っていてくれた
ごめんね ごめんなさい
僕は最後に履いていた
父の白い埃まみれのワークブーツを
喪服と同じくらい手が黒くなるまで磨いた

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