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“パンパンガール”を語る「金ちゃんの紙芝居」9~【”オンリーさん“になっても油断は禁物】
パンパンガールたちにとって、特定の米兵の恋人になる、つまり「オンリーさん」になることが、野宿生活から抜け出し、豊かな暮らしを手に入れるための、いちばんの道だったことは、繰り返し述べている通り。
でも、その座をキープするのは大変だったようだ。
前回に続いて、金ちゃんの口から、またもや意外な事実を聞かされた。
![](https://assets.st-note.com/img/1709463095969-J8bGAuoVxg.jpg?width=1200)
金ちゃん) これは朝霞の米軍基地の東ゲート。広沢の池のちょっと手前、朝霞駅に近いところです。
このゲートは、進駐軍労務者が利用するとき、つまり朝と夕方しか開かないんです。
で、これは夕方の絵。兵隊たちが仕事を終えて出てくるのを、お姉さん方は待っている。
━━ 着物の人もいたんですね?
金ちゃん) いました。
━━ なるほど。
金ちゃん) ここで待っているのは、殆どオンリーさんです。
━━ えっ?
金ちゃん) オンリーさんです。
━━ オンリーさん? あっ、じゃあ自分の彼を…
金ちゃん) 待っている。
━━ でも、オンリーさんたちは、それこそ金ちゃん家が営む貸席や、駅前の民家などに間借りして、自分の部屋を持っているわけですよね?
金ちゃん) そうです。
━━ ゲートの前で待ってなくても、部屋で来るのを待っていればいんじゃないですかね?
金ちゃん) やっぱし心配なんでしょう(笑)。
━━ 心配なんですかね?
金ちゃん) 他に取られちゃうと大変だから(笑)。
━━ 取られちゃう、っていうことも?
金ちゃん) ありますよ。だって何の保証もないですからね。
私の彼を取った、取らないなんて、よく喧嘩してましたもん。
![](https://assets.st-note.com/img/1709468452578-HynwQnWemM.jpg?width=1200)
「よく喧嘩していた」と聞いて、すぐ思い出したのが、以前、見せてもらったことのある、上の絵。
『吉原炎上』だったか『陽暉楼』だったか、五社英雄の映画を彷彿させるシーン。
2人が取っ組み合っている隙に、" 第3の女"が、ちゃっかり米兵を奪っていくのが笑いを誘う。
━━ なんていうんですか、「鳶に油揚げをさらわれる」ではないですけれども…
金ちゃん) そうそうそう。こんな光景が、朝霞駅までは結構、見られたんですよね。
左の女性の足元に注目されたい。
━━ 下駄ですかね、これ?
金ちゃん ) 下駄ですね。
━━ 下駄の人もいたんですか?
金ちゃん ) 「下駄の人も」って言うより、下駄が主ですよ。
靴を履けるのは、いい客がついた、いわゆる稼ぎのいいお姉さん、あるいはオンリーさん。あとはもう下駄ですよね。
下駄も、新しい下駄なんて履けないしね。
擦り減っちゃったような…、あるいは、どっかで拾ってきたか、かっぱらってきたかのような下駄しか履けないんですよ。
だから、1足、満足に左右が揃っている下駄を履いてるっていうのも大変なことだったんですよ。左右違うけど履いてたり、っていうのも結構、多かったです。
同業他者に彼氏を取られまいと、神経をすり減らしていた女性たち。
靴も履けず、不揃いの下駄で街頭に立ち、時には、取っ組み合いの喧嘩をしていた女性たち。
生きるために必死だった ━━
一言で言えばそういうことだが、金ちゃんの絵には、そうやって不器用なくらい一生懸命生きる女性たちへの、限りない慈しみが溢れている。
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